xiangtao / PIXTA(ピクスタ)

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「お客さま第一」「顧客ニーズをふまえた販売」「カスタマーオリエンテッド」……お客さまを尊重して、お客さまのニーズに応じた商品やサービスの提供をすることをうたっている企業は多い。

 しかし実態は、それとはかけ離れた、中には真逆の方法でセールスしている会社が後を絶たない。いわゆる押し売りと、変わらないことをしている会社が、多いのだ。「いまどき、押し売り?」と思われた読者もいるに違いない。実は、押し売りと同じことが、依然、行われているのだ。

 新商品発売に合わせて、「新商品が発売になりました」「画期的な商品です」「日本初です」「業界初です」……とパンフレットに書かれていたり、セールスパーソンが紹介したりするケースは多い。新発売からしばらくすると、「シェアNo.1」「売れ筋です」「多くのお客さまにご購入いただいています」……いかに多くの人に売られているかが紹介される。

 営業担当者が個別の顧客に相対して販売する商品やサービスでは、営業担当者が、パンフレットに書かれていることを一生懸命強調する。「新商品です」「多くのお客さまにご加入いただきました」……このように言われて購入したいと思う顧客がどれだけいるだろうか。

◆「新商品」が効く割合は2割

 人にはそれぞれ、モチベーションが上がりやすい領域がある。私はそれをモチベーションエリアと呼んでいる。「目標達成」、「自律裁量」、「地位権限」ということにモチベーションが影響を受けやすい人を「牽引志向」が強い人と名付けている。一方、「他者協力」、「安定保障」、「公私調和」にやる気が左右されやすい人を「調和志向」と称している。良し悪しではなく、モチベーションに影響を与えやすい要素に過ぎない。

 私が展開している分解スキル・反復演習に参加したビ営業担当者の事例をふまえると、あくまで経験的な観察結果だが、このモチベーションエリアは、顧客の購買モチベーションにも共通した傾向がみられる。

 すなわち、「目標達成」志向の強い人は、新商品など先進的な商品を購入することを好む。「自律裁量」志向の強い人は、自分の判断で購入するかどうか決めたいと思う。「地位権限」志向の強い人は、ブランドに影響を受けがちになる。「他者協力」志向の強い人は、販売シェアを気にする。「安定保障」志向の強い人は、ローリスク・ローリターンの商品を好む。「公私調和」志向の強い人は、バランスのとれた標準的な商品を購入しがちだ。

◆購買モチベーションに合わない話法は押し売りに過ぎない

 にもかかわらず、「新商品」であることや「売れ筋」であることを強調するパンフレットやセールストークが実に多い。年間1,500名にのぼる分解スキル・反復演習の参加者のうち、「目標達成」志向が強く新商品を好む人の割合は19%に過ぎない。「他者協力」志向が強く販売シェアを気にする人の割合は21%だ。新商品を打ち出しても、シェアを強調しても、大多数の80%の人には届かないのだ。

 もちろん、会社が一律でつくるパンフレットは、20%の顧客の興味を引けば良いという割り切りで、作成させていると思えば、それもよしということかもしれない。しかし、個々の営業担当者が、会社が作成したパンフレットどおり、連呼していたのでは、策がないとしか言いようがない。「自律裁量」志向で自分自身が決定したいと思っている顧客に、いくら新商品だと強調し続けても、「公私調和」志向で標準的な商品を望んでいる顧客に、画期的な商品だと連呼しても、押し売りと思われるのが関の山なのだ。

 会社のパンフレットや、共通の販売話法が、新商品や販売シェアにフォーカスしていようが、営業担当者が個々の顧客に相対することができる場合には、顧客のさまざまな購買モチベーションに応じたセールストークを展開すればよいことになる。