久保を筆頭に個性豊かなタレントが集まったU-16日本代表。いよいよ世界への扉を開くための戦いが始まる。写真:徳原隆元

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 いよいよ9月16日からインドのゴアで、U-16アジア選手権が開幕する。来年のU-17ワールドカップ(インド)の出場権が懸かった重要なアジア最終予選。森山佳郎監督率いるU-16日本代表はすでに決戦の地・ゴアへ旅立った。
 
「1年半かけて、このチームはいろんな国での強化合宿を経て、いよいよインドに向かいます。インドでは5月にシミュレーション合宿を行なって、食事のところや衛生環境、グラウンド状況も対戦相手と戦うことと同じくらい大きな克服すべき対象だと感じています。当然相手、環境に対する準備やコンディションを整えて全力を出し切って、勝負を出来るだけこっちに引き寄せたいと考えています」
 
 森山監督がこう意気込みを語ったように、インドという異文化の環境下で、アジアの強国との真剣勝負を行なうだけに、周到な準備がなされた。立ち上げ時からプレー強度の高いチームと練習試合を組んだり、試合会場も人工芝ではなく、敢えてコンディションが良くない天然芝のグラウンドをセレクトしたり、強い風雨であっても試合を決行したり、劣悪なコンディションとフィジカルをベースにしたアジア各国への対応は相当行なってきた。直前の茨城合宿でも若干荒れた天然芝ピッチで鹿島アントラーズユースと水戸ホーリーホックユースと2試合を行なった。
 
 そしてメンバーも、『闘える選手』と『最低限のアベレージを持った選手』をセレクトした。
 
「平均レベルというか、個人を構成するいろんな要素があるなかで、テクニックの部分や個人戦術の部分とかフィジカルやメンタルの部分で、『1』がある選手は厳しいなと思いました。なにかひとつでも克服出来ない課題がある選手は難しい。でも、2があるけど、3になる可能性があるなかで、5を持っている選手がいれば、オール3よりかはそっちの方がいい。最低限のテクニックと個人戦術、フィジカルというベースに加え、プロとして将来生きていけるものを持っている選手を選びました」
 
 現時点では準備に抜かりはない。チームの軸となるのはDF瀬古歩夢、小林友希、MF平川怜、福岡慎平、FW宮代大聖、中村敬斗のセンターラインだ。安定した守備と展開力を誇る瀬古、左利きの小林のCBコンビは「植田直通(鹿島)と岩波拓也(神戸)のコンビに匹敵する」と森山監督も太鼓判を押し、平川と福岡のダブルボランチは共に戦術理解度が高く、セカンドボールへの対応、ゴール前への飛び出しが光る。
 
 2トップはともにシュートセンスに優れ、宮代のキープと中村のミドルシュートが攻撃のアクセントとなっている。ここにMF久保建英、戦術的柔軟性の高いMF喜田陽、冷静沈着なDF菅原由勢、屈強なストライカーの山田寛人など、個性的な選手がバリエーションを加える。攻撃のアイデアや多彩さに富み、セカンドボールや球際への意識も非常に高い。東京五輪では年少世代に当たる彼らは、個性が際立ちながらも組織的に戦えるチームに仕上がってきた。
 
 グループリーグの相手はベトナム、キルギス、オーストラリア。最大のライバルとなるのがオーストラリアだが、グループ上位2チームが決勝トーナメントに進出するレギュレーションだけに、オーストラリア戦までにグループリーグ突破をほぼ手中に収めておきたい。
 
 当然、初戦が重要になる。ベトナムは日本より格下だが、タイと同じで近年台頭して来ている国だ。特に育成年代には日本人と似たような体格で、技術の高い選手がおり、決して簡単な相手ではない。キルギスは中央アジアのチームで、若干未知数な部分はあるが、ウズベキスタンの急成長に刺激を受け、若年層の強化に努めていると聞く。いずれにせよ日本はここで着実に勝点を重ねたい。
 
 そして、問題はU-17ワールドカップ出場権が懸かった準々決勝だ。インド、イラン、サウジアラビア、UAEが名を連ねるグループAの国が相手となるが、イラン、UAEという難敵が来る可能性がある。今から皮算用をしても仕方が無いが、いずれにせよ世界への扉を開くには厳しい敵が立ちはだかることは間違いない。
 
「ビビって消極的になったり、硬くなって動けなくならないようにしたい。彼らがより成長して行くために、絶対にワールドカップの出場権を掴み取る。強い気持ちを持って戦えるようにしたい」(森山監督)
 
 なによりも闘争心を重んじる森山監督が植え付けた『イズム』をしっかりと表現し、臆することなくこれまでの積み上げをいかんなく発揮する。それは選手全員のなかで当然の『共通理解』となっているはずだけに、彼らの力を信じて、インドでの熱戦を見届けたい。
 
取材・文:安藤隆人(サッカージャーナリスト)