ソニー・デジタル エンタテインメント・サービスの「VR GALLERY」

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ソニー・デジタルエンタテインメント(東京都中央区)は2016年8月25日、JR中央線高架下にある「阿佐ヶ谷アニメストリート」(東京都杉並区)に「VR GALLERY」を開設した。世界初のVR専門アート・ギャラリーで、パリのGoogle Instituteが開発したVRペインティングソフト「Tilt Brush」(ティルト・ブラッシュ)を使った作品を公開している(要予約・無料)。

日々進化を続ける情報テクノロジーにあって、VR(Virtual Reality:仮想現実)は最も熱い技術だ。ゲームをはじめ、医療やスポーツ、ショッピングといった分野での応用が期待されている。VRの普及が確実視されるなか、同社がこのギャラリーを設立した狙いとは。社長室兼コンテンツ部の福永真里部長に話を聞いた。

2、3か月でギャラリーを立ち上げる

――こちらのギャラリーが立ち上がった経緯を教えてください。

「弊社はソニー・ピクチャーズ エンタテインメントのデジタルネットワークス部門から2007年に独立したソーシャルマーケティングの会社です。今から3か月前に弊社代表がグーグルのTilt Brush開発担当者と会う機会がありまして、そこで感銘を受けてこの事業を始めました」

――着想からまだ2、3か月しか経っていないのですか!?

「この場所を借りたのは8月第1週です。(コンテンツの)制作を進めつつ、ギャラリーの内装を仕上げていきました」

――googleの担当者は何と言っていましたか。

「『パリにTilt Brushの練習スタジオがある。そこにクリエイターを派遣して、練習してもらったらどうか?』と親切な提案がありました。しかし私たちは『日本で同様の環境を自分たちで作ろう』と決心し、このラボ兼ギャラリーを作りました」

――いまは何人でこのプロジェクトを運営しているのですか。

「チームとしては6人くらいのプロジェクトです。社内で『館長』のあだ名がついている原寅彦がメインで動いています」

――こちらのギャラリーが予約制をとっている理由を教えてください。

「立ち上げがあまりにも突貫だったので、オペレーションが後付けになってしまいました(笑)。ヘッドセットをつけて、一人ひとり体験していただく形になるので、たくさんのお客様を同時に対応できません。そのため、完全予約制という形を取らせていただいております」

――現在こちらで視聴できる作品はどんな内容ですか。

「2作品を公開しています。1つは土屋秋恆(つちやしゅうこう)さんの『幻夢霞楓図』(げんむかふうず)。立体的な水墨画の美しい庭を現出しています。もう1つはLy(りぃ)さんの『SHITLAND』。光り輝くテーマパークのようなにぎやかな空間となっています」

――2人のクリエイターはVRに詳しかったのですか。

「このプロジェクトが初体験でした。このスペースを借りた翌日から現場入りしてもらいました。最初は遊びで触る時間をつくり、それから本気の3、4日間を設けて、一気に仕上げていただきました。土屋さんは少しずつ作り上げるタイプ。一方のLyさんは一度作成したものを白紙に戻し、3時間でこの作品を完成させました。2人ともゲーム感覚のように楽しんで作っておられましたね」

――近く予定しているサービスは何かありますか。

「いろんな企業のイベントにこの設備を活用してもらうことを考えています。VRチャンネルの立ち上げを来月には行い、VR映像の収録や編集設備も完備します。また、本ギャラリーの立ち位置は『プラットフォームフリー』×『アーティスト主義』。今後出てくる様々なVRの規格にアーティストの作品を展開していきます」

「VR GALLERYで未来体験をしてほしい」

――VR事業を進めていくうえで、どんな課題がありますか。

「集団体験ができないことが課題です。Tilt Brushは、センサー1セットにつきヘッドセット1台しか対応できない仕様になっています。体験時間が1人当たりおよそ3分かかるので、人の集まるパーティーでこれを使うと行列になってしまうのです」
「ものすごく大きいポリゴンデータを使います。回線は太くないといけないし、ハイスペックのヘッドセットでないと現段階では使い物にならない」

――最後に。この記事の読者にメッセージをお願いします。

「電話が『耳』と『口』を拡張し、テレビが『目』と『耳』を拡張したように、VRは『体験』を拡張してくれるテクノロジーです。弊社のギャラリーで、アーティストが描く不思議な世界を追体験してください」

――ありがとうございます。

VRコンテンツの中では没入感が段違いに高い

一般にVRと呼ばれるコンテンツは、「実写」型と「CG」型の2種類に大きく分かれる。

実写型は超広角カメラで360度全方位撮影を行い、それを合成して1枚の全天球映像に仕上げる。一方の「CG」型はその名の通りコンピュータ・グラフィックで作られたコンテンツだ。ゲームがその典型で、実際に存在しない世界を描写できる。VR GALLERYで見られるコンテンツはCG型に属する。

記者は「幻夢霞楓図」と「SHITLAND」を視聴した。異次元に自分がワープしたような感覚で、描かれた物体は本当に存在しているかのよう。それを手で触って確かめようとすると、するりと通り抜けていく。肉体を持たない存在になったみたいだ。これまでいくつものVRコンテンツを視聴してきたが、没入感は段違いに高い。