今オフほど、NBAで大物選手の移動が多い年はなかったのではないだろうか――。そこで、シーズンが始まってから困惑しないように、「今夏、驚きの移籍トップ10」を紹介する。

※ポジションの略称=PG(ポイントガード)、SG(シューティングガード)、SF(スモールフォワード)、PF(パワーフォワード)、C(センター)。

【1】 ケビン・デュラント(SF)
(オクラホマシティ・サンダー → ゴールデンステート・ウォリアーズ)

 7月4日、デュラントは悲願のNBA制覇を目指すため、ゴールデンステート・ウォリアーズと2年5430万ドル(約55億6000万円)で契約を結んだ。この移籍により、ステファン・カリー(PG)、クレイ・トンプソン(SG)、そしてデュラント(SF)の3人が同時にコートに立つという驚異の布陣が完成。突然の電撃移籍は多くのNBA選手も驚きを隠せず、「1試合で200点でも取るつもりか」(マーチン・ゴータット/C/ワシントン・ウィザーズ)、「唯一の問題は、ボールがひとつしかないことだ」(ルディ・ゴベール/C/ユタ・ジャズ)とSNSなどでコメントを発していた。

 移籍理由についてデュラントは、「選手として成長するための可能性を決断の軸にした」と語り、強すぎるチームが誕生することによって、自身とウォリアーズが悪役になることも織り込み済みだ。

「我々はヒーロー漫画の世界に生きている。そこでは、スーパーヒーローにも悪役にもなり得る。オクラホマシティや世界中のファンが狼狽することも理解している。それでも、自分がどうしたいかという観点で決断を下した」

 昨シーズン、ウォリアーズはレギュラーシーズンでNBA歴代最多の73勝を挙げている。デュラント加入で、さらに白星を上乗せするのか、それとも......。

【2】 デリック・ローズ(PG)
(シカゴ・ブルズ → ニューヨーク・ニックス)

 6月22日、ニューヨーク・ニックスとシカゴ・ブルズとの間でトレードが成立。ローズは8シーズン過ごしたシカゴの街を離れることになった。

 2008年のドラフト全体1位でNBA入りしたローズは、2010−11シーズンには史上最年少でシーズンMVPを獲得。しかし、2012年に左ひざ前十字じん帯断裂の大ケガを負い、懸命のリハビリの末に復帰を果たすも、全盛期の輝きを取り戻すまでには至らなかった。

 出身地シカゴから追われる形になったローズは、「ブルズにありがとうと伝えたい」とコメント。ブルズ時代の背番号「1」を手放し、ニックスでは高校時代につけていた「25」を背負うことになった。今年10月で28歳になるローズ。元MVPの新天地での完全復活を期待してやまない。

【3】 パウ・ガソル(C)
(シカゴ・ブルズ → サンアントニオ・スパーズ)

 ガソルの移籍が報じられたのは、ローズ放出の興奮冷めやらぬ7月4日。トロント・ラプターズやポートランド・トレイルブレイザーズなどからの勧誘もあったようだが、弟のマーク・ガソル(C/メンフィス・グリズリーズ)のアドバイスもあり、サンアントニオ・スパーズを選択したという。

 スパーズファンの多くは、ガソルの加入を歓迎すると同時に、「インサイドの補強はダンカン引退の布石では?」と勘ぐった。その予感は的中し、ティム・ダンカン(PF)は7月11日に引退を表明。19年間にわたる選手生活にピリオドを打ち、スパーズは新たな時代の扉を開けることになった。

 ガソルの契約内容は、2年3000万ドル(約30億6000万円)。ロサンゼルス・レイカーズ時代に2度のNBAチャンピオン(2009年・2010年)に輝いたガソルは、ダンカンに代わるスパーズの支柱となれるか。

【4】 アル・ホーフォード(C)
(アトランタ・ホークス → ボストン・セルティックス)

 2007年のドラフト1巡目全体3位で入団して以来、9シーズンを過ごしたアトランタ・ホークスで4度のオールスター出場を果たしたホーフォード。リーグ屈指の「走れるビッグマン」は、名門復活を期して急上昇中のボストン・セルティックスでアイザイア・トーマス(PG)とコンビを組むことになった。機動力の高いデュオの誕生で、対戦相手にとっては厄介な存在となりそうだ。

 昨シーズンもレギュラーシーズン全試合に出場。平均32.1分のプレーで15.2得点と、今年6月で30歳になろうとも不安要素はない。セルティックスが提示した4年1億1300万ドル(約115億8000万円)は、その期待の表れだろう。ホーフォードはプロ入り後、一度もプレーオフ進出を逃したことがないだけに、この加入は想像以上に大きい。

【5】 ドウェイン・ウェイド(SG)
(マイアミ・ヒート → シカゴ・ブルズ)

 12年連続でオールスターに選出され、2006年にはシャキール・オニール(C)とともにマイアミ・ヒートを初優勝に導き、ファイナルMVPも受賞。その後、レブロン・ジェームズ(SF/クリーブランド・キャブス)、クリス・ボッシュ(PF)と"ビッグ3"を形成して2連覇も達成した。そんなヒートの英雄が今オフ、大いに怒りを表したという。その理由は、チームがデュラントの獲得交渉を最優先したからだ。

 来年1月で35歳。プレー時間が徐々に減っているのは否めない。しかし、ウェイドはついに移籍を決断した。7月6日、生まれ故郷を本拠地とするブルズと2年4750万ドル(約47億9000万円)で契約。ウェイドは出身地シカゴで、もうひと花咲かすことができるか?

