iPhone 7はauのネットワークをどう活かせる? シン・ゴジラが襲来したら? ──KDDIの担当者に聞いた

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数年前に比べると頻度は減ったといえ、必要なときにスマートフォンが繋がらないという事態は、大きなストレスが溜まるもの。そうした事態を避けるべく、普段私たちが使っている裏で、通信キャリア各社は着々とネットワークの整備を続けています。

今回は、auでエリア改善を担当する木下雅臣氏と清水麻里さんに、auのネットワーク品質を改善する専門チーム SQAT隊(スキャット隊)の活動内容などをはじめとしたネットワーク品質改善の裏話、そしてiPhone 7がauのネットワークをどう活かせるかといった点を聞いてみました。

▲KDDI 技術統括本部 エリア品質強化室長 木下 雅臣氏

編集部:iPhone 7 / Plusは、auで初めて上りのキャリアアグリゲーション※(Uplink CA)に対応すると聞きました。上り通信ってどの程度の需要があるんですか?

木下:上り通信は下りの10分の1程度とそんなに多くはありません。ただSNSに画像や動画をアップするユーザーが増えており、そういった方々に少しでも快適に速く使っていただくということで、今回アップリンクCAを入れさせていただきました。

(※編集部注:キャリアアグリゲーション(CA)は、複数の周波数を束ねて通信を高速化する技術。auのiPhone 7 / Plusではこれを上り通信に適用。良条件での上り速度は20〜25Mbpsだという)

編集部:auのネットワークの訴求点はどこにあるんでしょう? NTTドコモは最大速度を、ソフトバンクは繋がりやすさをアピールしていますよね。

木下:三者三様みたいな感じになっていますね。我々もピークレートをiPhoneの進化に合わせて進化させてきました。ただ、多くのお客様にとっては、最大速度が20Mbpsとか30Mbpsを超えるとそれを体感することはできません。このため、最大速度よりも、ネットワークのどこかに穴があることが体感品質に大きく響くんです。それを埋めています。

編集部:この1年間のネットワーク改善の取り組みを教えてください。

木下:やはり実効速度を高めなければならないと思っています。そのために2GHz帯の20MHz幅の実人口カバー率を大きく引き上げました。これまでは東名阪をメインでカバーしていましたが、いろいろな政令指定都市を含めてカバーした結果、2GHz帯の20MHz幅において実人口カバー率78%を達成します する予定です。

編集部:1年半前にネットワークを改善する専門チーム「SQAT」を設立したと伺いましたが。

木下:SQATは、ネットワーク品質を改善する専門のチームで、スペシャル・クオリティ・アンド・タクティクスの略です。特に我々は通話もVoLTEという、完全にLTEオンリーのネットワークですので、これを緻密に構築する必要があります。SQATの隊員は、自分たちで現地のスループットを計測し、必要であればパラメーターを調整して、改善されたか確認する。といった一連の作業をワンストップで行えるようにしています。

編集部:SQAT隊は具体的にどのようなことをしているんですか?

木下:例えば毎月1回、朝の通勤路線に乗って、通信のスループットを測定したりしています。首都圏では山手線に入る路線は全部ケアしていて、これにより新宿駅に8時半に着くような一番混んでいる時間帯においても、20Mbps以上のスループットを実現しています。10Mbpsでも体感的には悪くないんですが、もっと実効速度を上げていくことが重要と考えていまして、これにはさきほども言った2GHz帯の20MHz幅化が効果を発揮しているように思います。

編集部:えっ、実際に通勤電車に乗って通信速度を測るんですか?

清水:はい。私はSQATの隊員なのですが、首都圏の南側、東海道線や東急東横線を担当しています。横浜駅から乗車して渋谷駅までとか、戸塚駅から乗って東京駅までとか。

▲建設本部 エリア設備計画部 清水 麻里氏(SQAT隊員)

編集部:それって人件費がかかりますよね。電車にスループットを測る機能があれば別ですが......

木下:IoTというやつですね(笑)。実際人件費はそんなにかかりません。頻度は1か月に1回ですし。社員で測定したり、パートナーにお願いすることもあります。スループットが高い路線はパートナー、低い路線は自分たちでいくなどのメリハリをつけています。

編集部:通勤路線で大きく改善できた事例はありますか?

木下:武蔵小杉駅の例です。もともと14Mbpsくらいとそこまで悪くなかったのですが、アンテナの傾きを変えただけで59.6Mbpsと結構変わりました。これはもともとネットワークが3G用に設計されていたためです。電波を重ねると3Gでは安定するのですが、LTEでは逆に干渉となってしまいます。そこを微妙に調整したり、オーバーラップの幅を狭くするなど、全体の干渉量を減らすことを地道にやりました。

編集部:ビッグデータも活用しているんですか?

木下:はい。スマートフォンのエリア情報送信機能を使っています。たとえばこの地図は、100mメッシュでLTEの接続率がわかるようになっています。青いところは接続率が低いですが、それでも98%以上で「ちょっと悪い」というレベル。とある飲食店での事例では、600回Pingの試験を行って、11回送信に失敗していました。この場合、屋内と外の電波の切り替え(ハンドオーバー)のチューニングが弱く、このパラメーターを調整することで、600回中1回の失敗に接続率を改善できました。

▲100mメッシュでエリアの接続率を見える化

編集部:そのレベルまで改善するんですね。エリア情報送信機能は建物の階数などもわかるんですか?

木下:最近はスマートフォンでも高度を取れるようになってきたんです。それと気象庁の気圧データと国土地理院の標高データを組み合わせれば、階数もだせますし、地下エリアも結構分かるんですよ。

編集部:なるほど、ネットワークの調査もしやすくなっていると。


【番外編】



編集部:一度聞いてみたかったんですが、ゴジラのような巨大生物が襲来した場合のネットワークへの影響はどうなんですかね? 沈黙しても大きな遮蔽物になるから、かなりネットワーク状況が変わりますよね。

木下:いや、そもそもゴジラが来ると接続調査している場合じゃないですね(笑)。ただ、通るルートにもよりますが、海底から来る場合、海底ケーブルを切ってくるでしょうから、その場合は相当なダメージです。停電もするし回線もこないしということで。

編集部:確かにそうですね(笑)。どうもありがとうございました。

KDDIに対してネットワーク品質に関するインタビューを行ったのは、2014年10月に田中社長に聞いて以来ですが(当時の様子は下記記事を参照ください)、SQAT隊の存在や活動内容、とくに実際に電車に乗って通信状態を測定している点など、普段はあまり公開されない、面白い話を聞くことができたのが印象的です。

KDDI田中社長インタビュー:僕はオタクでガジェッター、自ら電波測定する社長の「べき」論