無敵のスタンド・スタープラチナ武勇伝


先週は本体である空条承太郎の名言をまとめてみたが、スタンドのスタープラチナも破格の存在だ。射程距離こそ「C」だが、その他のステータスは全てA。特に「破壊力A 」と「精密動作A」を持つスタンドは、他にほとんど例がない。DIOとの戦いで「時を止める」能力に目覚める以前にも、こんな大活躍をしていた!


承太郎が牢屋にぶち込まれていたとき、外から『週刊少年ジャンプ』などの雑誌やラジカセ、缶ビールを持ってきた


射程距離2m程度の近接タイプなのになぜ? 「おとなはウソつきではないのです。まちがいをするだけなのです…」という荒木先生の言葉もあったが、「承太郎がコントロールし切れてなかったから、慣れてきた後に近接タイプに固まったんだ」と前向きに捉えたい。

至近距離から発射された弾丸を指でつかむ/花京院やポルナレフに植え付けられた「肉の芽」を脳を傷つけずに抜き取る精密動作


スタプラ(略称)の器用さ以上に、「自分の頭めがけて躊躇いなく射撃」や「肉の芽の触手が腕を這い上がってきても眉一つ動かさない」本体である承太郎が度胸ありすぎ。

念写された写真に映った物体を機械以上の精密さでスケッチし、アスワンウェウェバエだ特定するきっかけを作った


機械的に拡大しても判別できなかったということは「元の写真の解像度が足りなかった」わけで、モザイクを除去・補完するようなAIを搭載している疑惑あり。

流星刺突(スターフィンガー)


人差し指と中指を伸ばして、射程の外にある敵を切り裂く技。序盤の「暗青の月」と「力」戦で使用した

スタプラ最大の謎の一つ。射程距離の意味がなくなるんじゃないか? が、当時は『ドラゴンボール』が全盛期だったので「必殺技の一つでも」と荒木先生が考えられたのかも。なお、アニメ版ではアヌビス神の憑依したポルナレフとの戦いでも使われた。

ダイヤモンド並に硬いという「女教皇」の歯をオラオラで全てへし折った


その拳でヒビも入らなかったシアーハートアタックの硬さってどんだけ。もっとも「ダイヤモンド並」は本体であるミドラーの自己申告に過ぎず、ハッタリだった可能性もある

第三部の主人公補正がかかった承太郎だったら、吉良=キラークイーン瞬殺である。吉良吉影、それを含めて強運で守られてるような気がする…….

精神的には吉良に勝っていた康一くん


タイトルこそ「シアーハートアタックで」本体の吉良が主役のようだが、同時に康一くんの成長劇にもなっている前後編。「その1」ではエコーズがACT3に進化してスタンドが成長したが、今回は内面の成長劇がとてもアツい。

カフェでシアーハートアタック(以下シアハ)の戻りを待つつもりが、ACT3により左手に「重さ」をかけられた吉良。人前で目立った行動を最も嫌う吉良にとって、赤の他人の前でテーブルを壊すわ店員の服を破るわの行いは屈辱の生き恥であり、最悪の「攻撃」だ。

「ねえおじさん大丈夫かよ?何か病気っすか?」
「カーチャンに電話してやろうか」

こういう奴いるいる!とうなずく、絵に描いたようなチンピラ二人。いいスーツを着た30絡みのオッサンに絡み、仕事クビになったのと因縁をつけてくる。吉良を転ばせて、靴ひもがほどけてるからと固結びする地味な嫌がらせ。

落とした財布にかけた指が、キラークイーン第一の爆弾でボーン! あー、スカッとした。ジョジョの悪役たちが妙に人気が高い理由の一つは「身近にいそうなチンケな悪」を石ころのように蹴飛ばす痛快さにある。正義のスタンド使いは一般人に手出しできない、しかし悪党ならためらいなく制裁できる。

が、人目があるので殺さずに指だけ……という吉良の慎重さ。原作では通行人の多い表通りだったが、アニメでは路地に変更されてるのも納得度が高い。

進化したばかりのACT3と康一くんは足止めしたシアハを前に重くする能力「3Freeze」の解説。ACT2までは50mだった射程距離が5mに縮まった代わりに、パワーが強くなった。5m以上離れると重さが消えてシアハは元気ハツラツ、逆に近づくとさらに重くなる……とイラストを交えたスタンドのお勉強だ。そうこうしてるうちに吉良が到着。

