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●チーム全員でテーマ・役割分担を決め、レポートを発表
○多人種多国籍な環境でリアルなビジネスを体験

日本オラクルが大学生向けの夏のインターンシッププログラムに力を入れ始めた。日本オラクルは3年前から、インターンシッププログラムの取り組みを始め、2年のパイロット期間を経て、昨年初めて8名の大学生を公募。今年はさらに規模を拡大させ、6月上旬から9月上旬にわたって国内外の大学生を対象に3グループ延べ24人によるインターンシップを実施した。

参加大学は、海外の大学が米国パデュー大学、ノートルダム大学、ミシガン大学、オーバリン大学、カナダのトロント大学の5校。日本国内は早稲田大学、慶応大学の2校だ。人種、国籍、学部、専攻などが異なるさまざまな価値観を持った学生たちが、日本オラクルの青山本社に集い、6週間かけて共同で1つのプロジェクトに携わる。国内のIT企業が実施するインターンと比べると、多人種多国籍な環境で実ビジネスに近い働き方を体験ができることが特徴だ。

取り組みの責任者であるオペレーションズ統括本部ビジネスオペレーション本部ディレクターのマーク・ハンコック氏は、大学生向けインターンシッププログラムの狙いをこう話す。

「さまざまな価値観や文化を持った人たちが企業の中で何を考えどう行動しているかを学んでもらいたいと思っています。昨年から幅広い大学に呼びかけるようになり、今年は参加者の10倍に相当する応募がありました」

参加する学生の意欲も高いという。媒体などを使った告知は行われず、指定された大学を経由して参加するか、オラクルのインターンシップページから情報を探して自主的に応募する必要がある。晴れて選考されると、オラクル社員と同じようにメールや社内アプリケーションを利用するためのアカウントが割り当てられ、朝10時に出社し夕方5時に退社するというスケジュールで働くことになる。

○最終成果物を経営トップに直接プレゼンテーション

職場は、インターン生向けに用意されたフロアの一角だ。会議室の予約やカフェテリアの利用など、社員が利用できるスペースは同じように利用できる。インターン生は、大学の休講期間などを考慮して3つグループに分けられている。1グループ約10人で1つのプロジェクトチームを構成して、共通のテーマに取り組む。学生同士や社員とのコミュニケーションは基本的に英語だ。

プロジェクトの最終目標は、テーマに沿ったレポートを成果物として発表すること。プロジェクトのテーマをどう設定するか、誰が何を担当し、どうスケジューリングするかといったことはすべてチームのメンバーで自主的に決める。今回で3回目の参加になるパデュー大学4年機械工学専攻のキース・グロッグさんは、こう話す。

「与えられたものをこなすのではなく、自分たちで目標を決め、各人が何ができるのかを相談しながら仕事を進めるのが原則です。アドバイスはしてもらえますが、仕事が割り振られたり指示されたりといったことはありません。社員と変わらない働き方が求められています」

プロジェクトの最大の山場は、成果物の発表会だ。発表会は、数十名を収容できる広めの会議室で行われ、テーマに関連する担当部門の責任者や役員、さらには、代表執行役社長兼CEOの杉原博茂氏も参加する。経営層から忌憚のない意見が出されることもあり、冷や汗をかきながらプレゼンテーションをすることになるという。

「緊張はしますが、自分が取り組んだものに対して大企業の経営トップから直接意見を聞くことができる貴重な機会です。日本と米国の企業文化に学びなから、社員や経営トップとディカッションできる機会はなかなかありません。米国の大学のカリキュラムや米国企業でのインターンシップでも得られない経験だと思っています」(グロッグさん)

インターン生が作成した資料がそのまま杉原社長によって社内の幹部向けミーティングで資料として使われたこともあるという。学生が参考程度に作った資料なのではなく、オラクル社員が手がけたビジネスで使える資料として評価されるのだ。

グロッグさんは日本人と米国人を両親に持ち、日本語も堪能だ。機械工学とともにITへの関心が高く、日本と米国で活動するIT企業のオラクルに関心があったことから、応募した。大学卒業後は、日本オラクルでのインターンシップの経験を生かし、日本オラクルを含め、日本企業で働きたいと考えているという。

○米国のビジネス文化と日本のビジネス文化の両立

グループ内での仕事はどのように進められているのだろうか。今回初めてインターンシップに参加した早稲田大学国際教養学部4年の岡村実季さんは、こう話す。

「まずグループのテーマを決めます。私たちが決めたテーマは、ビジネスをすすめる上で日本のビジネス文化とアメリカのビジネス文化をどう両立させるかです。プロジェクトを進めやすくするために、グループを3つのチームに分け、社内の人へのインタビュー、社外の人へのインタビュー、インタビューで得た情報の収集と分析をそれぞれ分担する仕組みにしました。それぞれのチームにはアンケートを作成したり、インタビューを行ったりする担当者がいて、役割に応じて作業を進めるようにしています」

