ひな壇に座り、記者会見に臨む機会が多いサッカー監督。とりわけ代表監督は試合前と試合後、多くの記者とテレビカメラを向こうに回し10分、15分、質問に答えることが義務付けられている。試合に勝った場合はともかく、負けた場合、特に、勝てるはずの試合を落とした場合は、なかば戦犯。さらし者のような状態になる。こちら側の目線を遮りたい気分だろう。

 日本の記者は優しいので、W杯最終予選の第1戦でUAEに敗れても、辛辣な質問が飛び出すことはなかった。外国と日本の一番の違いになる。イビチャ・オシムはあるとき、「なんで、キミたちは私を批判しないんだ」と、逆に問いかけてきたほどだが、これぞ、日本にやってきた外国人監督が何より抱くカルチャーショックに違いない。

 だが、ハリルホジッチはUAEに敗れると、記者から詰め寄られ、苦境に陥ったわけでもないのに、自分が可哀想になってしまったのだろうか、言い訳と捉えられても仕方のない言葉を次々と発した。

 言い訳には2種類ある。代表監督として口にしても大丈夫な言い訳と、口にすべきでない言い訳と。後者を数多く口にする場合は、退任の時期が近づいている場合が多い。時間の足りなさと、コンディションの悪さについて、とうとうと繰り返し語る場合だ。

 代表監督は、時間との戦いが宿命付けられている。練習をほぼ毎日行える環境にあるクラブ監督に対し、代表監督には試合前の数日のみしかその機会がない。日常的に指導を行えるのがクラブ監督。一方、年平均10回強、パッと選手を集めてパッと試合をしなければならないのが代表監督だ。選手をセレクトする目が、代表監督には何より求められる。同じサッカー監督でも、仕事の中身はずいぶん違う。

 選手を育てる力を求められているのがクラブの監督。一方、彼らが育てた選手を、自分の志向するサッカーに落とし込むのが代表監督の仕事だ。直接指導する時間は、後者にはほとんどない。選手は必ずしも、代表監督の思い描いた通りに成長していくわけではない。つい愚痴りたくなる気持ちは分かる。だが毎度、臆面もなく繰り返されると、こちらの心は離れていく。

 その昔、加茂周氏が、時間のなさをしきりに口にしたことがあった。違和感を感じたこちらは、調べてみることにした。各国代表チームの年間の合宿日数を、だ。すると、日本は何と世界で二番目に多い国だった。

 ハリルホジッチも試合後の記者会見で、時間とコンディションの問題を、幾度となく口にした。「最終的に選手全員が揃ったのは、試合の2日前だった」(UAE戦後)。「Jリーグでプレイしている選手はシーズン半ばということもあり、理想とするフィジカルコンディションには遠かった」(タイ戦後)。

 危なさを覚えずにはいられなかった。例えば、UAE。彼らが日本にやってきたのは、試合2日前の夕刻だった。日本を襲った台風のため、便に遅れが生じたのだという。つまり、日本で練習したのはわずか1日。時差も、UAEと日本の間には5時間ある。欧州と日本の時差は現在7時間なので、差は2時間のみ。日本代表の欧州組も大変だが、UAEの選手たちもかなり大変だったはずだ。

 日本で試合をすれば、10の力を8ぐらいしか発揮できないという中東勢のこれまでの戦いぶりを振り返れば、アジア予選を通して、彼らが時差の不利を潜在的に抱えている事実が浮かび上がる。彼らは日本に来るとき、地球の自転方向に進む。日本が中東に行って試合をする場合より、時差ボケは解消されにくい。西に行く方が時差ボケは起きにくいのだ。日本のグループに中東勢はUAEの他、サウジ、イラクの計3チームがいる。豪州も欧州でプレイしている選手が多いので、同じ問題を抱えている。移動の大変さについて、日本はこの組で、積極的に語れる立場にはないのだ。