2−0で勝利したとはいえ、ピリっとしない戦いぶりに逆に今後への不安を募らせたW杯最終予選タイ戦。代わり映えのないメンバーの中で、新風を吹き込んだのは、サンフレッチェ広島からアーセナルへの移籍で注目された浅野拓磨だ。代表に不可欠なメンバーになったとまでは言えないが、この日は2点目を決めて結果を出した。

 その浅野は英国での就労ビザを取得することができず、今季はブンデス2部のシュツットガルトでプレーする。名門シュツットガルトは昨シーズン、1部から降格。1年での復帰を目指している。

 アーセナルからのレンタル移籍といえば、宮市亮のケースが思い出される。宮市は最初の半年間、オランダのフェイエノールトでプレー。その後アーセナルに戻ったものの、負傷の影響などもあってイングランドを転々とするハメに陥った。昨季からはやはりドイツ2部のザンクトパウリでプレー。代表への復帰を目指しながら、まずは先発定着を狙う日々を送っている。

 他にもブンデス2部では、山田大記が14年からカールスルーエでプレーしている。2014〜15シーズン、クラブは1部昇格を狙っており、実際にプレーオフにも進出したが、結局、昇格はならず。昨シーズンは7位にとどまった。

 また、今季から細貝萌が浅野と同じシュツットガルトに加入した。細貝は昨シーズン、ヘルタ・ベルリンからのレンタルで昨季1年間トルコのブルサスポルでプレーした。だが、治安面を考慮したのと、シュツットガルトの監督にヨス・ルフカイが就任したことで移籍となった。

 ルフカイは2010〜11シーズン、細貝が最初にドイツでプレーした当時のアウクスブルクの監督で、同チームを2部から1部に昇格させている。その後ヘルタを率いた時も細貝を呼び寄せており、共に戦うのは今回で3度目となる。細貝にはルフカイ以外の監督のもとで活躍したい、あるいはドイツ以外のリーグを経験したいという思いもあったようだが、ここは現実的な判断をしたということだろう。

 さらに今年2月には、デュッセルドルフの金城ジャスティン俊樹がトップ契約をしている。97年生まれの19歳。東京五輪世代のMFとして今後の活躍が期待される。

 現役の日本代表から、復帰を目指す元日本代表、さらに将来が期待される若手と、さまざまな立場の日本人選手がプレーするドイツ2部。そのレベルはどの程度のものなのだろうか。

 現在のドイツ代表には、2部の選手は1人も選出されていない。世界王者になった2014年のチームもそうだったし、代表監督のヨアヒム・レーヴが視察に訪れたという話も聞いたことがない。だが、今夏のリオ五輪代表メンバーには4人が2部から選出されている。決してレベルが低いということはなく、テレビの中継もあって注目度も低いわけではない。

 ただ、観客動員数においては1部とは大きな違いがある。キッカー誌が出している集計によれば、昨季1部で最も多く観客を動員したのはドルトムントで137万2936人(リーグ戦のホーム開催試合全17試合の合計)。2位バイエルン、3位シャルケまでが100万人台を記録している。最下位はインゴルシュタットの25万2973人だった。

 これに対して2部で最も動員が多かったのがニュルンベルクで51万6012人。50万人を超えたのはこの1チームのみで、40万人台がザンクトパウリ、ライプツィヒ、デュッセルドルフ、カイザースラウテルンの4クラブ。最も動員の少なかったザントハウゼンは10万3109人。1試合平均にすると6065人だから、J2よりはいいとはいえ、1部でプレーするような醍醐味は味わえない。

 その一方で、試合出場機会が多く得られることが2部チームでプレーする利点となる。浅野はその点も考慮して2部チームをレンタル先に選択されている。

 合流後の初戦となる第5節、9月9日のハイデンハイム戦ではさっそくメンバー入り。81分から出場し、デビューを飾っている(試合は1−2でホームのシュツットガルトが敗れた)。

 2部リーグでプレーする日本人の多くは、次へのステップとしてこの舞台を選択しているはず。だからこそ1試合1試合の勝負だけでなく、先々のことも含めて長い目で見ていきたいものである。

了戒美子●文 text by Ryokai Yoshiko