【書評】「もしもし、ほっぺが落ちそうですよ?」 ――『赤子しぐさ』のイラストに我が子の赤ちゃん期を重ねて萌える!

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「キエァァァァァ〜!」

平日の朝7時半のことである。
けたたましい乳幼児の雄叫びで目が覚める。
声の主は長男か、次男か?どっちだ?

「何?どうした?誰?」

あわててリビングに行くと、そこには、“朝食が用意されているのにだらだらと中途半端に服を着たままボーっとしている5歳児”と、“先日私が間違って買ってしまった9ヵ月用の離乳食を夫に出され、全力で嫌がっている1歳児”の姿があった。

「ボクは!もう!赤ちゃんではありません! だから!こんなドロドロのものは!食べないのです!」と、椅子から落ちそうになりながら必死で訴える1歳児。声の主はこちらであった。

……我が家においては、もう“赤ちゃん期は遠くなりにけり”である。

“着替えない子”と“食べない子”を一人で相手していらいらしている夫に、私は「あげる人が替わったら食べんじゃね?」といい、まず私がひとさじあげ、次に長男があぶない手つきでもうひとさじあげると、しぶしぶではあるが口を開けるのであった。

「なんだこれ。」

自分の努力があまり報われない結果となった夫は、ため息まじりに残りのご飯を1歳児に食べさせる。

「いいよいいよ、食べなかったらパンでもちぎってあげときゃ」

私はそういって自分のしたくを始めるのだ。

“じゃあお前が食べさせろよ!”と各方面からツッコミを食らいそうだが、今のところ我が家はこうして回っている。そして、私は朝起きられないし、子どもたちは最近この調子なので、まったくというほど早く家を出られない。

■二人目に甘い、それは子どものかわいさを知っているから?


聞き分けのよさと要領のよさで、比較的私には怒られずにここまで来ている次男である。

それは過去に1歳児を育ててみた結果、「この年齢の子にこれを言っても仕方がない」「今はそのときではない」など、注意のしどころを親のほうが心得ているからで、このまま行くと、いつまで経っても長男には「あの時ごめんね」と言い続けるような気がしてしまう。

1日は24時間。そのうち仕事に行ったり保育園で生活する時間がそれぞれにあり、平日だと、親子が起きていっしょに過ごす時間は3時間に過ぎない。

その3時間の大半を、長男を叱ることに使ってしまったなあ……と振り返りながら、つい下の子にはあまくなっているのを自覚している。

たまには長男の接待を……と思い、休日に長男とサシで出かけるが、10分もしないうちに大喧嘩になって、私のほうがたいてい泣いている。困ったものだ。

次男については、「子どもを(ムダに)叱ること」を断捨離した結果、「子どもを愛でる」という時間が手に入った。つまりは観察だ。

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・この子、片っ端からあいているドアを閉めるなあ。
・「お風呂行くよー」と声かけると、自らスタスタ向かう。こちらの言うことを理解しているみたい。
・家族の脱ぎ散らかした服を、誰のか判別してそれぞれのかごにしまってくれる。
・「かわいい○○くん?」と呼ばないと返事してくれなくなったな。
・そこらへんの家具を使って斜めけんすいしている。筋トレかなあ。
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≪1歳ってこんなに面白い生き物だったかしら!≫

5年前に見過ごしてしまったものを、今取り返しているのかもしれない。

次男と同じように5歳に接してみようかなと思う日もあるのだが、悪態をつかれて腹が立ってしまう。きっと、一人ひとりにあった接し方というのが必要で、私は長男のそれをまだ見つけられていないだけなのかもしれないけど。

■失われた赤ちゃん期を求めて ――『赤子しぐさ』


長男も次男も赤ちゃんと呼べなくなった今、“ひとんちの赤ちゃん”でもなんでもいいから赤ちゃんを見たい!キュンキュンしたい!できれば匂いをかぎたい!という欲求に駆られる。はたから見たら“ちょっと危ない人”である。

「はぁ〜、赤ちゃん尊い」

自分の子の新生児期は、いつお星さまに戻ってしまうか気が気ではなく、24時間はらはらしていた記憶しかないのだが、なぜだろう、ワンクッションある関係の赤ちゃんだと100%の力でかわいがれる。

……これ、命の責任がないからだろうな。

そんな中、以前も紹介させていただいたのだが、次男に似ているという理由で気にかけていた「赤子イラスト」というのがある。

関連コラム:
【書評】赤子の愛しさよ永遠に!『赤ちゃんのしぐさ』にキュンキュンする件
http://mamapicks.jp/archives/52202081.html

「赤子イラスト」はイラストレーターの栗生ゑゐこさんがTwitterで公開していたものだが、それが『赤子しぐさ』のタイトルで本になったというのでさっそく読んでみた。


本書は、生まれたてから1歳まで、人間としてものすごく成長する時期の「赤ちゃんってこんなしぐさするよね」という“赤ちゃんあるある”を、ファンシーすぎず、リアルでありながらかわいらしいイラストと、愉快なエピソードでつづられる。

『赤子イラスト』のモデルとなった栗生さんの第二子は、我が家の次男と同時期に誕生しており、イラストの中で“赤子”はだんだん育っていくのだが、クラスメイトのがんばりをいっしょに応援してきたような、なんともいえない連帯感が私の中にあった。

そして、ついこの間だったのにもう過ぎ去ってしまった次男の「赤ちゃん期」を、ページをめくりながら、バーチャルリアリティ的に振り返るのだ。

■初産のときに赤ちゃんのかわいさをもっと知っていれば……!


筆者の周りにもおめでたい話題が何件か聞こえている今年である。

赤ちゃんの生態や成長過程をまったく知らないまま長男を育ててしまったので、もっと知っていたら関係は良好だったろうに、と思うことが日々あるのだ。

「赤ちゃんって面白い」
「赤ちゃんってかわいい」

このふたつを先にわかっているかどうかで、その後の育児は大きく違うのだろう。そういう意味で、本書は出産を控えた友人へのプレゼントに最適かもしれない。

「育児コミックエッセイ」とも「イラスト集」とも違う、「マンガ版赤ちゃん図鑑」とでもいえようか。対象を一定の距離から観察している、近すぎず遠すぎないその距離感が絶妙だ。

子どもにお手拭きを渡すと、口を拭いたあとに頭まで拭いてしまう描写など、つい数時間前に我が家でみた光景ではないか。そして、イラストに付けられたキャプションもじわじわくる。

入院中に読むのにちょうどいいライトな内容であるし、げらげら笑って腹圧がかかるギャグ物だと、出産でお腹を切ることになったときにつらいのだが、ほっこりするベクトルの面白さなので、これならお腹の負担にならない。

「これでイメトレしてね」と友人に差し入れでもしようか。

そう、事前にイメージトレーニングをしておくことが、育児においていかにその後の生活を楽にするか、筆者は実体験として知っている。

最近、婦人科に行くと漫画『コウノドリ』が待合室に置かれていることが多いのだが、「産科の待合に置く本」として本書も推薦しておきたいほどである。

ワシノ ミカワシノ ミカ
1976年東京生まれ、都立北園高校出身。19歳の時にインディーズブランドを立ち上げ、以降フリーのデザイナーに。並行してWEBデザイナーとしてテレビ局等に勤務、2010年に長男を出産後は電子書籍サイトのデザイン業務を経て現在はWEBディレクター職。