「低糖質ダイエット」 成功する人、しない人

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執筆:山本 ともよ(管理栄養士)

近年、低糖質ダイエット が流行しています。

近頃は低糖質ダイエットをしている若い女性が買いやすいよう、低糖質のパンや鶏肉などボリュームのある具材が入ったサラダなど、コンビニで低糖質な商品が揃えられています。


その一方で、低糖質ダイエットが続けやすいか、となると話は別です。その実際を見ていきましょう。

 

低糖質ダイエット 仕組み


そもそも糖質を控えるとなぜ痩せるのでしょうか?

その秘密はインスリンというホルモンにあります。同じカロリーでも太りやすい食事と太りにくい食事があります。それを左右しているのが、食後の血糖値の変化。


食事でとった糖質が、血液中に吸収されて血糖値が上がると、すい臓からインスリンが分泌されます。このインスリンは、糖をエネルギー源として肝臓や筋肉へ蓄えますが、糖が余ると脂肪として脂肪細胞へと運んでしまいます。


そのため、糖質が多い食事はインスリンがたくさん分泌され、脂肪細胞に脂肪が溜まりやすくなるのです。ダイエットというとカロリーに注目されがちですが、全体の量ではなく、糖質の量を減らして、脂肪を蓄えにくくする方法です。


主食さえ気にすれば、他はある程度自由に食べて良い、という手軽さから、実践しやすい方法でもあるでしょう。ただ、「糖質を○○gにする」という明確な指標はありません。提示している理論もありますが、それも根拠が乏しいのが現実なのです。


なんとなく減らすという方が多く「減らしすぎや、減らせていない」という結果を招きやすくなっています。参考までに、エネルギー源として必要な糖質は、個人差がありますが、1日100g程度と言われています。これは、おにぎり3個分、ご飯茶碗で2杯分に相当します。

落とし穴が多い、低糖質ダイエット

低糖質ダイエットは「続かないダイエット」として語られることが多いです。
そこには大きく2つの理由があると考えます。


ひとつは、糖質量を加減することが難しいこと。摂るか摂らないか、ならば簡単ですが、そうもいきません。糖質はもっとも重要といわれるエネルギー源です。
減らしすぎると身体が糖質を欲し、無性に甘いものが食べたくなったり、少量でも、貴重な糖質は吸収がよくなってしまいます。


ふたつ目は、糖質以外の食品を摂りすぎること。「糖質を制限すれば何を食べてもいい」などを謳い文句にして薦められることもあるようですが、糖質を控えておかずを増やすと、必然的に脂質の割合が多くなります。食べ過ぎれば痩せませんし、体重は落ちても、糖質を摂らないことによって食物繊維やビタミン、ミネラルが減り、コレステロール値が上がって生活習慣病の仲間入りをしかねません。


食べていないつもりで摂っている、それが「頑張っているのに結果が出ない」につながり、続かなくなるケースとして、よく見受けられます。

続けるために抑えたいポイント

では、続けながら成功へと導くコツはあるのでしょうか。見ていきましょう。

1.糖質を「抜く」のではなく「減らす」


長く続けるためには、糖質を抜くのではなく、普段食べている量よりも少し減らすのがおすすめ。続けている人は、この加減が上手なのでしょう。身体が糖質を欲するモードにならないように、1日で一番必要とされる朝はきちんと摂り、遅い時間は脂肪に変わりやすいため、「夜に向かっていくほどに減らす」のが効果的です。

2.糖質の質にも気を配る


血糖値の変化には、糖質の質も影響します。精製度の低いものは血糖値の上昇が緩やかになり、インスリンの分泌量も少なくなります。白米を玄米に変えたり、白パンをライ麦パンにしましょう。自然と噛む回数も増えるので、満足感もアップ! 食物繊維によって便通が促されるので、ダイエット中に起こりがちな便秘解消にも役立ちます。

3.意外な糖質に気を付ける


芋類や春雨、片栗粉、飲み物やヨーグルトの砂糖など、主食以外にも糖質が多い食品があります。

4.お酒は焼酎やウイスキーを


醸造酒は糖質がたっぷり。蒸留酒を選びましょう。

5.食べ順に気をつけて、糖質の吸収をゆるやかに


食べる順番に気をつけるのもポイント。まずは野菜や海草・きのこ類を食べ、次に肉や魚などのたんぱく質、それと一緒に主食を良く噛んで食べる。食物繊維を先に摂ることで糖質の吸収がゆるやかになります。

どんな効果的な方法でも、無理をしては続きません。自分の身体にきちんと目を向けて、自分に合った加減で進めましょう。低糖質ダイエットはこれらのコツを守れるかどうか、そこが成功するかどうかの分かれ目です。ただし、糖尿病や腎臓病の治療など、食事制限のある方は、必ず主治医に相談のもとで行ってくださいね。

<執筆者プロフィール>
山本 ともよ(やまもと・ともよ)
管理栄養士・サプリメントアドバイザー・食生活アドバイザー
株式会社 とらうべ 社員。企業で働く人の食と健康指導。糖尿病など疾病をもった人の食生活指導など活動中