【マツダ アクセラ試乗】手頃な1.5ディーゼル登場!知恵と工夫で走りがスムーズに

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マツダ「アクセラ」のディーゼルモデルに興味はあるけれど、300万円前後というプライスタグに、「もう少し手頃なグレードがあったらなぁ…」と思っていたアナタに朗報です!

アクセラシリーズの大幅改良を機に、5ドアハッチの「アクセラ スポーツ」に、1.5リッターのディーゼルターボ(105馬力/27.5kg-m)が加わりました!

新たにラインナップされた1.5リッターディーゼルは、230万3640円〜。2.2リッターのディーゼルターボ(175馬力/42.8kg-m)は278万1000円〜ですから、ワンステップ身近になった印象です。

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■“ナチュラル・サウンド・周波数コントロール”に研究者の執念を感じた

「せっかくだから2.2リッターディーゼルがいい」と考える方にも、グッドニュース! ディーゼルエンジンのガラガラ音を低減させる“ナチュラル・サウンド・スムーザー”が、従来から設定されていた1.5リッターディーゼルはもちろん、新たに2.2リッターディーゼルにも採用されました。

マツダ アクセラ

念のため復習しておきますと、ナチュラル・サウンド・スムーザーとは、ピストンのヘッドに組み込まれる棒状のパーツ、のこと。ピストンの上下動に合わせて左右がしなり、ディーゼルエンジンが発生するノイズ(=ノック音)と逆位相の周波数を発生させます。両波をブツけることでノイズの山谷をならす、つまりノイズキャンセルの効果を狙ったデバイスです。

しかも! 今回の大幅改良に合わせて、2種類のディーゼルターボには、さらにノイズを低減する工夫が施されたのです。大きなノック音はナチュラル・サウンド・スムーザーで抑え込み、さらに小さなノイズは、ガラガラ音発生の元となる“構造系共振”に、燃料を燃やす際に発生する“エンジン加振力”をブツけることで退治するのです。

普通なら、構造系共振とエンジン加振力は微妙に合わさって、ノイズを増幅させてしまいます。それを、燃焼噴射のタイミングを0.1ミリ秒単位で制御することで、具体的には、メイン燃焼に先立つプレ燃焼の時期をわずかにズラすことで、両者の波形をノイズを打ち消す方向に働かせるのです。名づけて“ナチュラル・サウンド・周波数コントロール”。

…と記述すると、いかにもスマートに解決したようですが、そこに至るまでには、泥くさいトライアルが何度も繰り返されたようです。例えば、1分間に何千回も上下するピストンに振動センサーを3箇所も取り付け、(切断されないよう)丈夫なチタン製のコードをシリンダーの外に伸ばしてデータを回収。ピストンの伸び縮みを“見える化”して解析を進め、ノイズの発生原理を探った、といいます。ピストンアームの溝の中に接着剤で埋まったセンサーを目にすると、研究者の“執念”といったものを感じます。

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ちなみに、自身がしなることで有用な周波数を発生するナチュラル・サウンド・スムーザーは、なんと! ピストンに組み込まれる前に“全量”をチェックするのだとか。原理上、正しい周波数が生起しないと意味がありませんからね。万が一、左右の質量が規定どおりなっていない場合は、スムーザーの端を削ることで調整するといいます。

(失礼ながら)大衆車メーカーの大量生産モデルに使うエンジンパーツに「そんな手間ひまかけて大丈夫か!?」と、部外者ながら心配になります。まぁ、かつてはロータリーエンジンに使う“エキセントリックシャフトを”手作業で仕上げていたマツダのことです。この手の工程に関する、ある種の“ノウハウ”と“覚悟”があるのでしょう。

SKYACTIV-Dユニットのスムーズさに感心するとともに、1本、1本、ナチュラル・サウンド・スムーザーを検品しているスタッフの方々に、感謝したいと思います。

■アイデアと工夫でクルマを進化させたマツダに拍手!

さて、マツダ発の注目技術がもうひとつ、ディーゼル、ガソリンを問わず、アクセラ全車に採用されました。“G-ベクタリング・コントロール”がそれ。“SKYACTIV”と総称されるエンジン、トランスミッション、ボディ、そしてシャーシで個別に進化した技術を統合的に用いることで、“人馬一体”をさらに推し進めようという“SKYACTIV-VEHICLE DYNAMICS”の第1弾です!

