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【石原壮一郎の名言に訊け】〜西原理恵子

Q:会社の先輩は政治家の悪口が大好きだ。酒を飲んだときはもちろん仕事中も、何かというと「小池なんてダメだ」とか「安倍のインチキ野郎」とか、話題になっている政治家を悪しざまにけなしている。最近の攻撃対象は、もっぱら蓮舫だ。俺はそういうヤツが大嫌いである。お前が言ってもしょうがないだろうと思うし、そういうヤツに限って仕事はロクにできない。政治家を悪く言うことで、自分が偉くなった気になっている了見がセコすぎる。ビシッとやり込めたいが、いい方法はないだろうか。(岐阜県・29歳・営業)

A:気が合いますね。私も嫌いです。SNSでもいますよね。政治の話題に食いつく俺って偉いだろ! 政治家に堂々と物申す俺ってカッコイイだろ! みたいな感じの人たち。実際は、絶対に言い返してこない相手に対して、遠くからキャンキャン吠えてるだけなのに。あなたの言うように仕事がロクにできなさそうな人が多いし、仮にできる人だったとしても、「この人、なんか危なっかしいな」とか思っちゃいますよね。

 まあ、政治家の悪口や政治の話が好きな人は、力が入らざるを得ない理由があるのでしょう。思うようにプライドが満たされてないとか、自分の現実を怖くて直視できないとか。ただ、身近にいたらそりゃうっとおしいでしょうけど、目を吊り上げて「やり込めたい!」とまで激しく憎んでしまうのは、それはそれでどうなんでしょう。しょせんは人のことだし、あなた自身の悪口を言われているわけではありません。

 西原理恵子さんの話題の新刊『洗えば使える泥名言』(文藝春秋)は、彼女が出会った「どうかしている人たち」が放った刺激的な言葉を集めたもの。その中で「自分への戒めとして心に刻んでいる言葉」として紹介されているのが、これです。

「人のことを憎み始めたらヒマな証拠」

 政治家の悪口が好きなその先輩も、広い意味で「ヒマ」なんでしょう。では、そういう人を激しく憎んでしまう自分はどうなのか。そんなにもその先輩のことが気になって、日々イライラさせられるのは、もしかしたら「ヒマ」だからかもしれません。いや、仕事の忙しさとかそういう話ではなく、ほかに熱中するものがあったり大きな悩みがあったりしたら、そんな先輩のことなんて気にはならないはずです。

 本によると、西原さんは「この人のことを憎み始めたら疲れてるな」という基準になる人がいるとか。政治家にせよ身近な人にせよ、悪口を言ったり嫌ったり憎んだりするのは、もっぱら自分の側にそうしたくなる理由があります。ここで「違う! ひどいヤツがいたら悪口を言いたくなったり憎んだりしたくなるのは当然だ! 相手のせいなんだ!」と言い張りたい方は、どうぞこれからもそのまま平べったい人生をお過ごしください。

「政治家の悪口を大好きなヤツが大嫌い」という思いを持つのはいいとして、その「大嫌い」がどんどんふくらみはじめたら、胸に手を当てて自分の側の理由を考えてみましょう。その先輩はいわばあなたにとっては「炭鉱のカナリア」で、よくない兆候を早めに察知するために必要な存在かもしれません。やり込めるどころか、心の中で感謝してもいいぐらいです。

 いっそ口に出して「いつも政治家の悪口を言ってくださって、ありがとうございます」と感謝してしまうのはどうでしょう。「な、なんだこいつ」と不気味に思って、あなたの前ではそういう話をしなくなるかも。よかったらお試しください。あっ、これってある意味「ビシッとやり込める方法」の指南にもなってますね。いろいろ結果オーライでよかったよかった。

【今回の大人メソッド】