「今の働く女性は、がんばりと我慢で乗り切ることに馴れすぎていると思います」そう話すのは、女性ライフクリニック銀座・院長の対馬ルリ子(つしま・るりこ)先生。ついつい全力疾走してしまいがちな30代の、上手な過ごし方について聞きました。

女性の一生は「冬」から始まり「秋」で終わる

――今日は30代の上手な過ごし方について、お話を伺います。30代って、仕事もプライベートも充実して一番楽しい時期だと思うんですが……

対馬ルリ子先生(以下、対馬):30代が一番? 本当かしら(笑)。もしかしたら更年期を過ぎた60歳からが一番かもしれないわよ。というのも、女性の一生は「冬」から始まり「秋」で終わるから。一般には「春」から始まり「冬」で終わるイメージだけど、「冬」で終わるなんて寂しくて悲しいから、私はいつも「人生の後半は実りの秋になるのよ」と話すようにしているの。

年齢でいうと、思春期から25歳までが芽吹いて育つ「春」、そこから60歳くらいまでが長い「夏」、それ以降は「秋」。そうすると、一生のイメージがパッと明るくなるでしょ。冬に向かって枯れていくのではなく、秋に向かってどんどん充実していく「末広がり」なイメージ。どう? ワクワクしてこない? 人の身体も人生も、思い描いた通りになっていくの。まずイメージを変えることが大事よ。

――頭の中のイメージを変えると、身体や人生も変化するんですか?

対馬:もちろん。脳は、頭の中で思い描いたことと現実に起きていることの区別がつかないの。だから、脳にとっては、あなたが日々感じていることこそ、事実。ポジティブに感じているか、ネガティブに感じているか、何を感じているかによって自律神経を介して身体全体のシステムを調整していくから。

――なんだか、世界観がガラリと変わりました。

対馬:そうでしょ(笑)。「もう30代。これから先は女として枯れていくばかり……」と思うのと、「まだまだ30代。やりたいことはたくさんある!」と考えるのとでは全然違うでしょ。気持ちがワクワクしていたら、身体だってスイッチが入って元気になる。女性はいつでもご機嫌で生きていたいもの。ご機嫌でいられたら、身体も心も快適に過ごせるのよ。

「不定愁訴」がない方が危ない

――30代はまさに「夏」まっさかりだと思いますが、自分の身体とはどんなふうに付き合っていけばいいんでしょう?

対馬:その時期は、一生のうちで性ホルモンの働きがもっとも活発で、体力的にも非常に充実しているから、みなさん、全力でがんばっちゃうのよね。私自身もそうだったけれど、今の働く女性って、若い頃から「男性と同じように働くこと」を求められているの。つまり、緩急なく、ずーっと一本調子でがんばり続けるというワークスタイルが身についてしまっている。でも、男性的な働き方って、実はよくないのよね。

例えば、男性って、「不定愁訴」が少ないでしょ。女性のように、動悸がするとか、イライラするとか、頭痛・めまい・耳鳴りがするとか、なんとなくだるいとか、そういう小さな不調があまり出てこない。その代わり、突然大病したり、ポックリ亡くなってしまったりするの。生物学的に見て、男性は女性よりも弱いのよね(笑)。

――そうなんですね(笑)。

対馬:逆に女性は、忙しかったりストレスがかかったりするとすぐ調子が悪くなる。結果、常に「不定愁訴」を抱えながら、ゆるゆると長く生き続けるの。そう考えると「不定愁訴」は女性を守ってくれていると言えない? 「不定愁訴」があるから、女性は男性のように命に関わるところまで頑張らない。無理せずきちんと休んで生きながらえる。生命体としては、女性の方が強いんですよ。

――またまた発想がガラリと変わりました。

対馬:そう。「不定愁訴」は身体を壊している証拠ではなく、身体が教えてくれるSOSのサインだと考えて。脳の間脳下垂体系という生命維持装置が心身のストレスを受け取り、SOS症状を出すことで、これ以上無理しないように強制的にブレーキをかけくれているの。男性は、そのブレーキ機能が弱いから、かわいそうよね(笑)。

仕事のクオリティを気にしない時期も

――要は緩急をつけるということですね。

対馬:そうよ。緩急をつけるという意味でわかりやすいのは、育児ね。私には二人の娘がいるの。もう二人とも成人しているけれど、小さい頃は本当に毎日大変だった。今から考えると、あの頃の生活はもうめちゃくちゃ(笑)。産婦人科医としての仕事も中途半端だし、娘たちは朝から晩まで保育園や人に預けてばかり。「私って本当にダメな母親。仕事も育児もちゃんとできない」って。

でもね、今言えるのは、「とにかく続けてよかった」ってこと。心からそう思う。完璧にやろうとして、仕事か育児の一方に絞るんじゃなくて、中途半端でいいから、まわりから文句を言われてもいいから、とにかく細々と続けてきたら、徐々に自分らしい仕事ができてきたのよ。

――先生にもそんな時期があったんですね。

対馬:育児中にさんざん迷惑をかけた同僚から、以前こう言われたの。「対馬、おまえ、えらいよな。なんだかんだ言っても続けてきたもんな。」って。その時に思ったわ、続けることが大事、途切れさせないって大事なんだって。

――そうは言っても、どちらも中途半端だと焦りますよね。

対馬:大丈夫よ、続けていれば、きっとなんとかなるから。私自身の人生を振り返ってみると、30代って、修行の時期だったな。20代、30代の修行があって、40代になってからやっと「自分のやりたいことができるかも」って感じが持てたの。だから、30代で辞めちゃうのはもったいない。

細々とでも10年続けていれば、まわりからも認められるようになるし、自信もついてくる。仕事のクオリティを気にするよりも、人に迷惑かけたり、失敗したりしてもいいから、とにかく続けること。それがあとになって必ず自信と評価になって返ってくるから。

――先生にそう言われると、なんだか元気が出てきました。

対馬:大丈夫、できるわよ! 別に育児じゃなくてもいいの。女性の30代って、とにかくやることがたくさんあるでしょ。全部完璧なんて無理だから、がんばりと我慢で乗り切ろうとしなくていい。緩急をつけながら「途切れない生き方」にシフトした方がいいと思うの。もちろん、楽しいならどんどんやっていいのよ。無理にセーブすることはないの。交感神経が優位でバリバリできている時は、人は病気にならないものだから。

私の場合、下の娘が小学校に上がった40歳頃になって、やっと少し時間ができた。それまで「時間がない、時間がない」って毎日だったのが、拍子抜けするくらい余裕ができて。それで何か始めようと考えた結果、女性の健康や権利に関する取り組みを始めたの。そして今につながっているわけ。

とにかく、みなさんの人生は末広がりなんですよ。だから、実りの「秋」に向けて毎日ご機嫌で過ごしてくださいね。いつも、いつまでも応援しています!

(間野由利子)

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(間野 由利子)