39℃以上の高熱が出て顔や体に発疹(shutterstock.com)

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 「はしか(麻疹)」の感染が、急速に拡大している。

 8月の大規模コンサートやイベントに、はしか感染者が来場していたことが判明して騒ぎとなったのは記憶に新しい。国立感染症研究所によると、今年の感染者は41人(8月28日現在)。すでに昨年1年間の35人を上回った。

 都道府県別では千葉が12人で最も多く、東京・兵庫(6人)、埼玉・大阪(3人)、三重(2人)と続く。

 8月末には、大阪府が関西国際空港を発生源とする集団感染を公表。府が最初の感染確認から2週間公表しなかったことに関して、松井一郎知事は7日、「ここまで感染(拡大)すると考えなかった。甘い部分があった」と対応の不備を認めた。

 関空関連の感染者は40名を超え、三次感染の疑いがある人も出てきた。今後、国内の全感染者数は、昨年の倍以上になりそうだ。

 関空の近くの大阪府岸和田市では、今月中旬の「岸和田だんじり祭」に、はしかの発症疑いがある人の参加を控えるように呼びかけている。

1000人に1人が脳炎を発症、後遺症や死に至ることも

 はしかは、ウイルスによって引き起こされる感染症で、免疫がない人が感染するとほぼ100%発症する。最大の特徴は、感染力が突出して強力なこと。ウイルスはごく微細でマスクを通り抜けるため、空気や飛沫でも感染する。

 免疫を持たない集団に、ひとりの感染者が混じると、通常インフルエンザだと感染者は1〜2名だが、はしかは12〜14人が感染するといわれる。

 発症すると発熱や咳、鼻水など風邪のような症状がみられた後、39℃以上の高熱が出て顔や体に発疹が現れる。

 患者の約3割が合併症を起こすとされ、肺炎や中耳炎が多い。1000人に1人が脳炎を起こし、後遺症が残る。死に至ることさえある。妊娠中に感染すると、流産や早産の可能性がある。

 さらに、10万人に1人のレアケースだが、感染して数年から10年ほど経ち、「亜急性硬化性全脳炎(SSPE: subacute sclerosing panencephalitis)」を発症し、知的障害や運動障害が進行することも報告されている。

 はしかは、重篤な合併症を伴う恐ろしい病気なのだ。
<排除状態>の日本で、なぜ流行したのか?

 国内では2008年に1万人を超える大規模なはしかの流行が起きたが、世界保健機関(WHO)は昨年3月、「日本は麻疹の排除状態にある」と認定した。

 日本に存在する「土着」のウイルスによる感染が3年以上押さえ込まれてきたからだ。

 ではなぜ、再び患者が急増しているのか。厚生労働省によれば、関西空港の従業員や利用者から検出されたウイルスは「H1」という中国やモンゴルで流行している型だという。

 今年7〜8月、千葉県松戸市を中心に報告されたのは、東南アジアや南アジアなどで流行している「D8」ウイルスだ。

 海外には、いまだにはしかが流行している国は多い。海外で感染して日本に持ち込む危険性は、常にある。

感染リスクが高いのは今の20〜30代

 特効薬がないはしかの最も有効な予防策は、ワクチンの接種だ。はしかワクチンは昭和53年から定期接種となり、すべての子ども(1〜6歳)に接種が行われている。この定期接種の導入で、国内の感染者は大幅に減少した。

 だが、その後、1回の接種では十分な免疫力がつかないケースが判明した。そこで確実にするため、平成18年から1歳と小学校入学前の2回接種となった。

 一方、40歳以上は、はしかに自然感染して免疫を獲得している人が多い。ちなみに、自然感染による免疫は、通常であれば生涯続く。

 そのため、日本でいちばん感染のリスクが高いのは、子どものときに1回接種しただけの20〜30代である。今回の関空を舞台とした集団感染の多くが、この世代に集中している。

 大阪府は8日、さらなる感染拡大を防ぐため、関空従業員約900人に任意のワクチン接種を始めた。対象者はワクチン未接種者や、はしかの既往歴がない30代以下の従業員だ。

ワクチン接種が感染拡大を防ぐカギ

 はしかの既往歴が不明で、予防接種を1回しか受けていない人も、ワクチンの在庫があれば近くの医療機関で接種できる。

 保険はきかず、費用は8000円から1万円だ。自治体によっては、妊娠を希望する女性に対して、MR(風疹・麻疹混合)ワクチンを助成するところもある。

 ワクチンには拒否反応を示す人もいるが、日本が「麻疹排除国」となりえたのも、ワクチン接種率がアップした賜物だ。

 1990年代、「MMR(麻疹・おたふくかぜ・風疹)ワクチンが自閉症を引き起こす」という論文が発表され、ヨーロッパでワクチン接種率が激減して、はしかが流行した。

 2010年、「論文は捏造だった」として取り下げられたが、いまだにワクチンに関するデマと不信感は一人歩きをしている。その轍を踏むべきではない。

 はしかの特徴は、成人してから発症すると重症化しやすいことだ。感染リスクの高い人は、今回の流行を機にワクチン接種しておくのもいいだろう。ひとりでも多くの人が免疫を獲得すれば、社会全体で感染拡大を防ぐことにつながる。
(文=編集部)