すでに9月に入ったにもかかわらず、いまだに夏風邪が流行っている。“夏のウイルス”が暴れているそうだ。夏に暴れまわるウイルスは「高温・多湿型」。その活動が活発化している原因は、そもそもウイルスを退治する薬がないためだ。
 「風邪の原因になる病原体の8〜9割はウイルス。病院へ行ったときは、主に抗生物質が処方されるわけですが、ウイルスにはそれ自体に増殖力がなく、気道や鼻腔の粘膜の細胞の力を借りて増える。そのために抗生物質の効力は薄いのです。ただし、普通は放っておいても最長2週間程度で治まってしまう」(健康ライター)

 昭和大学病院呼吸器科の伊東幸成外来担当医はこう説明する。
 「風邪症状を治す目的なら抗生物質は意味がない。むしろ自分で持っている免疫力を高め、ウイルスが排除されるのを待つしかない。その間は安静を保ち、栄養と水分を補給し、それ以上に、体調を崩さないよう無理をしないことです。これらの一般的な療法を行った上で、気道に症状があれば、咳を止める薬(鎮咳去痰薬)や発熱には解熱薬などを内服する。人それぞれに薬の必要、不必要があるので、その判別は医師にしてもらうのがいいでしょう」

 暑さと湿気を好むウイルスが大暴れするのが夏風邪と言われるが、厄介なのは、時期的に免疫力が下がる要素が多い点だ。例えば、夏場の疲労や、残暑から来る睡眠不足など。
 「睡眠時間が短い方が免疫力が下がり、結果的には風邪をひきやすく、治りにくくなる。このことは、複数の研究機関の調査でも明らかになっています。また、クーラーなどで室内と室外の気温差・湿度差が大きいと、身体を調整する神経である自律神経が乱れ、体温調節ができなくなり、免疫力が低下。そして、風邪になりやすくなるのです」(前出・健康ライター)

 一般的に、風邪は発汗をすれば治るとも言われるが、夏に風邪をひいた場合は、身体を温めて汗を出すと脱水症状を起こすため、決して良策ではない。水分補給は必須で、スポーツドリンクなど塩分を含むものが効果的という。
 「医療機関の調査などで明らかになっているのは、『風邪薬を飲んでもデメリットの方が大きい』、『夏風邪に対するウイルスに効く薬はない』ということ。京都大学が行った解熱鎮痛剤『ロキソニン』に関する研究結果では、服用した人は、すべての症状が消えるまで8.9日間を要し、そうでなかった人は8.4日間を要している。同解熱鎮痛剤は多くの風邪薬に含まれており、胃炎や薬剤乱用性頭痛などの副作用もあるため、治りが早くならないのであれば、飲まない方がいいでしょう」
 こう語るのは、東京都長寿健康医療センターの西条顧問だ。

 厄介と言えば、もう一つある。“長引く咳”だ。くしゃみや鼻水に散々やられたが、それが収まったと思ったら咳だけが残った…。中には、そんな状態が2週間以上続いてしまう場合も多い。
 この症状に陥ると、大抵は“しつこい風邪”と思い込む人が多いが、西条氏はこう警鐘を鳴らす。
 「風邪だけで、そこまでは長引くことはありません。つまり、風邪をきっかけにして別の疾患を発症している可能性があります。7月に入ってから、当院には長引く咳の相談で訪れる患者さんが多く見えます。やはり、ほとんどが風邪だと思っている人が多いのですが、よく見られるのは咳喘息とCOPD(慢性閉塞肺疾患)です」