国籍も文化も違う学生たちがそれぞれの役割やスケジュールを決めながら仕事を進めていくことは想像以上に難しい。帰国子女として人生の半分を米国で過ごしたという岡村さんも当初は戸惑ったという。

「海外の学生が多いとは聞いていたのですが、想像以上にディスカッションの内容が濃くて驚きました。ただ、その分学びはたくさんあります。社員の方に話を聞く際も、学生という視点ではなくオラクルの社員の1人として接してもらい、参考になるアドバイスをいただけます。自分で自由に仕事を進められる一方、それに対して大きな責任が伴うと感じています。グローバル企業ならではの面白さだと思います」

岡村さんはすでに他の企業への就職が決まっているが、来春に就職する前にITの実務経験をしたいと思い、インターンシップに応募した。「プレゼンテーションの仕方や資料内での言葉の使い方などの指摘が実践的でとても参考になりました」と話す。

●外資系企業と日本企業のビジネス文化を体験
ノートルダム大学経営学部4年の韓国人チェ・インさんは「理系が嫌いでITにもまったく関心がなかったが、大学の講義で知り興味が湧いた」ことが応募のきっかけだ。

京都に生まれ高校まで名古屋で育ったチェさんは、米国大学に進学しマーケティングを専攻している。オラクルの製品を題材にしたマーケティングの実習を通じてオラクルという企業を知り、日本法人があることから実際にどのようなビジネス文化を両立しているかを知りたくなったそうだ。

「インターン生として働いてみて感じたのは、外資系企業といってもアメリカのビジネス文化をそのまま持ち込んでいるケースは少ないということです。一方で、日本企業とも異なるスタイルで働いていました。日米の文化がありながら、そのどちらでもないという環境がとても面白いと思いました」

就職希望先としては外資系企業を中心に検討しているが、IT企業であっても自分の専攻が生かせることを知り、興味が出てきたところだという。

○バラエティに富んだ人材がオラクルの企業文化を育む

海外旅行経験もなく英語もそれほど得意ではない"純日本人"という立場でインターンに参加したのが早稲田大学商学部3年の松野太樹さんだ。

ITベンチャー企業のインターンとしてセールス支援を行っていた時、著名な外資系企業のリストの中に日本オラクルが含まれていた。IT系企業のセールスを志望していたこともあり、調べているうちに興味がわいた。企業サイトからインターンの募集がないかを自力で調べ、Linkedinで知り合ったキャンパスリクルーターにダイレクトにメッセージを送って応募した。

「実際に働いてから困ったのは英語ですね。ノートルダムなど海外の学生はいくつかの外国語を勉強していて、日本語も上手です。こちらがスマートフォンの辞書を片手にたどたどしい英語で質問すると、流暢な日本語で答えを返されるといったこともありました」

インターンシップの内容は刺激的だったという。

「グループで働くこと、社員と同じような待遇を受けること、英語でコミュニケーションをとること、自分たちで課題を発見することなど、今までに見たことない内容のインターンシッププログラムでした。大学では教えられてから行動することが多いと思います。そうではなく、何も情報がないところから自分たちで組み立ててというスタイルは、頭を使うし、とても充実感があります」

松野さんは、IT企業の中でもソフトウェア企業のセールスに職種を絞って、これから就職活動の準備を進めていくという。

4人のケースからもわかるように、オラクルのインターンシップへの参加者は、生い立ちから応募の動機、将来の志望までとてもバラエティに富んでいる。そうした人材が同じ空間を共有し、一緒にプロジェクトに取り組むことは、単なる"研修"だけではない価値を生むようだ。このことは、さまざまな技術やノウハウ、文化を1つの企業のなかでまとめていくことで価値を生み出そうとするオラクルの企業文化そのものを表しているようにも思える。

マーク氏によると、インターンのグループは日本オラクルという組織において1つの部署のような位置づけだという。マーク氏はインターン生をとりまとめるマネージャーのような存在であり、日本オラクルのビジネス文化のイロハを教えてくれるメンターでもある。

「来年はインターン生の人数こそ増やせませんが、対象大学の数は拡大する予定です」と、インターンを通して、多くの学生にオラクルの取り組みを知ってもらうこと、取り組みに触れることで自身の視野を広げてもらうことに期待を寄せる。

日本のIT企業のインターンシップは、時として優秀な人材を優先的に採用するための手段になるケースがある。その点で、日本オラクルのインターンシップは目的がまったく異なる。貴重な経験を体験できる機会として、今後さらに注目を集めそうだ。

(齋藤公二)