先制のFK弾を含む2ゴールを挙げた久保がドリブルで敵陣に切り込む。(C) J.LEAGUE PHOTOS

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 日本にオープニングゴールをもたらしたのは、MF久保建英の左足だった。
 
 16分、FW宮代大聖の突破がファウルを誘発。ゴール中央やや右寄りの約20メートルの位置でFKを獲得する。先制のチャンスの場面で久保はいたって冷静だった。
 
「相手の壁が飛ばないので、コースを狙い過ぎずに強いボールをしっかりと蹴ればいいと思っていた」
 
 事前のスカウティングでベトナムの壁が飛ばないことは分かっていた。しかも、ベトナムの選手は日本よりも全体的に身長が低く、GKも俊敏とは言えない。そうした情報から、久保が導き出したのは、『着実に枠を捉える』ということだった。短い助走から放たれた左足のキックは、狙い通り飛ばない壁の頭上を破り、ゴール右隅に吸い込まれた。
 
「初得点で、しかもFKという形。コースはあまりだったのですが、綺麗に決まったので、ほっとしたというか、緊張はほぐれたと思います」と振り返ったように、格下が相手と言えど、世界大会の切符を懸けた真剣勝負の初戦とあって、否が応でも緊張から動きに硬さが生まれてしまう。早い時間帯で先制出来たことは久保本人だけでなく、チームの緊張をも解きほぐす重要な一撃となった。
 
 このゴールを皮切りに、日本は怒濤のゴールラッシュ。MF福岡慎平、FW宮代と役者が揃って追加点を挙げて、完全に勝利を引き寄せると、4-0で迎えた61分に再び久保が圧巻のプレーを見せる。
 
 FW中村敬斗が左サイドでボールをキープし、ペナルティエリア内に飛び込んで来た久保へマイナスのパス。加速してスペースに入って来た久保に対し、相手DFも身体を寄せようとするが、その動きを視野に捉え、右足インサイドでトラップすると、間髪入れずに左アウトサイドで持ち出して、DFをかわす。

 カバーに入っていたもう一人のDFが食いついて来ると、さらに左アウトサイドで持ち出して、すぐさま左インサイドで選択肢が広がるスペースにボールを置いた。ペナルティエリア内のエンドライン際で完全にフリーになった久保は、「折り返しも考えたのですが、GKがちょっと前に出ているのが見えたので、狙ってみようかなと思いました」と、ゴール左ポストとGKの間に出来た『ゴールへの最短ルート』を見出して、ジーコがかつて言ったように「ゴールにパスをするイメージ」ぴったりのシュートを逆サイドに流し込んだ。
 打開力とシュートセンス。何より正確なボールコントロールとポールインパクトを凝縮させたゴール。先制点をきちんと決める勝負強さといい、2ゴールは久保の能力の高さを示す『結果』であった。
 
 だが、ここで補足しておきたいのは、確かに2ゴールは素晴らしいもので、意義も大きかったが、それ以外のシーンでは、パスが引っかかったり、ボールをロストしたりするシーンが散見されたことだ。
 
「あんまりボールが足につかなくて、納得のいくプレーではなかった」と本人が振り返ったように、インドの凸凹のピッチに苦戦し、思うようなボールコントロールが出来ない場面があった。それを平川怜と福岡のダブルボランチを中心に、周りが彼のミスをしっかりとフォローしたからこその2ゴールであることは間違いなかった。
 
 FC東京のトップ登録も掴んだその能力の高さに疑いの余地はない。そして、それを活かすハイスペックな能力を持った選手たちが周りに居る。久保の2ゴールは、森山ジャパンの総合力の高さを実証したと言える。
 
取材・文:安藤隆人(サッカージャーナリスト)