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…という割には、かなり地味な技術ですが、「エンジン技術でシャーシ性能をアップさせる」というアプローチが面白い! ドライバーがステアリングを切った瞬間から切り終えるまでの間、ごくわずかにエンジンのトルクを絞ってやることで、結果的にフロントタイヤに掛かる過重を増やし、前輪のグリップを増加させ、車両の応答性を高めるのです。

「なぁ〜んだ、それだけのこと」と思った人、いるんじゃありませんか? カーブの手前でアクセルをゆるめて過重を前に移したり、スポーツ走行時には、コーナリング前にかけたブレーキを旋回初期まで残し、フロントタイヤを路面に“押しつけて”グリップを引き出したり…そうした作業を当たり前のようにやっているベテランドライバー、はたまたウデ自慢の人も多いことでしょう。「そんなこと、自分でやっているよ」と。かくいうワタシも、そのひとりでした。

マツダ アクセラ

違うんですね。いや、作動原理はそのとおりなのですが、G-ベクタリング・コントロールの効果はもっと“薄く”“広く”現れるのです。“曲がりやすくする”というより、むしろ“直進しやすくする”といった方がいいかもしれません。

世のドライバーは、直進中でも全く無意識のうちに、ステアリングの修正をしています。路面のわずかな凹凸や横風といった外乱に反応し、微かにステアリングホイールを動かしています。自分が運転していると分かりにくいので、助手席に座った際、こっそり(!?)ドライバーの手元を見てみてください。本人も気づかないうちに、細かく左右に動かしているはずです。

G-ベクタリング・コントロールは、コンマ何秒の世界で運転者のごくわずかな操作を拾い、同じくコンマ何秒の世界でエンジン出力をごくごく繊細に制御する。修正作業にかかる時間を限りなくゼロに近づける。逆説的ですが“曲がりやすくする”ことで“まっすぐ走らせる”わけです。ドライバーが、意識しないで微少な修正舵を当てようとしたその瞬間、G-ベクタリング・コントロールが作動し、本人も気づかないうちに修正が終わっているのです。

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走行時の安定性を向上させるG-ベクタリング・コントロール。その延長として、車線変更やコーナリング、極端な例では、障害物を避ける緊急回避の動きを、より安定的に行うことが可能となります。

このように、G-ベクタリング・コントロールの効果は、その搭載車に乗って、「コレはすごい!」と膝をたたく類のものではありません。人一倍感覚が鈍く、分析力に劣るワタシの場合、走行中に同機能をオン/オフできる試乗車に乗せていただいて、初めてその効果を理解できました。

G-ベクタリング・コントロール搭載車に乗っていると、ドライバーは漠然と「いつもより疲れないな」と感じ、同乗車は「なんだか安心」と思う。そんな穏やかで、けれども、とてもありがたい機能なのです。

それにしても、無意識のうちに瞬時に外乱に反応する人間の能力。そして、それを瞬時に打ち消すエンジン技術は素晴らしいですね!

ナチュラル・サウンド・周波数コントロール、G-ベクタリング・コントロールともに、精緻な燃料噴射技術を確立して、初めて実用化できた機能です。興味深いのが、今回の新技術が、どちらも“新しいハードウェア”ではなく、既存のハードウェアの新しい活用法、いわばソフトウェアに依って成立している点です。

ちょっと皮肉ると「開発コストが限られる中規模メーカーの悲哀」ととらえることもできますが、むしろ、アイデアと工夫次第で、まだまだクルマは良くすることができる。そんな希望を抱かせる、マツダのニューテクノロジーです。アクセラシリーズの完成度が、また一段、上がりました!

マツダ アクセラ

<SPECIFICATIONS>
☆スポーツ 15XD Lパッケージ
ボディサイズ:L4470×W1795×H1470mm
車重:1360kg
駆動方式:FF
エンジン:1498cc 直列4気筒 DOHC ディーゼルターボ
トランスミッション:6AT
最高出力:105馬力/4000回転
最大トルク:27.5kg-m/1600〜2500回転
価格:268万9200円

(文&写真/ダン・アオキ)

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