関連画像

写真拡大

夫のひどい仕打ちを知り、「頭真っ白状態です。情けない」と怒る72歳の女性が、Yomiuri Onlineの「発言小町」に相談を寄せました。51年間、結婚生活を続けてきた夫(79)が、愛人の女性に月9万円の「お手当」を渡していることがわかったというのです。

女性は結婚後、夫(79)と協力して会社を立ち上げ、「順調に大きくなりました」といいます。しかし「お金が回るにつけ、ありがちな女遊びが始まりました」。それでも経営と結婚生活を続けました。

そして今から12年前の60歳のとき「定年の歳になったので役員給料は払えなくなった」と夫に言われ、了承したそうです。月16万円の役員給料と、厚生年金が同額だったため「そんなものかと」思ったからでした。夫は会長に退き、息子が社長に就きました。

ところが、その後も「私名義」の口座に「給料を払っている事が判明しました」。銀行に確認したところ、「知らない人が知らない印鑑で、私名義の通帳を作り、その通帳に毎月9万円振込されていました」。すぐに振込をストップし、調査すると「主人の愛人さんのお手当と判明したのです」。

その額、12年×9万円×12ヶ月で、1296万円。愛人は「息子と同じ歳」だといいます。今後については、夫次第だといいます。「離婚はするつもりありません」というものの、今回の件にかぎってではなく「45年の女遊び」に対する不満が爆発寸前のようです。

トピ主は「これは、誰が、どのような罪になるか教えていただけないでしょうか?」と聞きます。今回、夫や愛人はどのような罪に問われることになるのか。増田勝洋弁護士に聞きました。

(この質問は、発言小町に寄せられた投稿をもとに、大手小町編集部と弁護士ドットコムライフ編集部が再構成したものです。トピ「72歳の事件です、主人79歳。」はこちらhttp://komachi.yomiuri.co.jp/t/2016/0905/776403.htm?g=15)

 ●夫と愛人はどのような罪に問われる?

トピ主さんからの「誰が、どのような罪になるか」という質問に限ってお答えします。

まず、トピ主の夫は、会長に就いていますが、妻の役員報酬名目で会社の資産を愛人への手当という私的な使途に流用しています。この行為は、会社に対する関係で「業務上横領罪」(刑法253条)、「特別背任罪」(会社法960条)が成立する可能性があります。

ただし、妻や息子が株式を一定の割合保有していれば警察も動くかもしれませんが、夫が会社の株式全部を保有しているような場合には「横領」や「背任」の罪の成立は難しいです。

次に、愛人はどのような罪に問われるのか検討します。

もし愛人が銀行で妻名義の「口座開設申込書」を偽造し、かつ、自分が妻本人であるかのように装って、申込書を窓口の係員に提出し通帳の交付を受けていたとします。この場合には、「私文書偽造罪」(刑法159条)、「同行使罪」(同161条)、「詐欺罪」(同246条)が成立する可能性があります。

その際に、夫が愛人を唆(そそのか)していたとしたら、夫も共犯に問われます。ただし、詐欺の被害者は銀行です。銀行の協力がなければ「詐欺」や「文書偽造」の罪に問うことは難しいと思われます。

また、愛人が知らないところで、夫が一人で銀行へ行き、妻名義の口座を開設していた場合、愛人を罪には問えません。銀行にも他人名義の口座を簡単に開設した落ち度がありますから、夫を罪に問うことも難しいです。

なお、愛人が妻名義の口座から金銭を受け取る行為は、夫が手当てを渡す方法として他人(妻)名義の口座を利用しているだけです。妻の所有する財産が侵害されているわけではありませんので、そのことで愛人を刑法上の罪には問うことはできません。



【取材協力弁護士】
増田 勝洋(ますだ・かつひろ)弁護士
大阪弁護士会、司法委員会、司法修習委員会委員
著書:『事例にみる遺言の効力』(共著、執筆担当)
事務所名:増田法律事務所
事務所URL:http://www.masuda-law.net/