連続テレビ小説「とと姉ちゃん」(NHK 総合 月〜土 朝8時〜、BSプレミアム 月〜土 あさ7時30分〜)第23週「常子、仕事と家庭の両立に悩む」第138回 9月10日(土)放送より。 
脚本:西田征史 演出:岡田健


「編集者になるために入ったのに、電気がどれだけつくか見張ったり、ひたすら鉛筆削ったり、繰り返し繰り返し飯を炊いたり、もううんざりなんですよ」

どこの誰かわからない人からお金をもらって会社の情報を流していた社員編集者・松永(石田法嗣)。
「ぼく会社辞めます」「もう耐えられないんです」と激白。元はといえば彼の浪費癖が原因なのに、上記のようなことを言って、自己正当化する松永。いるいる、こういうひと。

松永のひととなりを想像するに、いまでいえばガジェット好きで、ガジェットの情報を取材したり書いたりできる仕事が楽しそうと思って入ったら、意外と面倒くさいことが多くていやになったというところだろう。いるいるそういうひと。

なぜか、松永のキャラ描写だけ、ものすごく理屈にかなっている。家電をたくさん買っているという伏線も張っていたし、仕事でも失敗の多いダメ社員的ポジションで。
主人公すらなんだかキャラがブレているというのに、松永みたいな人物はとても書きやすいタイプだったのだろうか。主人公なんて、以前は新聞をネタ探しと必死で読んでいたのに、大東京新聞の記事を森田屋に見せてもらうまで知らないくらいだ(そもそも出版社なんだから各紙購入しているだろうし意識が低く描かれていて常子が可哀想)。

松永を基準に、他の登場人物や出版の仕事のディテールを丁寧に描いてほしかった。
松永の台詞を借りて、本音を言えば、
「編集者の仕事に興味あったのに、電気がどれだけつくか見張ったり、ひたすら鉛筆削ったり、繰り返し繰り返し飯を炊いたり、そんなシーンばっかり、もううんざりなんですよ」。

「あなたの暮し」はすっかり商品試験専門の雑誌のように見える。現在でもそういう雑誌があってそれはそれで意義があるが、モチーフになった雑誌にはもっと豊かで知的な読み物があった。商品試験のための雑誌ではなく、つくり手の思いの表れのひとつが商品試験だっただけだ。
大日本新聞社のひともジャーナリストのはしくれ、雑誌のほかの記事を読めば、このひとたちが何を考えて商品試験をやっているかわかるはずで、ドラマのように色めがねで見るはずない。

NHKも丁寧に取材して番組をつくって視聴者に伝えるという仕事をしているだろうに、どうしてこんなに雑誌や新聞に敬意を払わない描き方をするのだろう。
朝から、重いものや暗いものが好まれないことに配慮をしてくださるのなら、出版に携わる人、憧れている人が悲しい気持ちになることも配慮していただけないだろうか。

こんな文句を言えば言うほど、あれも書けないこれも書けないと作り手の自主規制事項が増えていって、どんどんドラマがつまらなくなるのだろう。気をつけなくちゃ。

いろんなひとが次々出てきて消えていく、10回くらいの一話完結の連ドラの形式で書くのなら、雑誌にかかわった素敵な作家さんを、素敵な俳優さんで次々出していくのも楽しかった気がする。
歌舞伎のことを書いた武智鉄二さんの話も面白そうだ。

24週も楽しみです。
(木俣冬)