「今度…ぶどうヶ丘高校の方にスポーツジムがオープンするそうだが真剣に会員になることを考えたよ…体力を付けなくっちゃあな」
「でもああいう所じゃ1週間も風呂に入ってない奴がチン(自粛)いじった手で同じダンベル持ち上げたりプールに入ったりするのかな」

いきなり下品な世間話を始める吉良。「強さ」よりも「気持ち悪さ」が強調されたサイコパス像は、連載から20年以上が経った今でも全く古びていない。

「東方仗助と虹村億泰の家が一番近いが5分ぐらいかかるから後2分か…君は二人の友人だろ?」

交友関係や個人情報がつかまれるストーキングの「怖さ」を使った漫画も、ジョジョが先駆けだろう。吉良本人が、身元バレすることを最も恐れるラスボスでもある。

こいつが!僕の目の前にいるこの男が!と劇場にかられて髪の毛を逆立て、スタンドを食らわせる康一くんは主人公そのものだ。が、キラークイーン本体で軽くあしらう吉良。

「スタンドは一人一体のはずだぞ!」と不思議がる康一くんに「ACT1~3を持ってるアンタが言うな」とネット実況でもツッコミが入っていたが、エコーズは「姿が変わる」だけで一体しか出ないので、許してあげよう。

シアハはキラークイーンの左手から発射された追撃爆弾。だから本体とシアハは同時に攻撃できる。3Freezeは一度に二箇所は重くできない……敵味方ともに能力の解説しすぎ! そこも少年マンガ的ではある。

シアハとキラークイーンの同時攻撃でACT3は鎮圧、現実は非情である。初めてだよ、ここまで追い詰められたのはな。ちょっとした敗北感まで感じるよ……と紳士らしい態度を取る吉良。スタンドバトルの勝敗は決したが、吉良吉影VS広瀬康一の戦いはここからが本番だ。

「ところでポケットティッシュ持ってるかね?ハンカチでもいいが」

ハンカチを渡してやると、殴りつける吉良! 「鼻血がいっぱい出るだろう?それを拭くためにな。これから君を嬲り殺すからな」と宣言し「ほら。ティッシュが必要だろ。拭いてやるよ。花が詰まるってことは脳の働きが鈍るそうだ」は反吐が出そうな名シーンだ。

猫がネズミを弄ぶようにいたぶる吉良に、「お前の名前は…吉良吉影…だ…」とやり返す康一くん。ちょいとひらめいて免許証を抜き取った機転……以上に手の速さがスゴいよ!

「こんな僕にさえあんたの名前がわかったんだ…あんたは大した奴じゃあないのさ…」
「こんなちっぽけなクソガキに簡単に名前がバレてしまったんだぜ…お前は馬鹿丸出しだ!あの世でお前が来るのを楽しみに待っててやるさ!」

このセリフが聞きたいために第四部アニメを見続けたと言っても過言じゃない、康一くん最高の見せ場。土手っぱらをぶち抜かれながらも吉良に敗北感を覚えさせる「勝利」のシーンなのだ。

第二回オラオラ祭りを逃げ切った吉良吉影


康一くんにムカつきながら、まだ仗助や億泰が来るまでに1分あることに(ギリギリまでいたぶれなかった)腹を立てる吉良。さっさと片付けようとしたが、康一くんが靴下を裏返して履いてると気づいたばかりに、死体に履き直させる。こんなんだから人気が出るんだよ!

それじゃあ木っ端微塵に吹き飛ばしてやる! ジョジョ立ちして人差し指をつき立てるキラークイーンのカッコいいポーズ、本当にカッコいい(大事なことなので二回言った)。

しかし、そこが吉良の幸せの頂点。なぜなら空条承太郎が復活したからだ。明らかに脊椎にヒビが入れられたり、ロードローラーで潰されそうになっても生きてた元・主人公だしね。

「いい時計だ。だがもう時間が見れないように叩き壊してやるぜ。貴様の顔面の方をな…」と煽っていく承太郎には、凶暴だった第三部の面影が蘇ってる。大ダメージで弱りきった元主人公を舐めてかかる吉良、待てー!と長年のファンなら止めたくもなる。

弱っていてもスタプラ、元気一杯のキラークイーンにバゴォッ!と拳を叩き込む。よく見たらやれやれ、趣味の悪い時計だったな……そして帽子のつばをシュッとなぞるのは、第三部での「処刑タイム」始まりのサイン(アニメオリジナル!)さあオラオラ祭り、再開だーー!

