そうだ 京都、行こう。カートで。
東京にお住まいの方なら、街中で一度は目にしたことがあるのではないだろうか。公道走行可能なレーシング・カートにまたがり、その全身をあの人気ゲームキャラクターのコスチュームで飾り、そして今にもキノコやバナナを投げ出さんばかりの勢いで盛り上がっている若者たちを、、、。

日々激務に追われるニッポンのサラリーマンを横目に、キラキラ眩いばかりの“楽しい光線”を発するその集団を見てこう思ったことだろう。「超パリピーじゃん!」。心から羨ましい。しかし素直に「心の底からボクも混ぜて欲しい」とは口にできない。

ただ悔しい。だからして、我々取材班は今回あのレンタルカートをお借りして孤独な一人旅に出ることにした。

チャラさが際立つ例のキャラクターコスチュームなんて身にまとわない(ひとりじゃ寂しいから)。ガチのレーシングスーツこそが、カート旅には相応しい(真夏だけれど)。奇しくも撮影当日は台風7号が関東を通過した直後。不安定な空模様に多少ナーバスになりながらも、カートのキーをひねり走り出す。

決めたルールはただひとつ。

24時間走り続けること。





スタートは午後6時。東京は日本橋を起点に、まずは行き交うビジネスマンやOLの白けた視線を全身に浴びながら大都会を爆走する。ちなみに旅の相棒である今回のカート、排気量は50ccと基本的には原付と同じエンジンスペック。公道仕様とは謳うものの、もちろんパワーステアリングも付いていなければ、サスペンションもない。ひと言に“爆走”と言っても、かなりタフな重労働である。しかも50ccのマイクロカー扱いなので「高速道路などの利用はNG」とくれば、この行為がいかに孤独で無謀なものかおわかりいただけるだろう。

そんなのお構いなしとばかりに、国道1号を西へ西へとひた走る。ちなみに、レーシングカーばりのウイングを装着し、とっても速そうに見えるこのカート。実はアクセル全開でも法定速度に届くか届かないくらいのスピードしか出ない(※メーカーの名誉のために記述するとチューニングすればもっと速くなる・・・)。段差のたびにカートが跳ねるし、タイヤのわだちのせいでステアリングは大暴れするし、アクセルを踏めども踏めども思うように走行距離が伸びない。つまりかなりキツイのである。





挙句の果てには、深夜の箱根で突然のゲリラ豪雨に出くわした。こいつはマズイとコンビニに緊急ピットインし、マシンをレインセッティング(ビニール傘)に変更。深夜の豪雨の中でドライブするレンタルカートはネタにならないくらいに怖い。当然ビニール傘など役に立つはずもなく、下着までもびしょぬれになりながら、明け方にはなんとか静岡県を横断したのであった。





苦痛な夜走行も終わり一安心かと思いきや、一難去ってまた一難。やっぱり眠いのである。

24時間走り続けるという初志貫徹の精神は一旦おいといて、ヘルメットをかぶったまま激旨しらす丼を食し、レーシングスーツのまま足湯につかり疲労回復。

そうこうしているうちにいつの間にか愛知県に突入。豊橋名物の路面電車とデットヒートを繰り広げ、伊賀の山々を颯爽と駆け抜け(峠道の上り坂はマシンが非力でマジでつらい。一般車の皆様、ご迷惑おかけしました)、そしてあたりの空が再び闇に包まれ始めようとする頃……。いよいよ見えたッ、京都の灯りが! 





「おいでやす」と、温かく迎えてくれる祇園の町並み(実際には古都の佇まいの中で抜群に浮いていた)。そして、まさに三条大橋に到着したところでタイムアップ。24時間走り続けた結果、その走行距離はなんと530kmに達したのであった。 東京は日本橋から京都の三条大橋まで、つまり東海道五十三次(正確にはそれ以上)を走破してしまったのである。



さて、結論。

レンタルカートで24時間走り続けると「そうだ 京都、いける」ということが判明した今回の一人旅。道中はただひたすらに「嗚呼、失敗。素直にマ○オカートごっこに混ぜてもらえば良かった」と連呼していたのは確かだが、でも同時に人生に一度あるかないかの大冒険を味わえたのもこれまた事実。いつもとは一味異なるエクストリーム旅の素晴らしさを痛感したのであった。

というわけで勝手に予告。ふと思い出した頃にでも、「カート旅○○編」に挑戦することを此処にお約束する。

「○○」の内容は……これから考えます。



■出典
人は、カートでどこまで遠くにいけるのだろう? -Redbull.com-