■注目の「癒し系」ゴルファー(2)辻梨恵

 最近、女子ゴルフ界で密かに注目を集めている"癒し系"美女ゴルファー。これぞ「和風美人」といったルックスの辻梨恵も、そのひとりだ。

 1994年1月28日生まれ、神奈川県出身の22歳。169cmという恵まれた体躯で、ツアー上位の飛距離を秘める。今季は、昨年のファイナルQT(※)で33位という成績を残してツアーにフル参戦。春先のサイバーエージェントレディスでは4位タイとなるなど、コンスタントに結果を残している。
※クォリファイングトーナメント。ファースト、セカンド、サード、ファイナルという順に行なわれる、ツアーの出場資格を得るためのトーナメント。ファイナルQTで40位前後の成績を収めれば、翌年ツアーの大半は出場できる。

 辻がゴルフを始めたのは、中学1年生のとき。ちょうど今年で10年目になるという。きっかけは、よくある「父親に勧められた」からだった。

「小学校5年生からの2年間、部活でバレーボールをやっていて、中学校に入学しても続けるかどうか迷っていたんです。実は私、スポーツは苦手で、バレーボールを続けるのは『ちょっとなぁ......』って思っていました。そんなとき、私の走る姿を見て(運動神経のなさを感じたのか)、父がゴルフを勧めてくれたんです(笑)」

 ゴルフを始めた中学校1年生の1年間は、スクールに入って週2回のレッスンを受けていたが、正直、嫌々やっていたという。それが2年生のとき、現在のコーチでもある三觜喜一(みつはし・よしかず)プロに出会って、3年生になると「70台」をマーク。大会でも好成績を収めるようになって、真剣にゴルフに取り組み始めた。

 そして、関東中学校ゴルフ選手権で個人優勝。高校は、ゴルフの強豪・埼玉栄高校に進学した。高校時代も、同期に渡邉彩香(22歳)、ひと学年下に江澤亜弥(22歳)らがいて、各大会でともに活躍。高校3年のときには、全国高校選手権で団体優勝を飾っている。

 高校卒業後、2012年にプロテストを受けるが、最終日に「78」を叩いて不合格。それでも、QTで出場権を得て、2013年からツアーに参戦。プロテストも昨年、2度目の挑戦で合格した。

「癒し系」と言われることについて、本人はどう思っているのだろうか。

「雑誌のタイトルとかでも"癒し系"とされることがよくありますけど、"癒し系"自体が何なのか、自分ではよくわからないんですよね。それでも、プロアマなどで一緒にラウンドすることが多いオジサマ方には、どちらかというとウケはいいのかな、と思います(笑)」

 実際、自らの性格についてはどう分析しているのか。

「まあ、おっとりしているかな、とは思いますけど。でもその反面、負けず嫌いでもありますね。自分に対して、ですけど。子どもの頃は、いとこが男の子ばかりだったので、いつも男の子と外で遊んでいました。その中でも、結構いたずら好きな子でしたね。実家がお寺なんですが、御堂の裏でよく遊んでいて、一度自分の部屋から本堂の屋根に昇ったときはすごく怒られました(笑)」

 本人が語るとおり、辻の実家は神奈川県の南足柄市にある、およそ600年の歴史を持つ長福寺という由緒正しい禅寺である。彼女が「癒し系」と呼ばれる背景には、お寺で育った幼少時代が大きく影響しているのは間違いない。

「確かに、小学生の頃から『落ち着いている』って言われていました。それはたぶん、幼稚園のときからお茶をやっていたことも関係しているのかな、と思いますね。『宗偏流』という流派で、私も一応免許は持っています。今は全然やっていないんですけど、昨年久しぶりに、着物を着て、髪をアップにしてお茶会に出たんですね。そのときは、やっぱり落ち着きましたね」

 実家の長福寺で月に1回開催される座禅会にも、中学生になってからは参加するようになり、座禅を組んで精神統一の修行を行なってきたという。

「お茶も、座禅も、静けさの中でやるので、精神統一もできて、気持ちもリラックスできます。その感覚は、ゴルフの朝イチのティーショットにちょっと通じるものがありますね」

 禅のノウハウを生かして、メンタル面のコントロールもしているという。ラウンド中は、鼻からゆっくり息を吸いながらお腹を膨らませ、その後、お腹をへこませながら口から息を吐く"腹式呼吸"をしたり、夜寝る前には天井の1点を見つめて、気持ちを落ち着かせたりしているそうだ。

 将来の夢や目標を尋ねると、こんな答えが返ってきた。

「勇気を与えられるようなプロになりたいな、と思います。お父さんとかに連れてこられた小さい子どもたちが、自分のプレーを見て、『わぁ、カッコいいな』って思ってくれたり、『私もゴルフしてみたい』って思ってくれたりしたら、すごくうれしいですから。

 そのためにも、強いプレーヤーになりたいです。"強い選手"と"うまい選手"というのは、またちょっと違うと思うんですよね。強い選手は、"ここ"というところでしっかりと決められる。そんな選手になりたいです。

 目標とする選手は、上田桃子さんです。おそらく、私とは真逆のタイプだと思うんですよ。(上田さんは)ゴルフに対してすごく真面目だし、ものすごく考えているし。そういうところを尊敬していますし、憧れますね。海外で戦っていた経験もあって、私にとっては大きな存在です」

 辻の得意クラブはドライバー。大柄な身体を生かした飛距離は、平均250ヤードに及ぶロングヒッターだ。それこそ、ゴルファー・辻の魅力である。

 いま期待されるのは、その飛距離を生かしての、プロ初勝利。本人の近い目標もそこにある。

「まずは1勝が目標です。たぶん1勝したら、次はメジャーで勝ちたいとか、その次は賞金女王になりたいとか、さらにその次は海外でプレーしたいとか、視野が広がっていくと思うんです。そういう意味でも、早く1勝したいです」

 最後に、ファンの方々には何と呼んでもらいたいか聞くと、温和な笑顔を見せてこう答えた。

「辻ちゃん、で」

 現在の賞金ランキングは49位。初の賞金シード獲得なるか、注目である。

古屋雅章●文 text by Furuya Masaaki