4月末「近赤外光線免疫療法」という、がん治療の臨床試験が、米国食品医薬品局よりゴーとなった。その研究結果が8月に公表され、同療法で治療した場合、外科手術で切除が難しかった「すい臓がん」や「悪性中皮腫」「卵巣がん」、また転移にも有効だということが分かった。
 「この治療法は、2012年にオバマ大統領が一般教書演説で『米政府の研究費によって、がん細胞だけを殺す新しい治療法が実現しそうだ』と紹介し、注目を集めていました。中心にいるのは米国立ガン研究所、同国立衛生研究所の主任研究員を務める小林久隆氏らの研究グループです」(サイエンスジャーナリスト)

 現在行われている「外科手術」「放射線療法」「化学療法」が、副作用を伴ったり、がん細胞を殺すために正常な組織も破壊してしまうのに対し、がん細胞だけをピンポイントで壊すので体に負担がないという。
 「近赤外線はテレビのリモコンに使われている無害の光ですが、家に転がっているリモコンで治るわけではありません。同治療法に『疫療』と名付けられているように、免疫が活躍してがん細胞をやっつけるのです」(同)

 人の体に不必要な物が入ると、免疫が働いてやっつける。しかし、がん細胞の場合、特殊なカベのような細胞を使って免疫の攻撃から逃げてしまう。
 「そのカベを壊すのが、抗体となるタンパク質と、その抗体とセットになってつながる『IR700』という体内色素。これに波長700ナノメートル(ナノは1メートルの10億分の1)の近赤外線を浴びせると、光エネルギーを吸収し、化学変化が起きて発熱します。とてつもなく小さな波なので、熱に弱いがん細胞以外には、影響が出ることはないのです」(同)

 気になる治療費だが、保険適用がなくても数万円から数十万円とのこと。高額ガン治療薬などに比べれば、庶民にも手が届きそうだ。