無自覚いい子ぶりっ子の川井みき/『聲の形』より (C)大今良時・講談社/映画聲の形製作委員会

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ラブコメ、アクション、ホラー……。どんな映画でもも、ついつい“子育て”に結びつけて見てしまうのママさんライターが、話題作をママ目線で取り上げます!

(…前編「〜イジメを描くきわどい内容に編集部もびびった問題作!」より続く)

【ついついママ目線】『聲の形』中編

人生に安易な正解はないことを痛感する

「このマンガがすごい!2015」のオトコ編第1位をはじめ数々の賞に輝いた、大今良時の同名のベストセラーコミック「聲の形」が映画化された。原作は物議を醸した問題作で、聴覚障害を持つヒロイン・硝子が小学生時代にいじめに遭うことから端を発する物語だ。

ただし、主人公はヒロインのほうではなく、いじめをしていた男の子・石田将也だ。将也は罪悪感と孤独から他人を否定し、自己を否定し、ぐるぐるぐるぐるともがき苦しんでいる。先に言ってしまえば、本作で誰かがジャッジされることはなく、何かに対しての正解も提示してくれない。いくら考えてもひとつの答えは出ないだろう。しかし、気休めの答えを出して問題を流さずに、向き合うことが第一歩だと改めて気づかせてくれる。

映画版は時間の制約もあるため、人物もエピソードも原作よりはシンプルになっている。それでも、正しくて強い人物などひとりもおらず、みな複雑な想いと問題を抱えている。いい意味でも悪い意味でも、それぞれのキャラクターに、自分の中にもある一面を突きつけられるだろう。

原作者の大今良時は男のような名前だが女性漫画家だから、なかでも女性キャラクターがリアルで生々しい。その代表的なキャラクターの川井みきは、無自覚いい子ぶりっ子で誰もが嫌悪感を持つが、全面的に彼女を否定できる人もいないだろう。硝子をサポートする結絃(ゆづる)にしても一見強く見えるが、硝子への依存傾向があり自己と対峙できていない。

ディープな問題を扱っているが、腫れ物に触るような描き方はせず、ありのままを見せる。原作で描かれる硝子の特有の喋り方や手話も、アニメ化されたことでさらに明確に描かれる。かといって露悪的なこともなく、無駄に動揺することはないから事実をしっかりと受け止められるのだ。(文:入江奈々/映画ライター)

(後編「さすがの京アニ・クオリティ!」に続く…)

『聲の形』は9月17日より全国公開される。