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 現在ではまじめに取り合う人も減っているが、東日本大震災の翌年や翌々年あたりまでは、理屈もへったくれもない感情的な反核反原発運動が過激化し、珍妙なアートや被災地への差別と偏見を垂れ流すパフォーマンスで多くの人から失笑を買っていた。もちろん、真面目に放射能汚染の拡大を懸念する理性的な反核反原発活動家も存在していたが、マスコミの注目を集め、ネットで目立っていたのは大騒ぎするパフォーマーたちである。

 そういった自己満足パフォーマンスの中でも、高齢活動家を中心に繰り返し歌われ、動画共有サイトなどへもアップされたのが、作曲家郷伍郎の代表曲「フランシーヌの場合」をもじった替え歌だった。もとになった曲も1969年の発売直後から反体制ソングとして当時の学生らから好まれており、それから半世紀にわたってある種の反体制歌として歌い継がれてきたとされている。

 その理由は歌詞にうたわれ、曲のタイトルともなったフランシーヌにある。

 郷伍郎氏はフランシーヌという女性がベトナム戦争やナイジェリア内戦に心を痛め、パリで抗議の焼身自殺を決行したという小さな記事に触発され、そのことを歌謡曲として表現したというのだ。そして、当時の若者達はフランシーヌの行動から様々なものを感じ、あるいは詩に自らの姿を重ねて感傷に浸ったという。

 ところが、替え歌などをきっかけに元曲である「フランシーヌの場合」や、さらにはフランシーヌ本人にも注目が集まると、ネットを中心にとある疑惑が持ち上がった。抗議の焼身自殺を遂げたとされるフランシーヌに関する情報があまりにも少なく、ネットで確認できるのはネットに当時の紙面画像がアップされている日本語の小さな記事のみなのだ。伝えられるフランシーヌのスペルでの外国語検索も同様で、日本語の記事ばかりが表示される。そのため、ネットでは疑惑が持ち上がった。

 フランシーヌという女性が本当に実在するのか?

 焼身自殺を遂げたことの裏付けはあるのか?

 なぜ、日本語の記事ばかり検索表示されるのか?

 やがて、ネットではフランシーヌという女性に関する情報を求める人々が現れ、そしてフランシーヌの縁者を知っていると称する人も現れた。しかし、その人物は具体的な情報をもたらすことなく、謎はより深まっていったのである。

(続く)

*画像はフランシーヌの場合[EPレコード 7inch]