不倫調査の実態は?探偵に50時間密着

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 有名人の不倫が次々と発覚した2016年。だが、不倫現場を狙われているのは有名人だけではない。妻に依頼された不倫探偵が日夜、夫のプライベートを追っている。その様子の一部をお届けしよう。

 7月下旬の週末の昼下がり、仙台駅の新幹線ホームに50代半ばのビジネスマン・A氏が降り立った。ダークスーツを上品に着こなす彼は、草刈正雄を思わせるダンディな色男だ。

「マルタイ(調査対象者)を発見。午後0時23分より調査を開始する。事前情報通り、白いワイシャツにえんじ色のネクタイを着用。タクシー乗り場方面へ早足で歩いている」

 大勢の乗客が改札口を行き交う中、リーダーのベテラン調査員はなんなく調査対象者を見つけ出す。そして襟に付けた小さなマイクに向かって指示を出した。

 若手調査員も人混みに紛れながらA氏を追う。駅前で待機していた中堅調査員は、無線連絡を受けると大型バイクのエンジンをかける。そしてA氏がタクシーに乗り込んだのを確認すると、尾行を開始した──

 この不倫調査を行なうのは、都内にある某調査会社。不倫はもちろん、人捜しなどにも定評がある。同社の代表が語る。

「今回の不倫調査は、都内の会社役員の奥さんの依頼でした。8歳年上の夫とは職場結婚して15年。結婚後は退職して専業主婦として、現在中学1年生の息子の子育てにかかりきりだった」

 本誌は約2日、50時間ににわたるA氏の不倫調査に密着した。

19時21分:15時から始まったシンポジウムは、18時半頃終了。関係者との懇談を終えたA氏が関係者数人と一緒にホテルから出てくる。しばらく車寄せで談笑した後、A氏は関係者らを見送った。

 ひとりになったA氏はポケットからスマホを取り出す。画面を見た彼は、それまでの仕事モードの表情から一転し、頬がだらしなく緩んだ。浮かれている様子は遠目にもわかる。

19時35分:A氏は車寄せに入ってきたタクシーに乗車。調査チームもバイクとタクシーに分かれて追跡する。

20時01分:30分ほど車を走らせると、歓楽街近くのシティホテルへ。どうやらここが今夜の宿泊先のようだ。チェックインしたA氏はエレベーターに乗り込んだが、調査チームはここでは深追いせず、A氏が5階で降りたことを1階で確認するのみだった。

「エレベーターで何度も一緒になるのは、マルタイに気付かれる可能性が一気に高くなる。ここぞという場面に備えて、自重しました」(ベテラン調査員)

20時22分:再びA氏がホテルから出てきた。そのまま歩いて歓楽街方面へと向かう。

「歩いて尾行する際は、文字通り『尻』を見るようにします。見てもせいぜい腰くらいまで。顔を上げていると振り返られたときに眼が合い、相手の印象に残ってしまう」(同前)

20時30分:歩きスマホだったA氏は歓楽街の入り口で突然立ち止まる。キョロキョロし、周囲の警戒を始める。誰かと待ち合わせをしているようだ。

20時35分:40代半ばの女性がA氏に手を振りながら近寄っていく。調査員は決して目を離すことなく、持っていたICレコーダーに向かって、「45〜46歳、身長160センチ弱、ぽっちゃり。髪の毛は肩までの茶髪で、ゆるいウェーブ。白のワンピースにストールを巻いている」とメモ代わりに吹き込んでいく。女性と対面したA氏は満面の笑みを浮かべる。ふたりは、間に少し距離を置きながら歓楽街を歩き始めた。

20時48分:名物の牛タンが堪能できる郷土料理店の店先に置かれたメニューを見ながら、2分ほど話し合ったあと入店。店の外からカウンター席に並んで座るふたりの様子が確認できた。

 ビールや地酒を飲んでリラックスしたのか、A氏は女性の髪を撫で始める。女性も甘えた様子でA氏の肩にしなだれるなど、親密な様子がうかがえた。

◆車のリモコンキー型カメラで隠し撮り

22時18分:食事を終え、店から出てきたふたりは、どちらからともなく手を繋ぐ。このカップルもご多分に漏れず“ふたりだけの世界”に入ってしまったようだ。A氏の宿泊先のホテル方面へと歩いていく。このまま帰るのかと思いきや、A氏はタクシーを拾った。

22時22分:ふたりが乗ったタクシーの様子がおかしい。突然停車すると、A氏だけがいったん下車し、周囲を見渡す。

「たまに途中で急に冷静になって警戒する男性もいます。これを“警戒行動”といいます。ここで調査しているのがバレると、しばらくの間、調査ができなくなってしまうので、深追いは禁物です。今回は男性の宿泊先はわかっていますから、いったん尾行を中止して、ホテルで帰りを待ちましょう」(同前)

