『おとなりコンプレックス』(野々村朔/リブレ)

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 TVやネットでたまに見かける、女子以上に可愛い美少女のような男子。また、男性服が驚くくらい似合う、男性顔負けのイケメン女子。もしそんな2人が幼馴染だったら、2人は何を思い、どんな関係になっていくのだろう? そんな、見た目の性別が逆転している幼馴染2人を描いている、『おとなりコンプレックス』(野々村朔/リブレ)という漫画がある。

 主人公2人は3歳の頃からずっとお隣同士の、典型的な幼馴染。昼夜問わずお互いの家を行き来するし、LINEも最低限の連絡事項のみで通じ合う。ただ1つ普通じゃないのは、外見の性別が完全に逆転しているということ。イケメンな女子・あきらは、お洒落にも無頓着で髪も男子のように短く、身長も高め。対する美少女な男子・真琴は、家が業界人一家で顔立ちも華やか。姉の趣味で女装させられると、どこからどうみても女の子。

 そんな2人の日常、そしてそれぞれの思いを描いているのがこの漫画なのだが、本作のいいところは、中身の性別まで逆なわけではない、というところにある。あきらも自分には似合わないからとお洒落に無頓着なだけでちゃんと女の子で、真琴だって普通の男の子だ。コンビニで、店員にあきらが真琴の彼氏だと間違われた時も、真琴はレジ前まであきらを引っ張っていき、男の声で「連れのこいつは、れっきとした女だから!!!」と一言。あきらを“女の子”として傷つけないように、守ろうとした。

 一方あきらは、男に間違われても、からかわれてもほわほわしているのんびり屋さん。でも、自分の見た目が女っぽくないことは自覚していて、可愛くて綺麗な真琴をちょっと羨ましいなと思ったりしている、可愛い一面もある。そして、あきらは気づいていないが、実は真琴は、そんなあきらに恋している。見た目が男っぽくても、あきらの飾らない、素直で天然な性格が大好きなのだ。

「人は見た目じゃない」と言う人は多いが、でもどこか見た目で判断したり、されたりすることが多いのも事実。「この人はこんな人のはず」というイメージ像で判断され、それから逸れると「らしくない」と言われる。あきらは真琴の感情には気づいていないが、真琴が男の格好をしていようが女の格好をしていようが、「どっちの格好でも真琴は真琴だし」と、真琴が何をしていようが真琴であることに変わりはない、と言い切る。ここに、2人の強い結びつきを感じる。

 こういった関係は、大人になればなるほど、簡単に作れるものではない。でも、こういう関係こそ、実は誰もが求めている大切なものなのではないだろうか。見た目が逆転、というのは極端な話だが、美少女男子だろうがイケメン女子だろうが、大人しかろうが明るかろうが、その型どおりの人間なんてそうそういないはず。

 この『おとなりコンプレックス』を読んでいると、2人の展開も気になるが、何より人を見た目や思い込みで判断するというのはとてももったいないことだと感じる。身の回りの友人や恋人、上司や部下は、本当にイメージ通りの人なのか、自分自身、相手のイメージにはまろうとしていないか、考えてみてほしい。それぞれが人をイメージではなく、人として見ることができれば、道が開け、人生をもっと楽しく満喫できるような気がする。

文=月乃雫