ぼくらが「ムーンコップ」を愛すべき5つの理由

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月面をパトロールする孤独な警察官を描いたグラフィックノベル「ムーンコップ」。そのシンプルな線画で描かれた世界には、おかしみと独特の物哀しさ、そして同時に、未来への希望が詰まっている。

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トム・ゴールドの新作は、タイトルだけ見れば月でのアクション&アドヴェンチャーを想像するだろう。「ムーンコップ! 彼は宇宙の警察官!」。思わせぶりなタイトルだ。

しかし、実際の作品はアクション&アドヴェンチャーではまったくない。このグラフィックノベルは、タイトルが示すよりもはるかに繊細で、面白く、また記憶に残るものなのだ。懐かしい学校時代の玩具やスター・ウォーズにインスピレーションを得た、おかしみ、パトス、それに素晴らしい芸術を兼ね備えた作品だ。

「ムーンコップ」がぼくらの新たなお気に入りになるであろう5つの理由を紹介しよう。

1.「ムーンコップ」は忘れられた未来へのレクイエム

ジョークの詰まったおかしい作品ではあるが、「ムーンコップ」は科学的探究が一般大衆から好まれなくなったことへの作者の想いを反映して、独特の憂鬱を醸し出している。

「宇宙開発競争の時代を振り返ると、宇宙や月について、また、一般にテクノロジーがあらゆる人々の生活を改善するということについて、なんと楽観的な想いがあったのかと思います」とゴールドは説明する。「驚異的なことはいまでも科学の世界で起こっていますが、当時と同じような『無条件の肯定』はなされていないと感じます」

2.「ムーンコップ」のアイデアを生んだ、驚くべきもの

そのタイトルが示唆するのは、『ブレードランナー』風の異世界での警察の姿だが、「ムーンコップ」の実際のインスピレーションははるかに変わったものだった。

「月面の警察官というアイデアは1960年代のブリキ玩具に由来します。わたしが見たそれは、ガラスドームの中のロボットドライヴァー。そしてレーザー砲をもつ車両でした」とゴールドは言う。

「玩具のパッケージには、無人の月面上の車両と、上方の暗い空に浮かぶ地球が描かれていました。その玩具が示唆していたのは、月を植民地化した未来だけでなく、その事業が成功して、重武装の警察を必要とするようになった状況だったのです。わたしは月面をパトロールする孤独な警察官の生活を想像するようになり、そこから物語が成長していきました」

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3.スター・ウォーズからもインスピレーションを得ている

「ムーンコップ」に登場する最高のキャラクターのひとつは善きアンドロイドである治療ロボットだが、自らの車輪では向かえないあらゆるところに運ばなければならないために、ロボットの有用性はやや損なわれている。このコンセプトがどこからやってきたのか想像するのは簡単だ。

「子どものときは『スター・ウォーズ』が好きでした。それもずっとロボットが好きでした」。ゴールドは認める。「ほかの映画でも同じようなロボットが登場してきたと思います。しかしわたしは、『スター・ウォーズ』のロボットが(作品のなかでは)驚きの対象ではなく日常的な存在であり、召使としての仕事を行い、無視され、人々を困らせ、故障するようなところが好きなのです」

ゴールドによれば、もうひとつの影響はスタンリー・キューブリックの『2001年宇宙の旅』だ。「この作品は、1960年代の色合いを帯びた完璧にデザインされた未来ヴィジョンです」。彼は言う。「わたしの作品での月面コロニーは『2001年宇宙の旅』の20年後の世界に少し似ているかもしれません。そこではあらゆるものの損耗が始まり、崩れ始めているのです」

4.「ムーンコップ」は悲観主義を拒否する

この書籍に悲しみが見られるというだけのことから、これを希望の欠如だと間違えてはいけない。

「人類の未来についての多くの推測が少々二分法的でありすぎると思います。世界は素晴らしい理想郷か恐ろしい暗黒郷か、という二分法です」とゴールドは言う。「実際にはどちらからも離れた中間にあり、いくつかの事態はよくなり、いくつかの事態は悪くなる可能性が高いと思います。それほど劇的なものではないのでしょう。それでも、世界はもっと面白くなると思っています。だから物語のなかで月面コロニーが廃れても、きっと誰かがテレポートリンクやタイムマシンに取り組むことになるでしょう」

ゴールドは、月面コロニーを母国スコットランドのいわゆる「ニュータウン」になぞらえる。「建築家やプランナーは最高の動機で、何かを新しく、いいものにしようと努力しましたが、一般的にそうした土地の成長経過は良好なものではありませんでした。取り壊され、荒廃したまま放置されているものも多く見られます」と彼は言う。「わたしは月面コロニーからそうしたイメージを喚起させようとしたのです」

5.「ムーンコップ」は美しい

忘れられた未来の世界に対するゴールドの見解さえも些細なものに感じられるくらい、この書籍は視覚的な美しさを兼ね備えている。ゴールドの一見シンプルな線画は、驚異的なセンスのページレイアウトとキャラクターデザインによって支えれているのだ。

だが、言葉で説明するのはこれくらいにしておこう。これが公式のアニメーション予告編だ。

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