平日は都会で働き、週末は田舎で過ごす。東京生まれ、会社勤め、共働き、こども3人。「田舎素人」の一家が始めた「二地域居住」。実際のところ、都会と田舎の往復にはお金がかかる。だが、その往復に毎週、高額な高速道路を使うことは本当に無謀なのだろうか?今注目を集める田舎暮らしの実践記『週末は田舎暮らし』から、一部を抜粋して紹介する。

◆これまでのあらすじ◆
東京生まれ、会社勤め、共働き、こども3人。平日は都会暮らしだが、週末に田舎に移動する「二地域居住」。そんな暮らしに憧れる一家は、物件探しを始める。たくさんの不動産をめぐり、理想に近い物件を見つけた一家。だがその矢先、物件は他の人に買われてしまう。一家はこのショックから立ち直り、もう一度運命の土地にめぐり合えるのだろうか……。

アクアラインを渡る決意

 わたしたちは、しばらく失意でぼんやりしていました。毎週末のように第三京浜や東名高速にのって神奈川方面をアグレッシブに探しまわっていた、あのときの気力はすっかり失せてしまいました。もうこのままフェイドアウトか、と思うほど。

 長いこと付き合ってそろそろヤバい歳だし結婚しよう!と思ったら相手から「ごめん、別れてほしい。実は好きな人がいる」と言われたくらいの落ち込みだったと思います。たぶん。

 あの土地、良かったよねえとため息まじりにぼやき、何度も見て物件のラインナップも覚えてしまった田舎暮らし物件サイトをだらだら眺めて、あーもーあんな土地ないよねえとヤケ酒をあおって寝てしまう日々。情けないものです。

 それでも、人間、時間がたてば傷も癒えるもの。再び懲りずに頑張って探そうという気持ちになり、ひとつ、方向転換に踏み切りました。超高級高速道路「アクアライン」で、千葉方面に渡ることにしたのです。

 今でこそ森田健作知事によってアクアライン通行料はぐっと値下がりしましたが、当時は普通車片道3000円というべらぼうな値段。まるで「よほどのことがない限り利用禁止」と言われているようで、ムダムダNGと、はなから撥ねつけていました。

 そんな意識が変わったのは、ふとしたきっかけで千葉県の田舎暮らしサイトを検索したときでした。これまで見たこともなかった広い土地、菜園付き住宅、格安物件が、ざくざく出てきたのです。それまで検討していた神奈川方面のラインナップとは明らかに違いますし、数の多さや広告の謳い文句などから「田舎暮らしを検討する人は世の中にたくさんいるんだな」と気づかされました。

「いいぞ房総。今までアクアラインで引っかかって見ようとしなかった俺らは愚かだったな。しかもこれだけ土地の価格が違うと、あれだな、アクアラインを使ってでも千葉方面で探した方が得だぞ、たぶん」と、夫がいそいそと鉛筆と紙きれを持ってきました。

〈試算〉
アクアラインの往復は、3000円×2通行=6000円。
毎週末房総に通うとしたら、年間で、365日÷7=約52回。
つまり年間で、6000円×52回=31.2万円かかるってわけ。
で、神奈川で坪単価10万円の土地を500坪買うと、5000万円。
一方で、千葉に坪単価5万円の土地を500坪買うと、2500万円。
差額が、2500万円。
この差額で何年分アクアラインが使えるかというと、
2500万円÷31.2万円=約80年。
自分たちの寿命が90だとしても、あと50年やそこらだから、房総に土地を買えば、一生、毎週末アクアラインを使ってアクセスしてもお釣りがくる。
……よって、房総に土地を買うことは、現実的である。以上。

「5000万円なんて出せないけど、ともかく!アクアライン費を惜しんで宝の山を見に行かないのはナンセンスだ。しかも高速代が高きゃ渋滞しない。さらにどうだ、ETCを付けると、通行料が2320円まで割り引かれるらしいぞ(当時価格)」

 そうと決まれば一気に気分は切り替わります。すぐさまETCを装着し、東京湾上を颯爽と駆け抜けて房総半島へ!

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