「私たちは大丈夫!」その過信が老後貧乏を招くことも……

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 郵送されてくる「ねんきん定期便」には老齢年金の見込額という欄がある。あなたが50歳以上なら、この欄の数字を見て自分が将来もらえる年金額を想像しているはずだ。

 しかし、ここには盲点がある。この受給額は税込額。実際にはこの金額から、所得税などの税金や社会保険料などが天引きされて振り込まれることになるからだ。ざっくりとした目安として、年金およびその他の収入が年200万円未満なら10%程度、300万円未満なら15%程度が天引きされるというイメージなのである。

 ここに上げたのは「年金受給額は税込だった」という一例だが、初めて知った読者も多いのではないだろうか。定年を迎えると、これまでの収入も生活も大きく変わる。そしてそこは未知の世界。知らなかったことで溢れている。そう、誰もが初めての定年生活を迎えることになるのだ。

 そんな定年後の世界を、事前にシミュレートして備えるための本が『定年一年生の教科書』シリーズ(55+ライフデザイン室/KADOKAWA)。『知らないと大変!定年後のお金の知識』編と『一生使える!生活見直し術』編の2冊が同時発売された。

 『定年一年生の教科書』シリーズは、初のシニアのための実用コミックエッセイとして、マンガやイラストがふんだんに盛り込まれ、読み進めていくうちに、定年後の世界を生き抜くための知恵がわかりやすく身につくガイドブックとなっている。

 主人公は、とある中堅食品メーカーの課長、50代の別府耕一さんと妻の里子さん。大学生の祐一君との三人家族。どこにでもある平均的なサラリーマン世帯だ。現在の別府家の世帯収入は、里子さんのパート代も含めて手取りでおよそ545万6000円。

 耕一さんは60歳の定年後も、今の会社で再雇用として65歳まで働くつもりだが、再雇用の場合、一般的に収入はそれまでの3分の2程度に減ってしまうのが実情であることを知る。60歳以降も今の生活レベルを続けた場合、別府家の家計は確実に赤字となってしまう。

 さらに追い打ちをかけるように、再雇用が終了した65歳からは年金だけの生活が始まる。総務省の家計調査によると、一般的に、夫65歳以上、妻60歳以上の年金暮らしの夫婦世帯の毎月の平均支出は約27万5700円。それに対して、年金などの実収入は月に21万3300円ほど。つまり、耕一さんが60歳を超えてからの別府家の家計は、現在の暮らし方を根本的に見直さない限り、赤字街道を突き進むことになるのである。

 『定年一年生の教科書 知らないと大変!定年後のお金の知識』では、定年後に備えるお金や保険、年金の繰上げ受給・繰下げ受給の損得、定年後に払う税金、夫に先立たれた場合の妻の年金はどうなるか、など、別府家のケースを読み進めながら、身につまされるお金の知識がわかりやすく理解できるようになっている。

 そして『定年一年生の教科書 一生使える!生活見直し術』は、定年後だからこその暮らしの見直し方、保険の見直し、定年後の住宅ローン、リフォームや住み替え、定年後の働き方、熟年離婚の損得、そして親の介護やお墓・葬儀の知識まで、シニア層でなくても知っておきたいテーマがぎっしり詰まった1冊だ。

 『定年一年生の教科書』シリーズは、定年を意識し始めた「夫」はもちろん、できれば「妻」にこそ読んでもらいたい本でもある。定年後の知恵を夫婦で共有しなければ、老後のための準備は遅々として進まないからだ。

 「下流老人」「老後破産」という言葉をよく聞くようになったけれど、自分たちは大丈夫、などと考えていたら、それは間違いだ。もしかすると、その過信が老後貧乏を招くことになるかもしれないことを肝に銘じておくべきだろう。