「なんだ…こいつのスタンドは!時間でも止められたみたいに速すぎる!」

アニメでは「実際は止めてない」という解釈らしい。スタプラとキラークイーンの実力が雲泥の差ってことで、実にスカッとする。

「康一君…君がいなければ俺は死んでいたな。よくたった一人で孤独に戦ったと思うよ。尊敬するぜ康一君。成長したな」

前回、認めてくれないとボヤいていた康一くんが認められた瞬間だ、ここ、最終回でも大事な意味を持つので覚えておきましょう。

そして仗助と億泰がようやく現場に到着。3人とも血を流して倒れてる地獄絵図で、ベホマ持ち(全快する能力のあるクレイジーダイヤモンドの通称)の仗助のおかげで、二人は一命をとりとめた。

さて、知らないおっさんこと吉良。今までどんなピンチも乗り切ってきた殺人鬼は、承太郎が弱っていたために、オラオラを食らっても生きていた。仗助達に見つかっても「こんなに血が出てる!痛いよ~」と迫真の名演技だ。ただのサラリーマンが、ドクロのネクタイしてないとは思うが。

しかし「傷は俺が治してやるよ」と仗助がカマをかけると「早く治してくれ」と引っかかった。どっからどう見ても高校生にしか見えない仗助に治してくれと……つまりスタンドが「見えてる」ということ。パチ屋にも入れねーで苦労してるのにと、仗助の不良っぽいボヤキも素敵やん。

「素顔もバレた。スタンドの正体もバレた。本名もバレた。もうどうやら熟睡して眠れないらしい…ただし今夜だけだ」

キラークィーンに自分の左手を切り落とさせ、シアハを自由にする吉良。

「痛いよ…なんて痛いんだ…血もいっぱい出るし涙まで出てくる…」
「だが私には勝ち負けは問題ではない…私は生き延びる…平和に生き延びてみせる。私は人を殺さずにはいられないという性を背負っているが幸福に生きてみせるぞ!」

吉良のセリフはいちいちシビれる。勝ち負けを超越した性格、人を殺さずにはいられない性を背負いながら平穏にこだわる矛盾した執念。決して幸せになれるわけないのに、必死にあがく姿は最悪のゲスにして「ヒーロー」としか言いようがない。

解き放たれたシアハだったが、クレイジーダイヤモンドとは相性がとことん悪かった。ぶっ壊さずに「治す」ことでシアハが手クビに戻って無効化。そして町内を飛んでいく手首についていく、シュールな追跡劇……!

「殺人鬼の名は吉良吉影!住所は杜王町勾当台1-128、年齢33歳!スタンドは射程近距離の爆弾スタンド・キラークイーン!」

一瞬だけ見た免許証を覚えてる、康一くんの記憶力スゴすぎ。追っかけていったゴールは、どこ家で見たビルだった。エステ・シンデレラ……顔を変換できるスタンド使い・辻彩のお店だ。

店内には首に穴を開けられた彩さんと、吉良と似た背格好の男の死体。が、左手があるので別人だ。その男は顔も右手の指紋も奪われていた……。

吉良に脅され、無理矢理に顔を変換させられたという彩さん。そう顔は……と言う彼女に仗助が近づいて怪我を直そうとしたところ、触るな!と承太郎が制止。が、間に合わない! すんでの所で億泰のザ・ハンドによって瞬間移動して事なきを得る。原作では億泰は何もしてなかったので、キャラを立てる上でもうまい改変だ。

吉良が逃げた扉の向こう。そこは帰宅時間でサラリーマンの群れ、紛れてどいつか分からない……見事に逃げ切りやがった。

「奴は怯えもしなければ隠れもしない。この杜王町から出もしない。この街で今まで通り生活する…」

このシーン、よく見ると後に出てくるスタンド使いを「先出し」してるので、探してみるのも面白い。次回「アトム・ハート・ファーザー」でも引き続き、空条承太郎が大活躍するぜ!
(多根清史)