『魚が食べられなくなる日』(勝川俊雄/小学館)

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 ホッケの塩焼きが好きだ。皿からはみ出るほど大きく、脂ののったそれは居酒屋の定番メニューでもある。しかし最近いつ食べたか、と聞かれるとなぜか思い出せない。

 それもそのはずだ。『魚が食べられなくなる日』(勝川俊雄/小学館)によると、10年ほど前から出回るホッケは徐々に小さくなり、近頃は置いていない店まであるという。

 原因は漁獲量の大幅な減少だ。最盛期のなんと9割も減ってしまったという。小さくなったのは、獲れる量が減ったことで成長前の若齢魚まで獲らざるを得なくなったからだ。

 これは、ホッケに限ったことではない。今年“なまずの蒲焼”が話題になったが、ウナギも減少が止まらない魚で、2014年に絶滅危惧種となったのをご存じだろうか。他にも、サバは最盛期から7割減、ニシン漁は壊滅状態でほぼ輸入、日本人が愛してやまないマグロはウナギ同様すでに絶滅危惧種だ。漁獲量全体でみても、1970年後半の4割以下にまで減少。日本の海から、魚が確実に姿を消し始めているのだ。

 本書では、原因として憶測されがちな3つのことを挙げている。

(1)中国、韓国船による乱獲
(2)クジラが食べてしまった
(3)地球温暖化

 しかし、どれも理由としては不十分だという。例えば、日本人が敏感な(1)について見てみよう。外国船の影響は海域によって異なる。日本海や東シナ海は各国の漁場が接しており、多少影響が及ぶことも考えられるが、太平洋では日本の200海里外でしか漁業ができない。当然、海上保安庁の警備もあり、入り込んで魚を根こそぎ獲るようなことは考えにくい。

 さらに、外国船の違法操業がほぼ不可能な瀬戸内海や内湾部の魚が減少している点からも、中国、韓国船の乱獲が原因とは考えづらいのだという。

 それでは、一体なぜ魚はいなくなってしまったのか。意外とも言える真実は、ぜひ本書で確認していただきたい。

 著者は水産資源管理と資源解析を専門とする水産学者。本書ではプロの目線で日本の海、漁業の問題点を分析、未来への道標を提言している。難解な用語はやさしく置き換えて解説されていて、素人にも読みやすい。

 正直なところ、日本の海がこんな危機的状況とは思いもよらなかった。魚は、週に1、2度食卓に並べばいい方で、スーパーにずらりと並ぶ輸入魚で何とかなってしまう。だから、国産魚が小さくなっていることなど気付きもしなかった。

 世界一と言われる魚市場を有し、古くから魚食文化を持つ日本人は、もっと日本の魚に関心を寄せるべきなのだろう。

消費者には「未来の世代も、私たちと同じようにウナギやマグロを食べられるだろうか」とか、「自分たちが食べている魚の持続性が脅かされていないだろうか」と言った配慮をする責任があるのです。

 本書は、“当たり前”のものにも限りがある、ということを気づかせてくれる。 近いうちにまた、豪快に盛られたホッケの塩焼きをいただきたいものである。

文=吉田裕美