Editor’s Eye

2016.09.13


自転車レースの最高峰の素顔に迫る
気鋭の写真家のエキシビションに注目せよ

長尾真志氏は通常は雑誌やWEB、広告などの世界で活躍するフォトグラファーだ。彼のことはアシスタント時代から知ってはいるのだが、どちらかというと遅咲きの部類に入るだろう。彼を見ていると遅咲きという人間として成熟した上で、じっくりと写真に向き合うということのメリットを感ぜずにはいられない。
その長尾氏が第4回目の個展を開くのが “「PEAK」2015 L’Alpe D’Huez” だ。
これまで、離島や東京タワーなどどちらかというと静的な印象の対象にじっくりと迫ることが多かった。が、今回は世界で最も動的な被写体と言えるだろう、ツール・ド・フランスを対象として選んだこと自体、少なからず驚きだった。

しかし彼は、動的なレースの中に潜む、なぜか静的な一瞬を切り取っているのではないかとさえ思える。
彼がこのレースの白眉と考えたのが山岳地帯の一つの頂点とされる”聖地”ラルプデュエズ。ここは第20ステージに当たる難所であり、最も盛り上がりツール・ド・フランスらしいと言われている。高低差1000m以上。頂上まで21のカーブがあり、過酷なまでのステージで、ここの覇者は総合優勝はできないというジンクスがあるほどだ。

長尾氏はここに腰を据え、約半年にわたりレースの全容を練習走行から始まり本戦までを見つめ続けた。
今年も白熱したレースを繰り広げた「ツール・ド・フランス」。
2015年、夏。102回目のツールで最終日前日、第20ステージのゴール設定されたのはロードレースの”聖地”ラルプデュエズ。
あまりにも美しいフランスアルプスの絶景とそこで必死にペダルを踏む選手たち。そして、惜しみのない声援を送る観客たち。
移ろいゆく季節と、駆け抜ける自転車のあまりにも儚い一瞬。

本展では、数々の名勝負・名場面を生んだ、その”聖地”ラルプデュエズの移りゆく季節を追いかけた作品を展示します。
白熱と熱狂と、静謐なアルプスの風景。そのなぜかアンバランスな世界が伝えるのは、この伝統的なレースがなぜ今も世界の人々を魅了して止まないかを静かに伝えてくる。

行かなくとも(行けなくても?)、「ツール・ド・フランス」のなんたるかが少しだけわかったような気がするのだった。

自転車好きもそうでなくとも、見ることで体感できる写真展にぜひ。

(Text: Y.Nag)
(Photo: Masashi Nagao)

長尾真志 第4回写真展「PEAK」2015 L’Alpe D’Huez
開催期間 : 2016年9月14日(水)〜9月19日(月)
開催時間 : 12:00〜20:00(最終日は18:00まで)
開催場所 : Space Jing
     東京都渋谷区神宮前5-45-5 中澤ビルB1F
TEL   : 03-3409-2744
アクセス : 地下鉄「表参道駅」A1、B2出口より徒歩5分





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