遊川和彦はやっぱり最終回にスゴイのをぶっ込んできた!

公式サイトの予告に、

「最後に誰も予想できない奇跡が起こる…!?」

と書かれていた通りに奇跡を起こして、もはや不可能かと思われていたハジメくん(横山歩)との特別養子縁組を成立させることができた美奈(尾野真千子)と信次(江口洋介)の夫婦。

『純と愛』以降の遊川ドラマとしては珍しく、ちゃんとしたハッピーエンドだったわけだが、前回までにドーンと広げた風呂敷をキレイにたためたかというと、消化不良な要素が多く、例のごとくモヤモヤさせられてしまう『はじめまして、愛しています』(テレビ朝日系・木曜21:00〜)最終回だった。


最終回にぶっ込んできた志田未来の告白が後味悪過ぎた


最終回まで引っ張ってきた最大の気になりポイントはやはり、ハジメの実の母親・泉(志田未来)はどうして虐待をしていたのか? ということ。

長野の自宅から失踪し、なぜか東京の海で自殺しようとしていた(まあ長野には海、ないけどさぁ……)泉(志田未来)を、自らも海に飛び込んで助けた美奈。

それからなぜか、病院から美奈たちの自宅に連れて行き、美奈と泉はマンツーマンでの話し合いをすることに。

尾野真千子と志田未来の超絶演技がぶつかり合い、思わずグイッと引き込まれてしまうすごい場面だったのだが、ハジメを虐待・育児放棄してしまい、その罪悪感から自殺未遂をした直後の泉に「自分たちがいかにハジメを愛してきたのか」という手紙を延々と読み上げ、

「だからハジメを私と夫に育てさせてもらえないでしょうか。どうか、どうかお願いします!」

「どうしてもハジメと一緒にいたいの? じゃあ、私たちが育ててもいいの? 一体どっちなの? アナタそれでも母親!?」

……なんて迫るというのは脅迫に近いよ!

その後の、泉からの告白も後味悪すぎた。

泉は父親から性的虐待を受けており、そのせいで妊娠。ハジメの父親は、泉の父親だったのだ。

妊娠を両親に知られるわけにはいかないと家出をして、ひとりで公園のトイレで出産。そのままひとり暮らしをはじめたものの、ハジメが大きくなればなるほど、どんどん父親に似てくるのを見るのがイヤで、鎖でつないで育児放棄してしまったと。

父親の性的虐待からの虐待の連鎖というのは現実にもあり得る問題だが、それだけに、その深刻な問題がすべてセリフのみで処理されていたのも残念だった。

で、その父親ってどんなヤツなんだよ!? と思ったら、

「母から、父が死んだって聞いたし」(病死なのか何なのかも不明)

ということで、名前も顔も出てこないという消化不良っぷり。もう少しちゃんと掘り下げて欲しかった……。

「いっぱい愛してあげて」と「私たちに育てさせて」は両立できるのか!?


告白を終えた泉は、

「あの子(ハジメ)に謝らなくちゃ」

と心を入れ替えるが、

「きっと許してくれるわよ、ハジメはとっても優しくていい子だから。いつかアナタにも言うはずよ、僕を産んでくれてありがとうって」

「だからこれからはハジメを産んだことを恥じないで。今からでも遅くないからいっぱいいっぱい愛してあげて」

「子どもを大切にしないような行いは、どんな言い訳をしても人間として間違ってるのよ!」

という美奈の発言から、どうして美奈と信次がハジメを育てるという話になるのだろうか!?

父親からの性的虐待によって生まれた子どもを、実の子どもだからといって愛することができない泉の気持ちはよく分かるものの、虐待・育児放棄をした罪悪感から自殺未遂までしているのに、

「ヒカ……ハジメくんは梅田さんに育ててもらおう。それがあの子にとって一番幸せなことなの!」

という解決方法でいいのか!?

時間が足りなくなったのでは……と勘ぐりたくなってしまう


そして、強烈過ぎる悪役に描かれてきた泉の母親・月子(富田靖子)のキャラクターが消化し切れていなかったことも気になった。

娘の子ども(ハジメ)が、自分の夫がはらませた子であることを隠すために、ハジメを手元に置いておこうとしていたのだとすれば、あそこまで強硬にハジメを奪っていこうとしたのもうなづけるのだが、特にそういうわけでもないのだ。

泉と父親(月子の夫)の関係も知らず、泉の妊娠も知らず、泉が家出をしても5年間放置(?)。おそらく、泉が出産したことを知った後も、その父親が誰なのかを問いただしていないという。そこまで娘に興味がないのに、どうして孫にはあんなにこだわっていたのか!?

富田靖子の演技も相まって、すさまじくいい味出しているキャラだったのに、「ただ単に性格の悪いババア」という位置づけのままで終わってしまった。

その他にも、

泉にとっては「ヒカリ」(戸籍上の本名)のはずなのに、泉に向かって「ハジメハジメ」言うな! とか。

泉を助けるために海に飛び込んだ美奈の服が、CMが開けたらすっかり乾いていたとか(同じ服のまま!)。

特別養子縁組が成立しても、別に本名を変えられるわけじゃないのに、なぜか役所の人が「ハジメ」と呼んでいたとか……。

細かいモヤモヤポイントはまだまだいっぱいあるのだが、脚本上の欠陥というよりは、単に色々なエピソードを処理する時間が足りなくなっちゃったんじゃないのかと勘ぐりたくなってしまうくらい駆け足の最終回だった。

サッカーワールドカップ・アジア最終予選の放送があり、1週放送がなかったものの、さすがにそれは前々から分かっていたはずなので、イレギュラーな形で9話完結しなければならなかった……というわけではないと思うのだが。

あと1〜2話続いて、泉の家庭事情などがもうちょっと丁寧に描かれていたとしたら、最終回の印象はかなり違ったのではないだろうか。

遊川和彦の初・監督映画『恋妻家宮本』が今から楽しみ!


とはいえ、ドラマ全話を振り返ってみると、特に前半はハジメ役の横山歩くんの泣かせる演技もあり、かなり楽しませてもらった『はじめまして、愛しています』だった。

最後の最後、美奈から言い出した「10 10 085(とうとう親子)」の語呂合わせには思わず泣かされてしまったしね……。

細かいところはちょいちょい気になったけど、『純と愛』『○○妻』あたりの、最終回を見終えて「フザケンナー!」とちゃぶ台をひっくり返したくなるような、「この人、ちゃんと話を終わらせる気ないだろ」状態からは脱却したと言えるのではないだろうか?

こうなると、遊川マニアとして次に気になってくるのは、来年公開が控えている、遊川和彦の初・監督映画『恋妻家宮本』!

公開に先駆けて、モントリオール世界映画祭で上映され、エンドロールから5分以上にわたって拍手が鳴り止まなかったという情報もあるし、何より遊川ドラマの常連・天海祐希が阿部寛とのダブル主演を務めているのだ(天海祐希の大学時代は早見あかりが演じる!)。

かねてから、脚本家なのに撮影現場にやって来て演出にまで口を出しまくると、良くも悪くも評判だった遊川和彦が、脚本&監督を一手に引き受けたらどんな映画が出来上がるのか。

次は『恋妻家宮本』のレビューでお会いしましょう!?
(イラストと文 北村ヂン)