ないはずの手足が痛む「幻肢痛」、VRを使った治療法を東大医学部が研究開発

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VR(バーチャルリアリティ)は特定の機器を付けると、まるでその場にいるかのような感覚になる仮想現実の世界を体験できるというもの。

この技術を活かした身近なものとしては、10月13日に発売されるゲーム機「Playstation VR」があるが、VR技術がゲームだけでなく医療にも役立つことが証明された。

東京大学医学部属病院緩和ケア診療部の住谷昌彦准教授らの研究グループは、VRを用いて、切断や神経障害で存在しないはずの難治性の痛みを和らぐことを明らかにした。

ないはずの手足が痛む「幻肢痛」

事故や病気等により、やむなく手足を切断することになった人は、存在しないはずの手足(幻肢)に痛みを感じる幻肢痛(げんしつう)に悩まされる。

幻肢痛は切断をしたほとんどの人に現れ、個人差があるものの、電流が走ったような激しい痛みを感じる人もいるという。

幻肢痛が起きる仕組みは長い間わかっていなかったが、存在しない手足を動かしているというイメージを作ることができず、脳内で幻肢を動かすことができないために痛みが生じると考えられている。

VRを使った治療法とは

2015年9月に東京大学医学部附属病院緩和ケア診療部の研究グループは、失ったはずの手足を自分の意志で動かしているような感覚を計測する手法を開発。この時から、VRを利用した治療の臨床研究を始めたとしている。

では、幻肢痛の治療にVRがどう使われるのだろうか。

研究グループが開発したVRシステムは、手足が動いている映像を見ながら痛みのない手足を動かすことで、自らの意志で幻肢を動かしているような仮想体験ができる。

バーチャルリアリティを用いた幻肢痛の新しい治療

この映像とは、人の動きを記録できるモーションキャプチャという手法で、痛みのない方の手足が運動している様子を左右反転させた映像を用意した。

患者はヘッドマウントディスプレイをかぶって映像を観ながら「治療」を行う。

幻肢痛が発症する原因として、脳内での運動表象の異常であることを検証しただけでなく、VRを用いた新しい脳科学に基づいた幻肢痛の治療法の開発に成功したといえる。

住谷准教授は

「今回の私たちの研究結果は、幻肢痛や腕神経叢引き抜き損傷後疼痛だけでなく、脊髄損傷後疼痛や視床痛など運動麻痺を伴う神経障害性疼痛の患者さんの痛みの原因の解明と新しい治療法の開発につながります」

と話している。

VRはこの他にも心理療法や、医師の技能訓練や人命救助のトレーニングなど、さまざまな方面で活用されている。VRの利点を最大限に活かした研究が進んでいくことが期待される。