町に着いたら、本屋をめざそう。Vol.009 BOOK TRUCK/三田商店(神奈川県横浜市)

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【毎週水曜 16:00 更新】
知らない町に迷い込むのと、本屋さんで心を遊ばせるのは、どこか似ている気がする。
そして、旅先で出会った本の一節はなぜか、いつも以上に心に残ったりもする――。
全国の町の味わい深い本屋さんが、旅のお供におすすめの1冊を教えてくれる、リレー連載。
移動書店『ペンギン文庫』の山田絹代さんがご紹介くださったのは、神奈川県横浜市のこちらです。





もと理容店だったという店舗。わずか8坪のお店の中に色々なジャンルの本が並ぶ



週末は主に「BOOK TRUCK」に乗り込んでさまざまなイベントへ



◆"わざわざ訪ねていきたくなる品揃え”をめざしています

横浜市にある小さな本屋さん『三田商店』の店主・三田修平さんは、移動書店『BOOK TRUCK』のオーナーでもある。
「BOOK TRUCKは出店先に合わせて本のセレクトを変えているので、本をストックする場所がほしくて固定店舗を始めました。でも、BOOK TRUCKでは興味を持ってもらえた本をそのままこっちに並べると、埋もれてしまうことも多くて…。だから三田商店では、古い本や雑誌、リトルプレスのような一般的な本屋さんでは手に入りにくい本を並べて、“わざわざ訪ねていきたくなる品揃え”をめざしています」

本屋は人と本を結びつける場所。何の気なしに入ったBOOK TRUCKで偶然手に取った本に惹かれて買う人もあれば、ずっと探していた本がそこにあると知って、1時間半かけてやってくる人もいる。移動型と固定型、ふたつのお店を運営しているからこそ知ることができたお客さんのニーズだ。







◆暮らす人の息づかいを感じる
慣れ親しんだ横浜のはずれへ

三田商店があるのは、横浜駅から相鉄線に乗り換えて二駅の西横浜。
「僕がこの辺りの生まれなんです。みなとみらいから歩いても30分かからないくらいなんですが、全然雰囲気が違うでしょう? うちのお隣はスナックなんですが、夜になるとカラオケが聞こえてくるんですよ(笑)」と三田さん。確かにイマドキのお店やカフェはないけれど、不思議と落ち着くのはここで暮らす人々の息づかいが感じられるからかもしれない。

三田さんがおすすめする「ヨコハマB級譚―『ハマ野毛』アンソロジー」は、そんな野毛を中心としたディープなヨコハマについてのエッセイを集めた一冊。
「ほとんどの人が横浜の一部しか知らないと思うんです。ちなみに、西横浜はほどよく寂れていて、家賃も安いから本当におすすめです。おいしいコーヒーが飲めるカフェができたらいいな(笑)」

お気に入りの一節
「地付きにならずに、あくまでもパスパルトゥーのように常にいたるところで通過するだけの人間として処世する。そういう生き方を大目に見てくれる気風が伝統的にそなわっている都市ならば、私も一度はもぐり込んでうろついてみたいと思わないでもないのである。」
―――『パスパルトゥー横浜潜入記』種村季弘 より 



レトロな喫茶店「ビュー」。カレーやナポリタンも人気





1946年より続いていた銭湯「太平館」は残念ながら2016/8/22をもって廃業した

◆移動書店、固定店舗、Web…いろんな観点から
本当に求めている人に本を届けることができたら

現在、BOOK TRUCKと三田商店の2店舗の運営に加えて、アパレルショップの本のセレクトや、雑誌で本にまつわる連載をしたりと大忙しの三田さん。
「実はやりたいことはまだまだたくさんあって。これがあったら楽しいだろうな、と思ったらすぐにやりたくなるんです。BOOK TRUCKを始めたのも、子供の頃、家の近所に来ていた移動図書館が楽しかった、という思い出がきっかけなんです」

三田商店をさらに“わざわざ行きたくなるお店”にするべく作り込んでいきたいという一方で、BOOK TRUCKとしての活動も夢が広がる。
「色んな大学の構内で出店してみたいんです。僕は大学生のとき、普通の本屋で売られている本しか知らなかった。僕自身、大学生のときにリトルプレスや、珍しい本と出会っていたら、違う人生の選択肢があったかもしれないなぁと思うことも」

一冊の本をきっかけに人生が変わることもある。いつか、誰かの人生を変える本を届けることができたら――そう考えると、三田さんの夢もふくらむばかりだ。



BOOK TRUCK
出店情報は公式Facebookから

三田商店
神奈川県横浜市西区久保町19-2 小林ビル102
12:00〜19:00
月曜休

「ヨコハマB級譚―『ハマ野毛』アンソロジー」
編集:平岡正明

WRITING/MINORI KASAI