泰子さん、大翔くん、穂乃ちゃん、おめでとう!

男のワガママ、ここに極まれり。まず、勝利を讃える前に、よくこの挑戦を支え、送り出したものだと家族を讃えたい。長谷川穂積、35歳。元WBC世界バンタム級・フェザー級王者。彼を再び世界王者にさせたのは、家族のチカラです。本人のチカラなどもうカウントしなくてもいいくらい、家族が獲ったメダルです。奥さん、これはあなたのベルトです!

「終わった選手」と世間では思っていたことでしょう。

そして、同時に「終わってほしい選手」でもあった。

この5年ほどの間、長谷川穂積をめぐる風景は、何度も時間軸をやり直すループ物語のようでした。試合に臨み、これが最後だと噂が立ち、決して素晴らしいとは言えない内容で勝ったり負けたりし、試合後には新たな怪我が発覚し、進退についての質問にクチを濁しては、半年後くらいにやっぱり再起を決意する。その繰り返し。

その間に、気になることは増えていきました。スピードとカウンターでKOを積み重ねた華麗なボクシングが、激しい接近戦に変わっていったこと。打つことも多いけれど、打たれることはもっと多くなったこと。語り口がほんの少しくぐもるようになったこと。僕の父親や兄弟なら止めていた。10度防衛し、二階級制覇もし、日本ボクシング史に残る偉大な選手になったのに、一体これ以上、何が欲しいのかと。長谷川穂積が長谷川穂積である間に、次の道を見つけたっていいじゃないかと。

ボクシングというのは、頭を殴り合う競技です。もちろん危険です。その危険を、鍛えた身体と磨いた技術で無事にやり遂げるからボクサーは素晴らしい。サーカスで投げたナイフをピエロに刺してはいけないように、ボクサーはリングで壊れてはいけない。その一線を越えたら、ボクシングまで壊れてしまう。長谷川穂積が、そういう存在にならないことだけを祈っていたような気がします。

他人の僕がそうなのに、泰子さんはどう自分に言い聞かせて長谷川穂積を送り出したのか。支える愛にもいろいろな形があるのでしょうが、凄絶だなと思います。本当に強い人だなと感嘆します。獲った本人は「母親への2年遅れの誕生日プレゼント」なんて言っているようですが、そのベルトを巻くべき腰は、きっと天国じゃない、家にある。長谷川穂積がもう一回ベルトを獲るまで、そのワガママを支えた強い腰が。

泰子さん、あなたがチャンピオンだ!

ということで、「これであと2回くらい命懸けのド突き合いをせなアカンのか…」と震えながら、長谷川穂積さんの三階級制覇について16日の日本テレビによる録画中継をチェックしていきましょう。

◆日テレが生中継しないことを選んだ試合で、スポーツの奇跡は起きる!

ラグビーワールドカップのときも思ったことですが、日テレの目利きは本当に悪い。やろうと思えば生中継ができた試合を、普通に考えたら生中継するんでしょという試合を、ちょっとのケチくささを出して録画中継にしてしまう。ちょっとのケチくささで日本スポーツ大賞級の奇跡を中継し損ねてしまう。20時からボクシングをやるんなら、19時からやったって一緒だろ、と。「沸騰ワード10」なんていつやっても一緒だろ、と。その時間にSNSで「長谷川穂積」というワードが沸騰しているぞ、と。

長谷川穂積の黄金期、日テレのボクシング班は誇りを持って試合を中継していたはず。TBSのアレとは違うぞ。アレはボクシングコントだぞ。コッチが本当のボクシングだ。そんな気持ちで。そのストックというか貯金というか、感謝があれば。この奇跡は日本中にライブで届いていたのに。果てしなく残念です。

「負ければ引退」という、おなじみのウソを抱いてリングに上がる長谷川穂積。試合後に明かされたところでは、試合の少し前に拳を骨折していたと言います。しかし、もう骨折していようがいまいが身体はボロボロです。ボクシングをやりたい、勝ちたい、俺はまだできる。意地の塊みたいなものが、人間の形をしてリングに上がっていきます。

↓対戦相手のウーゴ・ルイスは2012年に亀田1号と戦い、判定で敗れた選手!

指名挑戦者として挑んだルイスの周りを、亀1号がグルグルまわって睨み合っていた試合だな!

ほぼダウンを奪った攻撃や、相手の鼻血を引き出す攻撃などで、1号が安定の判定勝利を奪いました!

よし、何か勝てそうな気がしてきた!

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立ち上がりの第1ラウンド。序盤は両者とも慎重に距離を測ります。長谷川はスピード感のあるいい動きで、細かいステップを踏むようにして前後の出入りを見せます。ときおり飛び込んで左、ボディへの強打。偶然のバッティングがウーゴ・ルイスに入って試合が止まると、ウーゴ・ルイスは出血し、長谷川に1点ずつの減点が。頭突きで与えたダメージと1点減点がどう転ぶかはともかく、動き自体は長谷川非常にイイ感じです。

2R、3R、引きつづき静かな試合。遠くから飛び込んで長谷川がボディを狙う場面や、そのせいでバッティングが起きる場面などが見られますが、お互いに睨み合うような時間が長くつづきます。4Rはややウーゴ・ルイスも攻勢を見せ、長谷川の顔面を何度か強く叩きます。それでも有効打では長谷川のほうがやや多いか。互角以上の展開で、序盤戦を終えます。

ところが、4R終了時の採点発表では1-2で長谷川が負けている状況。ひとりのジャッジは36-39と4Rで3ポイントの差をつけるなど、かなりウーゴ・ルイスを支持しています。そのせいではないでしょうが、試合はじょじょに激しくなっていきます。5Rには長谷川がロープを背負って打ち合いになる場面も。陣営の「とにかくディフェンス」という指示は何だったのか。「殴りたい」という長谷川のハートに火が点いてしまい、試合中盤で早くもド突き合いモードです!

