連続テレビ小説「とと姉ちゃん」(NHK 総合 月〜土 朝8時〜、BSプレミアム 月〜土 あさ7時30分〜)第24週「常子、小さな幸せを大事にする」第140回 9月13日(火)放送より。 
脚本:西田征史 演出:大原拓


大東京新聞の提案で、公開商品試験が開催されることになった。
その前にして、赤羽根(古田新太)はその過去と心情を吐露する。
12年前、小さな町工場からはじまったアカバネ。戦争を生き抜き帰ってきて、焼け野原のなかも生き抜いてここまで会社を大きくした。

「庶民の手の届く夢をあたえることが経済成長を生み、日本を世界に負けない豊かな国にする」
「金持ちになることが幸福なんだ」

高度成長期の権化のように描かれる赤羽根。前にも書いたが、大企業とはいえ、一民間企業の社長に、高度成長期の闇部分を背負わせるのも荷が重いだろう。幸い、古田新太の圧倒的な演技力で、何かもの凄く巨悪に見えちゃうんだけど(よ! 新感線!って感じだった)。
ここは政治家だろうと思うが、「NHKなんで」と、「LIFE!」の三津谷寛治ゼネラル・エグゼクティブ・プレミアムディレクター(内村光良)に言われてしまったのだろうとひと妄想。

さらに妄想を続けると、戦後の高度成長の闇だったら、公害の問題を抱える企業を描くのがおさまりがよいのでは。せっかく最初、静岡を舞台にしていたのだから、製紙工場あたりをモデル、いやモチーフに・・・いやいや、無理無理。それじゃあ土曜ドラマテイストになってしまう。

政治家を書いた「シン・ゴジラ」と政治を書かない「とと姉ちゃん」


「我が社の正しさを証明する」と燃える赤羽根。139回の常子(高畑充希)と同じく己の「正しさ」にこだわる。
時に昭和33年、終戦から13年が経っているが、互いの正しさを主張してぎすぎすといがみ合う登場人物たちを観ていると、まだ戦争は終わっていないと思わせる。
相手をねじ伏せただそうとする戦いになってしまう(常子が「戦い」「戦い」と言っている)。それぞれの正しさを認め合って共生していくことを人間は学ぶ必要があるわけで、そんなシニカルな状況を、政府を描かず、庶民と元庶民の商品試験として描いたことが意識的であるとしたら、秀逸だ。

国家の一大事に対して、庶民をほとんど描かず、政治家と官僚たちの行動を描いた「シン・ゴジラ」とは逆の方法であることは興味深い。
ついでに言うと、仕事のディテールにこだわりながら長くなる会議は「中略」する「シンゴジ」と、ディテールはゆるめで編集作業や試験を淡々と続ける「とと姉」、ここも真逆。

「庶民の手の届く夢をあたえることが経済成長を生み〜〜」と思っているのか、常子と星野のラブストーリーを描いたあとは、今度は「半沢直樹」「下町ロケット」などの池井戸潤ドラマのテイストを盛り込んで、「とと姉ちゃん」は、いつの間にか、庶民のためのドラマとは何か? という大きな命題に向かっていた。これって誇大妄想ですか。

ほとほと姉ちゃん


公開試験に参加したメーカーたち。それぞれ企業努力をしているところをアピールするが、アカバネだけ、
具体的な作業の説明をしない。いくらなんでも悪党に描き過ぎー。しかも小悪党・・・。
(木俣冬)