9月15日、中国は「中秋節」の祝日で、今年は15日から17日までが三連休となる。写真は中国のスーパーの月餅コーナー。筆者撮影。

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9月15日、中国は「中秋節」の祝日で、今年は15日から17日までが三連休となる(その代わり18日の日曜日は“振替平日”になる)。

中国は中秋節に月餅を贈りあう習慣があり、9月に入るとスーパー、デパート、ホテルには月餅コーナーが設置され、様々な月餅が並ぶ。最近はスターバックスや欧米のパン屋もコーヒー味やイチゴ味の月餅セットを販売しており、日本人から見ると、「月餅しか贈れないお歳暮」、或いは「義理だけど金がやたらにかかるバレンタインデー」のようなイメージだ。

月餅は贈答品なので、決して安くない。例えば今年のスターバックスの6個入りは価格が300元(1元=約15円)を超える。スーパーで箱に入っていないばら売りを買っても、1個10元はする。小さな食堂で、丼や麺が7、8元で食べられることを考えると、強気もいいところだ。

中身に比べて豪華すぎる包装も、中秋節の月餅の特徴である。包装コストは1億元に達するとの試算もあり、月餅は中国の資源浪費やメンツ文化の象徴的存在でもある。

一方、日本の中秋の名月は、中国ほど存在感がない。観月会が催されたり、スーパーに団子が並んだりするが、何といっても平日なので、気づかないまま終わってしまうことも多い。私自身、特別なことをした経験もなく、世間がどのようにこの日を過ごしているかよくわからない。

数年前、勤務先の中国の大学の講義で、「日本の年中行事」をテーマに、学生にグループ発表をしてもらった。日中両国に存在する行事はとっつきやすいのか、「七夕」「正月」と同様、「中秋の名月」も複数のグループが取り上げた。

発表当日、最初のグループが「日本は中秋の名月の日に、お月見をします。月を見ながら団子を食べます」とスライドを使いながら説明し始めた。ふんふんと聞いていたら、次に「そしてうどんも欠かせません」と続いた。

うどん?は初耳である。どこかの地方限定の風習なのか?疑問に思いつつも聞き流していたら次のグループも「中秋の名月にはうどんを食べます」と言う。

さすがに「ちょっと待って」と止めた。

「私、そんな話初めて聞いたけど」
「インターネットに、中秋の名月専用のうどんがあると書いてありました」
「団子じゃなくて?」
「団子とうどんを食べます」
そう言って学生が私に見せた写真は、月見うどんだった。

「いや、それは卵が月に似ているからその名前が付いただけで、一年中食べられるから」
「でも、インターネットに書いてあります」
「中国のネットに書いてあることと、日本人の私が言っていることのどっちを信じるわけ?」

年中行事の発表ではほかにも、「日本は70歳以上の全員に毎年祝い金をあげる」(敬老の日)「日本の三大弁当は“幼稚園の弁当”“花見の弁当”“運動会の弁当”だ」(体育の日)など、インターネットに書いてあることをそのまま引用したと思われる“怪情報”が続出し、ネットで何でも調べられる便利さと、その危うさを痛感した。

かく言う私も、学生が「中秋の名月にはうどんを食べます」と断言した時に、「そんな地方があるのかもしれないな」と思ってしまい、日本の伝統行事に対する理解の少なさを恥じたのだった。

■筆者プロフィール:浦上早苗
大卒後、地方新聞社に12年半勤務。国費留学生として中国・大連に留学し、少数民族中心の大学で日本語講師に。並行して、中国語、英語のメディア・ニュース翻訳に従事。日本人役としての映画出演やマナー講師の経験も持つ。