知っておきたいという気持ちはあっても、意外に知る機会が限られているのが政治についてのいろいろなこと。けれど人にも聞きづらく、結果的には疑問を疑問のまま放置しているという方も決して少なくないはずです。

そこでおすすめしたいのが、『“知ってるつもり”から抜け出す! 「政治のしくみ」がイチからわかる本』(坂東太郎著、日本実業出版社)。

日本ニュース時事能力検定協会委員でもあるニュース会社者の著者が、政治に関する基礎知識をわかりやすく解説した書籍です。

ところでニュースを聞いていると、「予算」についての話題が登場することがよくあります。しかしそうでありながら、その基礎的な部分は置き去りにされがち。

そこできょうは、その基本的な部分について取り上げてみましょう。

■毎年1月の通常国会で予算案を提出!

国会は、法律だけでなく、国のお金の使い方を決める場でもあります。

そして通常、単に「予算」という場合は、年度(当年4月1日から翌年3月31日まで)に入ってくるお金と、その使い道を示した「一般会計予算」をさします(「当初予算」といわれることも)。

なにをするにもお金が必要で、それは国のサービスも同じ。

そこで毎年1月、必ず開かなければならないことになっている「通常国会」で、新春から3月末までのうちに国が見込んだ収入(歳入)と使い道(歳出)の見積もりを、憲法の規定によって内閣が「作成して、国会に提出」(86条)します。

すなわち、これが「予算案」。

まず前年8月ごろまでに「省」や「内閣府」など、国の機関が翌年の見積もりをつくります。これが「概算要求」。

ところがこれは、各省庁が欲しいぶんだけ要求しがちなので、「盛った」数値もあるのだとか。そこで財務大臣が年末近くに審査をし、「予算原案」にするのです。

ところが、ここで概算から削られたり、なくなったりする要望も出てくることになります。

そこでもう一回、原案との突き合わせ・微調整を行うことに。そしてそこまでを根回ししたあとに、首相をリーダーとする内閣の決定(閣議決定)に至り、それが翌年早々、国会に提出されるというわけです。

■国会の演説や質問は「いいっぱなし」

予算案の場合は、1月からはじまる通常国会の冒頭にある首相の施政方針演説で年間の方針が語られたあと、国の財布を預かる財務省トップの財務大臣が、「財政演説」というかたちで示します。

そしてそののち、与野党各会派の代表による質問が行われるのです。

とはいっても、ここまでの演説や質問は「いいっぱなし」。具体的な問答が行われるのは、次に開かれる予算委員会となるのだそうです。

なお法律案は原則として衆議院・参議院どちらに出してもかまわないといいますが、予算案は衆議院が先(先議権)と決まっているそうです。

最近の当初予算の歳入面では、本来それでまかなうべき「税収」だけでは歳出には足りず、国債(国の借金)頼り。そして歳出のトップは年金や医療などの「社会保障」で、次いで「国債費」(借金返済)が続きます。

なお予算には、当初予算以外に「補正予算」「暫定予算」があります。

補正予算は、年度の途中に、自然災害の被害や不景気などで追加のお金が必要だと内閣が判断した場合に計上されるもの。

暫定予算は、年度内に次の年度の当初予算が決まらなかった場合、公務員の給与など当面の間必要な支出だけを計上するもの。

■予算委員会は結果的になんでもあり!

予算委員会(予算委)は衆議院で50人。会派の大きさに合わせて割り当てられ、委員長が委員のなかから選ぶそうです。

通常国会の前半最大の課題は予算で、質疑のスタートが衆議院予算委員会なので必然的に注目が集まることになります。

予算案はあらゆる国家機関の見積もりであり、内閣の責任で出されるので、答弁に立つべき国務大臣も原則的には全員出席。

すると予算委以外の委員会に大臣が出席できないため、結果的に予算委優先、予算委のみ開催となるそうです。

なお、予算は提出者も執行者も内閣なので、首相や国務大臣がどういう姿勢で1年間を過ごすかまでが話題になります。

スキャンダルの話題なども出ますし、結果的に「なんでもあり」になってしまうというのです。

■予算を人質に揺さぶられることもある

衆議院の委員会で採決して可決し、本会議も通ると、予算案は参議院に送られます。

その結果が秘訣や修正となったとしても、「衆議院の優越」規定があるため、最終的に衆議院の議決で決まることになります。

つまり予算そのものについてあれこれいっても、多くの場合は上手にかわされて終わり。

そこで攻める側の野党は、「こんな内閣のつくった予算案を信用できるのか」とスキャンダルを追求したり、「態度がなっていない」などと理事に文句をつけて引き伸ばしをはかるなどして「成果」を得ようとしたりするわけです。

内閣にとって、予算の3月末までの成立は至上命題で、それができないと非力な内閣とみなされるため、野党から痛いところを握られたりしている場合は、問題大臣のクビと引き換えに審議促進を非公式に伝えるといった手段に出ることも。

「予算を人質に揺さぶる」という行為です。

このように予算委員会は華々しい割に、

(1)どのみち衆議院で多数を取っている与党が選んだ首相による内閣提出だから、原案どおりに可決する

(2)「可決する」とわかっている野党は、仕方なくスキャンダル攻撃などでがんばっているふりをする

という2点があらかじめほぼ決まっているので、「出来レース」との声も浴びせられるといいます。

基礎的なことがコンパクトにまとめられているため、知りたいことを確実に理解できるはず。困ったときのため、手元に置いておくといいかもしれません。

(文/作家、書評家・印南敦史)

 

【参考】

※坂東太郎(2016)『“知ってるつもり”から抜け出す! 「政治のしくみ」がイチからわかる本』日本実業出版社