もう、アリンコになってしまいたい――連続投資小説「おかねのかみさま」

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みなさまこんにゃちは大川です。

『おかねのかみさま』49回めです。

きょうは六本木SLOW PLAYで書いてません。

※⇒前回「ダイジョウブ」

〈登場人物紹介〉
健太(健) 平凡な大学生。神様に師事しながら世界の仕組みを学んでいる
神様(神) お金の世界の法則と矛盾に精通。B級グルメへの造詣も深い
死神(死) 浮き沈みの激しくなった人間のそばに現れる。謙虚かつ無邪気
美琴(美) 普通の幸せに憧れるAラン女子大生。死神の出現に不安を募らせる
美熟女(熟) 美琴が働く銀座の高級クラブ「サーティンスフロア」のママ
杉ちゃん(杉) ITベンチャー社長。ヒットアプリ「アリファン」を運営
沼貝(沼) 杉ちゃんの先輩ベンチャー経営者で株主。脅迫事件の対処に勇躍
薄井(薄) 「アリファン」創業メンバー。アリンコの著作権に3億円要求

〈第49回 KRUG〉
美「だってー。大体の問題は誰かが解決するじゃない。はい肉じゃが」

死「ウェーイ!!!」

美「それにしてもあれよね。やっぱり自分で会社やってるといろいろあるのね」

死「モグモグ…」

美「でもさ、あれでしょ、きっとそういうのも税理士さんとかしほうしょしさんとかベンゴシさんとか、そういう人たちでなんとかしてくれるんでしょ?」

死「モグモグ…」

美「わたしも会社づとめしてたらそういう緊張感にグルングルン巻き込まれたりして、いろんなことやいろんな恋愛もしてたかもしれないけど、ねぇ。意外といまのお仕事気に入っちゃってるし、シニガミさんとの役割分担もうまくいってるからなんていうのかしら、人生いろいろみたいなとこがあるわy」

死「ミコト」

美「!?…は、はい…」

死「ダイジョウブ…」

美「な、なにが?」

死「ミコトモソノウチ」

美「…」

死「グルングルン…」

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23:55 鉢山町 杉ちゃん宅 風呂

杉「はぁ…今日はつかれた。なんとかなるのかなー。沼貝さんも任せろって言ってるし、あからさまな敵意に迫られるのなんか初めてだし、そもそも下品だよな。結ーっ局あれだけ偉そうなこと言ってた薄井もカネか。いい奴だったんだけどな。

『杉ちゃんと俺で世の中変える!』

とか言ってたのに。自分のワガママが通らないだけでこれだもんな。

元々カネに興味のある奴でもないのに、攻撃自体が目的になってるところもあるだろうし。にしてもムカつくなー。3億なんて払えるわけないじゃん。現金が入るのこれからだよ。イヤイヤそもそも上場が中止になったらその現金すら入ってこないよ。えーとどうしようウチのゲームの売上もどうなるかわかんないしな。んーと、入ってくる予定のものが減ってきたところに、出口の見えない妨害があるって感じが。んーと、こういうの、どうしたらいいんだっけ。お腹が空いてきてご飯がなくて、起きようとしたら足骨折? 不利だわー。天災ならまだしも、人の悪意に晒されることに慣れてないわー。しかも仕返しを企てるほど育ちも悪くないし、俺、正直誰にも言えないけど、こういうときどうでもよくなっちゃうんだよね。うーん。なんのためにこんな目に合ってるんだっけ? そもそもなんで上場しなくちゃいけないんだっけ?

あーーーーー、もう。アリンコになってしまいたい。

揉めごとが嫌いだから人と離れてパソコンと遊んでたのに、いつの間にか揉めごと最先端で嵐の室戸岬に立っている。アリンコはいいよな。なんかの番組で見たけど、俺、あの、サボってるアリンコになりたい。一定数いるやつ。それでそこらへんのアリ子と結婚して、小さな喫茶店でも開くんだ。

はぁ。自分の問題なのに自分がなにもできないってのは本当につらいなぁ。はやく解決しないかなー。うーーーーん、なにもできないなりに神様におねがいするか」

『薄井が、若くして完全にハゲますように』

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翌日 22:05 銀座 サーティーンスフロア

熟「いらっしゃいませー♡あら!ぬまぬま!お久しぶり!」

沼「こんばんはー!」

熟「3名さま?奥の席用意するからちょっとまっててね」

沼「ありがとう!」

薄「沼貝さん」

沼「はい!」

薄「こんなところ来なくてもいいですよ。僕もう帰ります」

沼「いいから!ね、ほら、もう問題が解決したんだから、こういうときはちゃんと乾杯をしておかないと」

薄「…」

熟「おまたせしました♡こちらへどうぞ」

沼「ありがとうございます!」

熟「ひさしぶりねぇ!いろんなお店行ってるのは聞いてるわよー」

沼「めっそうもございません。こちら薄井さん。僕らが今度一緒に上場させる会社の創業メンバーの方です」

熟「あらすごーい!おめでとうございます」

薄「あ、いや、その説明はおかしいですよ。だって…ぼくもう…」

沼「いいんです!さぁ飲みましょう!KRUGお願いします!」

熟「あらうれしい♡ KRUGおひとつ大至急ね」

死「カシコマリマシタ」

美「こんばんは…」

沼「こんばんはー!沼貝ともうします。ぬまぬまって呼んでね。君おなまえは?」

美「みことです♪ぬまぬまってかわいいですね」

沼「なにをおっしゃいますか。ミコトさんのほうがずっとお美しい!ねぇ!」

薄「…」

熟「ガミちゃん、グラスちょっと多くない?」

死「ギク」

沼「あ、いいですよ!ボーイさんもよろしければぜひ!」

死「イタダキマス!!!」

薄「あ、僕ちょっとでいいんで」

沼「アグリーです。じゃあこの少なめのやつね。みんな行き渡りましたか?いいですか?じゃあ、乾杯しましょうか。カンパーイ!」

熟「かんぱーい♡」
美「かんぱい♡」
死「ウェーイ!!!!」

次号へつづく

【大川弘一(おおかわ・こういち)】
1970年、埼玉県生まれ。経営コンサルタント、ポーカープレイヤー。株式会社まぐまぐ創業者。慶応義塾大学商学部を中退後、酒販コンサルチェーンKLCで学び95年に独立。97年に株式会社まぐまぐを設立後、メールマガジンの配信事業を行う。99年に設立した子会社は日本最短記録(364日)で上場したが、その後10年間あらゆる地雷を踏んづける。

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〈イラスト/松原ひろみ〉