前回、女子ひとり旅でも気後れせずに夜ごはんが食べられるパリのいちおしカウンター店をご紹介しました。「それでもやっぱり“カウンターでひとりごはん”はちょっとハードルが高いなあ」という方のために、今回はさらに敷居が低くて気さくなお店を紹介していきます。

10ユーロ以下の小皿料理が並ぶ居酒屋

サンジェルマン・デプレ界隈でも賑わう商店街ビュッシー通りから少し入ったところ、セーヌ通りに、いつもたくさんのお客で賑わうカウンターバーで人目をひく「フレディーズ」があります。

12時から深夜までノンストップオープン、しかも年中無休というアクセスのしやすさに加えて、小さなプレート料理が10ユーロ以下ばかりとリーズナブルなのも人気の理由です。

料理を監修しているシェフのエリック・トロションさんは、日本を訪問した時に、居酒屋スタイルの魅力に取り憑かれたのだそう。ざっくばらんに旬の美味しいものをつまめる楽しさ。それをパリ風にアレンジしたいと思い、今の店のスタイルを考え出しました。いるだけでなんだか落ち着く。それはこの店がまさに“居酒屋”だからなんです。

そしてエリックさんが、日本でもう一つ感激したのは、備長炭で焼いた素材の美味しさ。上質な火の通り方、上品な香りのつき方に虜になったそうです。そこでこの店の奥にあるオープンキッチンでは、備長炭のための窯も置き、旬の素材を焼いた料理も作っています。

立派なヒラタケをそのまま焼いたり、脂の乗ったサバをさっと炙ったり。ウズラや仔羊なども香ばしく、素材の味わいにぐっと寄った料理は、15種類ほどグラスで用意するビオワインとの相性がぴったり。クオリティ高いサラミ類、チョリソーのペーストスやハドックのタラマ、オリーブのパテも、ワインのお供にぴったりなおつまみになります。

シェフの遊び心が詰まった世界の料理

2軒目は、スペイン・バスク地方出身のシェフ、イナキ・エズピタルトさんがオーナーの「ル・ドーファン」。このイナキさん、実はとんでもない実力派で、2006年にオープンしたレストラン「シャトーブリアン」はイギリスの雑誌「レストラン・マガジン」が発表する「サンペレグリノ世界50ベスト・レストラン」で上位入りを果たしています。

もともと造園技師を目指していたイナキさんですが、中東を旅して料理に開眼してみずからレストランを経営するまでになったという経歴の持ち主。フランスとスペインにまたがる、海と山に囲まれた自然豊かなバスク地方出身であることも相まって、イナキさんが生み出す料理はとっても独創的で、多くの人の心をつかんできました。

イナキさんは「カウンターは人生の一部」と言います。というのも、彼の故郷・バスク地方はカウンターバーのメッカ。ですから「ル・ドーファン」では、バスク地方のあり方に倣ってトラッドなタパス(前菜)料理を出しています。

バスク地方産のシードル風味のチョリゾ(ソーセージ)や海老のプランシャ(鉄板焼き)、イカスミリゾットなど。そんな料理に混じって、レモンのジュレ添えのアサリ、牛肉のカルパッチョ、ヘーゼルナッツ、オッソ・イラティチーズなどイナキならではの遊びのある料理もメニューにちらほら。

オランダの大物建築家レム・コールハースが手がけた、全面大理石のスタイリッシュな近未来的空間で味わうトラッドとモダンのミックスは、パリらしい粋なのだと感じます。

生きる喜びが満ち満ちている店

パリ2区ナイル通りにあるレストラン「フレンチ」は、なかなか予約の取れない人気店。グレゴリー・マルシャン、通称グレッグが2009年にオープンした時には、人っ子一人いない寂しい通りでした。グレッグさんの店を皮切りに、今は次々に名店が誕生して、友愛と喜び溢れる活気のある通りになっています。私もこのナイル通りにはよく足を運びます。なぜならいつでも生きる悦びが満ち満ちているから。

こうして注目されるようになったナイル通りですが、「フレンチ」の目の前にオープンしたのが、今回紹介する「バー・ア・ヴァン フレンチ」です。グレッグさんは、ロンドンのスターシェフ、ジェイミー・オリヴァーのもとで、3年間も店のシェフを任されていたほどの人物。インターナショナルな香りのする斬新なクリエーションの料理を、この店でも出しています。

私が大好きなのはパスタ類。ブイヨンに浮かばせたチーズ入りのラヴィオリや、煮込み肉を絡ませたパッパルデッレ、ニョッキも最高。また、自家製の田舎パテもおすすめです。

素晴らしすぎる料理の数々を、ワイン好きなら垂涎もののワインリストを熟読しつつ、賞味。予約はなしなので、19時からのオープンを待つ行列ができるのも、今やナイル通りの見慣れた光景になっています。

【店舗情報】
Freddy’s(フレディーズ)
54 rue de Seine 75006 Paris
電話なし
12:00〜00:00 無休

Le Dauphin(ル・ドーファン)
131 av. Parmentier 75011 Paris
01.55.28.78.88
18:00~02:00 日月休
http://www.restaurantledauphin.net

Bar à vin Frenchie(バー・ア・ヴァン フレンチ)
6 rue du Nil 75002 Paris
01.40.39.96.19
19:00~24:00 無休
http://www.frenchie-restaurant.com

写真:Taisuke Yoshida

【イベント情報】
9月14日(そごう横浜店は9月21日から)伊藤文さんがプロデュースするイベントが開催されています。
https://www.sogo-seibu.jp/france2016/