↓「俺、避けるより、殴るのが好き!」という挑戦者の闘争心が燃え上がる!

避けて避けて!自分、そんなに打たれ強くないから!

バンタムでやってたボクシングをやろう!

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6R、飛び込んで打つ左にも「倒そう」という気持ちが乗り始めたか、鋭さを増してきます。場内では長谷川コールも起き、一打ごとの歓声も大きくなります。7R、8R、さらに勢いを増す長谷川。相手のフックをかいくぐり、左を積み重ねていきます。7Rには偶然のバッティングで今度は長谷川が出血し、ウーゴ・ルイスに1点の減点が課されます。これで並んだか、そして抜き去ったか。勝利の予感が少しずつ生まれてきます。

そして8R終了時の採点発表。ここでは2-1と長谷川がリードする形に形勢逆転。4R終了時に長谷川支持だったと思しきジャッジは、78-72と大差をつけています。残り4Rなら、ダウンなどがなければ逆転は不能な点差です。わきあがる場内。殴られて真っ赤に染まったウーゴ・ルイスの顔は、その発表を受けて少し曇ります。

第9R、引きつづき長谷川の飛び込んでの左がよく当たります。「オイ、コイツ亀田戦から全然成長してないぞ」「まんま一緒の攻撃が効いてるやん」「亀田思ったより強い説」と俄然勝てそうな感触になってきました。あとは事故みたいなパンチだけ気をつけてほしい。逃げてもいいんだ。残り4ラウンドで2つとれば勝ちなんだから。ブサイクでも勝てばいいんだぞ…!

迎えた勝負所は、9Rの1分30秒過ぎ。ウーゴ・ルイスはボディを狙って長谷川のガードを下げさせるワン・ツー・スリーの連打を繰り出し、最後は左のアッパーがクリーンヒット。たたらを踏むように後退する長谷川はクリンチで凌ごうとしますが、突き放して殴り掛かってくるウーゴ・ルイス。そこからロープに詰めての10秒間のド突き合いに突入します。まずい、大ピンチだ!

両者のパンチが当たりまくる壮絶な殴り合い。長谷川全盛期の「スローでも見えないカウンター」が、ほんの少し戻ってきたかのように、迎え撃つ長谷川の攻撃が相手の顔面をとらえます。そして、ウーゴ・ルイスは自分のチャンスなのに退いていきます。やった、心を折った!殴られても殴られても強打を返しつづけた長谷川が、この勝負所を制した!

↓長谷川穂積、ド突き合いを制して大ピンチを脱出!相手の心をボッキリと折る!


ゾンビのように立ちつづける長谷川穂積!

ピンチを凌いで、逆に相手に大ダメージを与えた!

↓そしてウーゴ・ルイスは次のラウンド開始時に、椅子から立ち上がることはなかった!


心弱ぇぇぇぇぇwwwwwwwwwww

何だこの王者wwwwwwwwwwww

いやいやいやいや、そこは鼻折れても行こうや!

文句ナシで、強い男は長谷川穂積に決定や!

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残り3ラウンドを全部ド突き合っていたら、最後までどう転んだかわからない試合でした。しかし、勝って、無事に終われた。リングには息子さんと娘さんが上がり、昔の防衛戦でよく抱っこされていた大翔クンが長谷川を抱き上げます。デカイ、息子、デカイ。まだ中学生くらいのはずなのに完全にオトナの身体で、殴り禁止のケンカなら父親にも勝ってしまいそうな恵体。時の流れを感じるとともに、お父さんが仕事をやめても、大翔クンがいれば大丈夫かなという気もしてきました!

↓キミが一家の大黒柱だ!お父さんは、まだボクシングやりたいって!

息子デカイなwwwww

他人の子どもはホントすぐデカくなるwwwww

辰吉丈一郎が「もうナイだろう」と思われながら、タイのシリモンコンを下して王座に返り咲いた、あの試合のような気持ち。いや、アレを超えたかもしれない。あのときもう晩年のような気がしていた辰吉が27歳(当時)だったのですから、35歳で長谷川が王座に再び就くというのは晩々年もいいところ。想像だにしなかった勝利です。そして、想像だにしなかった勝利があるからスポーツは面白い。

信じていなかったし、信じようともしなかった身としては、もはや一緒に喜ぶ資格はないのですが、謹んで幸せなお詫びをしたいところ。長谷川穂積を見くびっていました、申し訳ありませんでした。引きつづき、進退をかけた試合は続くはずですが、最後まで笑って終われるようなグローブの外し方を見つけてほしいもの。2年前のタイトル挑戦のような終わり方はもう見たくない。勝って、完全燃焼して、満足して終わる。そんなハッピーエンドを強く希望します!

リゴンドウ戦とかノニト・ドネア戦とかは考えなくていいと思います!