お盆を前に多くの人で混雑する関西空港の国際線出発階=8月10日 (c)朝日新聞社

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 関西を中心としたはしか(麻疹)の流行拡大が止まらない。関西国際空港のほか兵庫県尼崎市でも集団感染が発生。予防接種が対策の要だ。

 ことの始まりは、夏休みになったばかりの7月31日の関西国際空港。居合わせた10〜30代の男女4人が、8月に入ってから相次いで発熱や発疹を発症し、はしかと診断された。

「4人のはしかを発症させたウイルスはいずれも中国やモンゴルで流行しているH1というタイプです。4人とも中国への渡航歴はなく、別の感染者からこの日に空港内で感染した可能性が高いでしょう」(国立感染症研究所の大石和徳・感染症疫学センター長)

 この時に感染したとみられる、関西空港を運営する関西エアポートの20代女性従業員は8月18日にはしかと診断された。感染はさらに広がり9月7日までに同社従業員33人、医療関係者2人に加え、8月末に関空対岸のショッピングセンター「りんくうプレミアム・アウトレット」(大阪府泉佐野市)を訪れた1人も感染した。

●免疫ないと100%発症

 7月31日に関空で感染したとみられる兵庫県在住の10代男性は8月14日に幕張メッセ(千葉市)で開催され2万5千人を動員したコンサートに参加した。8月下旬に、同じ会場に来場した2人に加え、この男性の家族3人も感染した。

 はしかウイルスは驚異的な感染力を持つ。空気感染や飛沫感染などで広がり、免疫を持っていない人が感染すると、ほぼ100%発症するのだ。今後も感染者は出るかもしれない。

 感染の10〜12日後に発熱や発疹といった症状が出るが、特効薬はなく、対症療法しかない。しかも症状が出る4〜5日前から感染力はあるので、気づかぬうちに周囲に広げてしまう。

 40代以上の世代では、はしかは誰もがかかるものだと思っている人もいるだろう。だが、時代は変わった。1978年からワクチンの定期接種が始まり患者は激減、土着のウイルスは2010年5月を最後に国内から姿を消し、日本国内ではしかは「排除状態」にあると昨年3月に世界保健機関(WHO)西太平洋事務局に認定されたのだ。

 今でははしかは、海外で感染した人が持ち込む輸入感染症だ。中国やインドネシア、フィリピンなどのはしか流行地へ行く前には予防接種の有無の確認をしたほうがいいだろう。国立国際医療研究センター国際感染症センターの堀成美・感染症対策専門職は、こう指摘する。

「これまでの流行では、感染者の多くは予防接種をしていないか接種歴がわからない人です」

 国立感染症研究所の調べでは、先月までの今年のはしか患者計41人のうち22人が予防接種歴無し、13人が不明だった。

 確かに、はしかは予防接種で防げる病気だ。だから「はしかの感染者の移動はまるでバイオテロ」。ネット上にはそんな書き込みもある。

「それは的外れです。定期接種を受けられなかったのは、親の事情や、忙しくて行けなかったということもあるでしょう。彼らをどう救うかが課題です」(堀氏)

●任意接種5千〜1万円

 現在、公費負担の定期接種は1歳児と小学校入学前1年間の計2回。14年度の接種率は、1回目が96.4%、2回目が93.3%と、未接種の人もいるとはいえ、高い。だが、26〜39歳は制度上、定期接種機会が1回であり、さらに接種率も低かった。すなわち、免疫が十分でない“谷間”の世代といえるのだ。

 定期接種の期間を逃すと、5千〜1万円ほどの自己負担となる。今回の関空関連での流行を受け、大阪府の指導にもとづいて関空の従業員らへの予防接種が8日から始まった。

「任意接種なので、通常は本人負担。会社が補助をするかなどは何も決まっていません」(関西エアポート広報担当者)

 定期接種のタイミングを逃した人たちへの対策は、喫緊の課題だろう。(編集部・長倉克枝)

AERA 2016年9月19日号