【6】 ドワイト・ハワード(C)
(ヒューストン・ロケッツ → アトランタ・ホークス)

 昨シーズン、ルーキーイヤー(2004−05)以降最低となる平均13.7得点に終わったハワード。オフェンス面での役割に不満を抱き、「もっとオフェンスをさせてくれ」とダリル・モーレイGMに直訴するも、「それは望んでいない」と一蹴されて移籍を決意したという。7月1日、アトランタ・ホークスと3年7050万ドル(約72億3000万円)で契約を結び、自身の出身地で再起を誓った。

 ホークスの弱点だったリバウンドを量産できるハワードは、まさにうってつけの存在。アウトサイドでのプレーを得意とするポール・ミルサップ(PF)とも共存できそうで、意外とすぐにチームにフィットするかもしれない。ただ、ハワードがオフェンスで出しゃばり過ぎなければ......。

【7】 ジョアキム・ノア(C)
(シカゴ・ブルズ → ニューヨーク・ニックス)

 2014年に最優秀守備選手賞を受賞し、「ブルズに欠かせない選手」とまで評されたが、昨シーズンはフレッド・ホイバーグHCの構想から外れ、今年1月には左肩を脱臼してシーズンを終了。フリーエージェントになったジョアキム・ノアの獲得には、ワシントン・ウィザーズやミネソタ・ティンバーウルブズなど、多くのチームが手を挙げた。

 そんな争奪戦のなか、元チームメイトであり、ひと足早くニックスに移籍したローズが、「ノアがほしい。彼もそれを知っている」と発言。ローズの存在が決め手になり、ニックスがノアの獲得に成功した。契約内容は4年7000万ドル(約74億2000万円)。手術した左肩は現在、順調に回復している。

【8】 レイジョン・ロンド(PG)
(サクラメント・キングス → シカゴ・ブルズ)

 今オフの移籍市場は、なにかとブルズが目立っている。ローズ、ガソル、ノアが出て行った一方、ウェイドとともに加入してきたのが、昨シーズンのアシスト王のレイジョン・ロンドだ。セルティックス時代の2008年にNBA制覇を成し遂げ、アシスト王3回(2012年・2013年・2016年)、スティール王1回(2010年)に輝いたリーグ屈指のポイントガードに、プレーオフ進出を逃したブルズの再建が託された。

 7月3日に2年2800万ドル(約28億7000万円)で契約を結んだことにより、来シーズンのブルズのスターターはロンド(PG)、ウェイド(SG)、そしてリオ五輪でも活躍したジミー・バトラー(SF)が並び立つことになる。ただ、"我の強さ"も有名なロンドだけに、この新ビッグ3が機能するかはフタを開けてみなければわからない。それでも、胸が高鳴るトリオであることは間違いないだろう。

【9】 ハリソン・バーンズ(SF) & アンドリュー・ボーガット(C)
(ゴールデンステート・ウォリアーズ → ダラス・マーベリックス)

 カリーとトンプソンの驚異的なオフェンスばかり注目されるウォリアーズだが、粘り強いディフェンスでチームを底から支えていたのが、バーンズやボーガットといった脇役たちだ。そこに目をつけたのが、ダラス・マーベリックスである。

 まずは、デュラントの加入によって新天地を探していたバーンズと4年9400万ドル(約96億7000万円)で契約を結ぶと、今度はトレードで2014−15シーズンにオールディフェンシブ・2ndチームに選出されたボーガットも獲得。ふたりの加入によって、マブスのディフェンス力は大幅にアップするはずだ。

【10】 ジェレミー・リン(PG)
(シャーロット・ホーネッツ → ブルックリン・ネッツ)

 2012年、ニックス時代に"リンサニティ(リン旋風)"ブームを巻き起こして時の人となったリンが、ついに高額契約をゲットした。報道によると、契約内容は3年3600万ドル(約37億1000万円)。来シーズンからサラリーキャップが7000万ドルから9400万ドルに大幅アップしたことも関係しているが、NBA初の台湾系アメリカ人選手が年棒10億円オーバープレーヤーの仲間入りを果たした。

 このサラリーキャップの変動によって、今オフは予想外のインフレが起きている。ひとつの例を挙げるならば、驚異のリバウンド力を誇りながらオフェンスはからっきしのビスマック・ビヨンボ(C)。オーランド・マジックが4年7000万ドル(約71億7000万円)という高額契約を結び、関係者を驚かせた。

 果たしてこの夏、もっとも得をしたチームはどこなのか――。今からシーズン開幕が待ち遠しい。

水野光博●文 text by Mizuno Mitsuhiro