中国経済学者代表団5人が日本記者クラブで会見した。代表団は中国経済の先行きについて「ニューノーマル(新常態)の安定成長軌道に乗り、十数年以内に国内総生産(GDP)で米国を抜く」との楽観的な見通しを明らかにした。

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2016年9月13日、来日中の中国経済学者代表団5人が日本記者クラブで会見した。代表団は中国経済の先行きについて「ニューノーマル(新常態)の安定成長軌道に乗り、十数年以内に国内総生産(GDP)で米国を抜く」との楽観的な見通しを明らかにした。また懸念される地方の巨額累積債務問題に関しても「全人代で地方債務合計を上限10・7兆人民元(約153兆円)以内とすることを決定。この枠の中で各省に割り当てられ、コントロールされている」と説明した。代表団の発言要旨は次の通り。

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<趙晋平・国務院発展研究センター対外経済研究所部長>

中国経済は改革開放、安定した外部環境、日本をはじめ各国の協力によって発展してきた。改革開放をさらに進める。

中国の今年上半期の実質国内総生産(GDP)は前年同期比6.7%増。かつての2ケタ成長の勢いはないが、中間層の急拡大に伴い個人消費が大きく伸びた。

中国は約14億人の巨大人口を背景に世界最大の消費市場に成長、小売総額は2ケタ成長に迫る勢い。自動車、パソコン・スマホ、家電などは世界トップ、1ー7月の新車販売台数は前年同期比10%程度増えた。

中国は一帯一路(海と陸のシルクロード)構想とインフラ投資銀行(AIIB )を推進している。一帯一路の世界に占める割合は人口で60%。GDPで30%に達する。TPP(環太平洋連携)とは異なりあらゆる国に開放され、公共財として世界の平和的な発展に寄与する。

<張宇燕・社会科学院世界経済政治研究所所長>

人民元の国際化は(1)企業取引コストの引き下げ(2)為替水準の安定化(3)アジア周辺諸国との経済一体化(4)高すぎるアジアでのドル依存度を下げ、通貨の多元化を目指したもの。世界のニーズを満たすことによって、1990年代のような「アジア金融危機」を回避することができる。

欧州のユーロのような共通通貨を今つくるのはアジアでは困難だが、大きな流れの中で人民元の国際化が進行すれば、国際通貨としてマーケットに受け入れられるようになろう。

今年1ー6月に人民元安が進んだが、市場実態を反映して緩やかに下げるのは好ましいことだ。完全な市場開放と元の自由化を目標としている。

<畢吉耀・国家発展改革委員会対外経済研究所所長>

中国経済の構造が鉱工業から消費に転換しており、全体のGDP成長率が6%台の中で消費サービスの成長率は8%以上を確保している。技術革新(イノベーション)を通じた産業の高度化と構造改革を発展の原動力に据える。

中国は2つの100年、すなわち共産党創立100年の2021年に「小康社会」を実現し、建国100年の2051年に「中華の夢」を達成する。

<劉尚希・財政部財政科学研究院院長>

中国は企業が主体となるよう、規制緩和と国有企業改革を主体とし構造改革を進められるよう、中高速成長「新常態」経済を推進している。市場競争を促進するために、国有企業改革が急務である。財政と税務の改革とガバナンスの近代化を進めている。

<周強武・財政部国際財経センター主任(代表団長)>

杭州サミット(G20)では世界経済が低迷する中で、新興国、米国、欧州が構造改革すべきだとの方針が打ち出された。為替レートの安値への誘導を避け、市場に委ねることになった。

中国では社会主義市場経済を推進している。世界的に市場経済には欠陥があり、政府の介入や管理が必要になる。より良い政府の役割を生かしていく。

(GDPなど発表統計は信用できるのか?)数値情報の透明化に努めており、誤差の要素は排除できる。偽造すればアナリストに簡単に見破られる。偽のデータをつくる動機もない。政府もデータの正確性を重視、改ざんなどできない。権威のあるIMFなどの統計でも同様の数字が発表されている。

<張宇燕氏>

(GDPで米中逆転はあり得るか?)今後5〜10年間の年平均潜在成長率は中国は6%以上に対し米国は2%程度で4ポイント差がある。現在米国の17兆ドルに対し中国は11兆ドルなので、10数年後には逆転する。IMF発表では購買力平価方式では14年に既に米国を上回った。

<畢吉耀氏>

(過剰設備問題)各省に削減淘汰を2ー3年で達成するよう目標が定められている。上半期に石炭は37%進捗した。鉄鋼もG20 で定められた段取りで進んでいる。

<劉尚希氏>

(地方の累積赤字は膨大?)全人代で地方債務合計を上限10・7兆人民元(約153兆円)以内とすることを決定。この枠の中で各省に割り当てられ、コントロールされている。債務情報の公開が義務付けられて透明度は高い。借入資金は高速道路などインフラに向けられており、今後の経済成長の基盤となり得る。消費には使われておらず、過度に懸念する必要はない。

(中進国の罠=中進国が貿易・産業構造の変化などによって所得の伸び悩み先進国の仲間入りができないこと=に陥るリスクは?)中国は現在中進国レベルにあるが、年間所得1万ドル(約102万円)以上の中間層が増加しており、現在の経済発展状況から見て、「中進国の罠」に陥らず、先進国に近づく。中国は富裕層、中間層が全体を底上げする「先富論」を推進。教育、医療に重点的に分配し、全国民に平等にチャンスを与え、中間層の拡大に努めている。(八牧浩行)