23時45分:A氏の宿泊先のホテルにタクシーで戻ってきたふたり。一度、フロントに寄り、何かコンシェルジュと話し込んでから、エレベーターへ。するとベテラン調査員は大胆にも同じエレベーターに平然と乗り込んだ。

 ホテルに戻ってきてからの様子は、すべて撮影され、記録されている。

「以前は“証拠写真”が必要でしたが、最近は動画で現場を押さえるのが主流です。これは裁判所が証拠として動画や動画をキャプチャした静止画を証拠として採用するようになったから。

 今回は車のリモコンキーに擬装したムービーカメラで撮影しています。これはかなり接近しても気が付かれません」(同前)

23時55分:調査員の目の前で、カードキーをかざして部屋に入る女性。続いてA氏も部屋へと消えた。

「これでは不倫調査としては不十分です。不貞を裏付けるため、短時間で女性が部屋から出てないことを確認しなければならない。『部屋で打ち合わせしていただけ』と強弁する男性もいますから。ドアの下から漏れる照明が消えたら就寝したと認められるので、それまで出入りがないことを確かめます」(同前)

 隣室が空室であれば、その部屋にチェックインする場合もある。隣が無理でも、同じフロアの部屋に入れれば、ドアを少し開け鏡を置いて出入りを確かめることもあるという。

「実はホテルの壁やドアは薄いので、耳を近づけると男女が睦む声が聞こえることもある。聞こえても録音はしませんが、調査書に記載します」(若手調査員)

1時28分:部屋が消灯したのを確認した調査チームは、いったん現場を離れた。

 ベテラン調査員は疲れた表情を浮かべながらも、こういう。

「明日も調査は続けます。まだ女性の素性がわかっていませんから。明日はA氏ではなく、彼女の尾行です」

◆男は不倫の余韻を残して帰宅

【2日目】
6時05分:調査チームは睡眠もそこそこに、早朝から張り込みを再開する。

7時41分:ホテルからノーネクタイ姿のA氏がひとりで出てくる。タクシーで仙台駅方面へと向かうのを確認するも、この日は女性の行方を追うため、こちらはスルーだ。

9時22分:A氏がホテルを後にした約1時間半後、女性がチェックアウトする姿を確認する。彼女もA氏同様、ホテルの車寄せからタクシーに乗り込む。調査チームも追尾する。

9時31分:仙台駅に到着した女性。適度な間隔を空けて尾行していたが、「みどりの窓口」に向かうとわかると、若手調査員はすぐ後ろに張り付いた。女性の行き先を把握するべく、真後ろから購入内容を覗き込むためだ。彼女は郡山駅(福島県)までの新幹線チケットを購入した。ここからは徒歩のベテラン調査員と若手調査員の2人が尾行する。

10時29分:郡山駅で新幹線を降りた女性は、慣れた様子で駅前の喫茶店へ向かう。コーヒーを注文し、読書を始めるなど、くつろいだ様子だった。1時間ほど、読書を楽しむとバスへと乗り込んだ。

「男性は不倫の余韻を残したまま帰宅してしまうものですが、不倫女性の多くはお茶や買い物など、日常生活の行動をすることでワンクッション置き、素の自分に戻ってから帰宅します」(ベテラン調査員)

11時48分:住宅街の停留所でバスを降りた彼女はまったく警戒している様子はない。そのまま軽量鉄骨造りのアパート2階へと消えた。部屋の玄関が外からも見渡せる位置で奥行きなどからシングル向けの物件と見受けられる。

 この日は23時まで張り込んだが、その後の出入りは確認できなかった。

【3日目】
6時00分:バイクの中堅調査員も合流して、女性の自宅前で張り込みを再開。

7時36分:昨日までとは打って変わり、出勤スタイルと思しきスーツ姿で女性がアパートから出てくる。集積所にゴミ袋を捨てると、軽自動車で出かけていった。バイクの中堅調査員らは、彼女を追い、ベテラン調査員は近隣で聞き込み調査。そこで彼女の名前が判明した。

7時55分:中堅調査員から彼女の会社が特定できたと連絡が入る。なんとA氏と同じ会社の郡山支店に勤務する女性だった。

 その後、依頼者への確認などを行なった結果、驚愕の事実が判明する。

「不倫相手は依頼者である奥さんとも顔見知りの女性でした。奥さんが働いているときは、同じ職場で先輩、後輩の間柄だったのです」(代表)

※週刊ポスト2016年9月16・23日号