■ハリルジャパンの完成度(1)
 長谷部誠の判定=不明

 2018年ロシアW杯のアジア最終予選が9月1日にスタートした。来年9月までの長丁場の戦いとなるが、日本は初戦のUAE戦で1−2の逆転負け。ホーム戦だったにもかかわらず、いきなりつまずいた。

 2010年南アフリカW杯、2014年ブラジルW杯の最終予選では、ともに白星発進。その後も大きな波乱はなく、順調に勝ち星を重ねてW杯の出場権を獲得した。だが、今回の予選ではこれまでのような楽観ムードは一切ない。逆に、チームとして高い完成度を見せたUAEを目の当たりにして、予選突破のハードルがかなり高くなっていることを誰もが痛感させられた。

 はたして、日本は6大会連続のW杯出場を手にすることができるのか。現在の代表チームの完成度を探りながら、その可能性を見極めていきたい。

 UAE戦に敗れたあと、キャプテンの長谷部誠はその敗因を「自滅」だと語った。

「攻守ともに修正しなければならない点がありますけど、自分たちで自分たちの首を絞めてしまったかな、と思います。先制して、そこからの試合運びがまだまだ乏しく、勝負強さがない。十分に勝てるチャンスがありながら、取りこぼしてしまった。それは、自分たちの責任が大きいと思います」

 敗戦のエクスキューズを挙げるとすれば、準備期間の差がある。UAEはスペインで1カ月半の合宿をこなして、その後は中国で時差調整をして来日。日本の戦い方や選手の特徴をしっかりインプットして、万全の準備を整えて乗り込んできた。彼らが見せた、不気味なほど落ち着き払ったプレーは、そうした準備によって確固たる自信を得ていたからだろう。翻(ひるがえ)って、日本はわずか数日しか準備期間がなかった。

「その差は、う〜ん......。まあ、選手によってコンディションにばらつきはあったと思います。特に欧州でプレーしている選手は、シーズンが始まったばかりで、試合に出ていない選手もいれば、コンディションが出来上がっていない選手もいた。でも、それを言い訳にしてしまうと、準備期間が短いと勝てない、ということになってしまう。今回負けたのはそういうことではなく、小さな部分でのミスとか、自分たちの甘さが出てしまったからだと思います」

 長谷部の言う「自分たちの甘さ」というのは、このチームのレギュラー選手はこれまで長く一緒にプレーしていて、お互いに理解し合っているので、特にあれこれ言わなくてもやってくれるだろう、という"甘え"だったのではないだろうか。

 その指摘に長谷部は、「それは、どうですかねぇ......」と苦笑いして、答えを濁した。

 チームに甘えが出ると、あちらこちらで"水漏れ"が起こってしまう。UAE戦における長谷部のパスミスや、DF吉田麻也の緩慢な守備、PKをとられた大島僚太の判断ミスなどは、その部類だ。それが重なると、やがて致命的な失点へとつながる。

「すごい危機感があります。その分、(2戦目の)タイ戦は初戦で敗れたあとの試合で、どれだけ戦えるのか、というのが求められています。それは、みんなもひしひしと感じていると思うし、それを(タイ戦では)みんなに求めていきたい」

 長谷部は少し強張(こわば)った表情でそう語った。

 初戦のUAE戦に敗れて、続くタイ戦を迎える前、長谷部はバンコクの日本料理店に選手だけを集めて決起集会を開いた。長谷部は「気分転換のため」と言ったが、まだ1試合しか終わっていない時点での開催は異例である。それほど選手たちは追い込まれ、余裕がなくなっていた、ということなのだろう。

 しかも、長谷部は「この(決起集会の)効果は、タイ戦の結果次第」といって、決起集会での収穫などにはあえて言及しなかった。それがまた、いつもとは様子が違うことを暗に示していた。この時点では、初戦の敗戦から完全に気持ちを切り替えられて、改めてチームがまとまった、という雰囲気は感じられなかった。

 迎えたタイ戦。左サイドMFで起用された原口元気が積極的に仕掛け、豊富な運動量で守備でも貢献した。サイドバックの酒井高徳との連係もよく、左サイドは初戦に比べてかなり活性化された。それが、右サイドにも波及したのか、原口が決めた先制ゴールは、右サイドの酒井宏樹のクロスから生まれた。

 UAE戦では、中央に偏った攻撃、足もとばかりのパスワークで、点が奪えなかった。その反省を生かした、狙いどおりのサイド攻撃だった。

 その後も、決定機は何度も作ったが、決め切れなかった。それでも、後半30分にFW浅野拓磨が待望の追加点をゲット。初戦同様、危ないシーンもあったものの、結果的には2−0と完勝した。

「UAE戦のように、真ん中からの攻撃ばかりになると、相手も的を絞りやすくなるので、(タイ戦では)最初からサイドを使う意識はありました。1点目はそのサイドから取れていますし、サイドからのいい崩しから決定的なチャンスが何回も生まれた。そこで決める、という課題はありますが、多くのチャンスが作れた点は、前回(のUAE戦)から進歩したところだと思います」

「サイドから」という戦い方については、選手たちの意思統一は図れていたようだ。ただそれは、悪かった部分を修正しただけで、チームの完成度が高まったということではない。

 長谷部は、現時点での日本代表の完成度をどう見ているのか。南アフリカW杯やブラジルW杯予選と比較して、どの程度だと思っているのだろうか。

「前回同様、今回の最終予選にも出ているメンバーのうち、タイ戦に出た選手は、僕と(本田)圭佑、(香川)真司に、(吉田)麻也しかいない。他の選手もメンバーに入っていたけど、試合に出ていないメンバーが多かった。最終予選を戦うのが初めて、という選手が多い中で、チームの完成度を過去2大会と比較して語るのは難しい。

 でも、今日(のタイ戦)で言えば、浅野(拓磨)や(原口)元気ら若い選手が点を取ったのは、チームとして非常に大きい。最終予選では、彼らのような若い力が必要ですし、彼らが点を取って、自信をつけたのはよかったです」

 いつもは忌憚(きたん)なく、率直にモノを言う長谷部だが、今回の最終予選2試合においては歯切れが悪かった。それは、予選経験のない若い選手が多く、攻守両面でまだ多くの課題を抱えている現状にあって、チームの完成度もまだ語れるレベルにはない、ということなのだろう。

 次なる戦いは10月。ホームでイラク(10月6日)と、そしてアウェーでオーストラリア(10月11日)と対戦する。

 この9月の2戦よりもチームの完成度を高めて、そのうえで結果も出すことができるのか。最終予選前半戦の大きなヤマ場を迎える。

佐藤 俊●文 text by Sato Shun