ロードスターの真実・マツダ 中山 雅(3)オープンカーだから、RFのリアウインドウは開いて当然!

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電動可動式のハードトップを備えながら、まるでクーペのようなルーフラインを持つ流麗なスタイリングーー。

それが、2016年中にマツダ「ロードスター(ND型)」のラインナップに加わる「ロードスター RF」最大の特徴だ。

リアピラーの傾きは強く、リアデッキとの間に明確なノッチを持たないファストバックスタイルを採用したRFだが、スイッチひとつで開閉するルーフを開けると、車内は開放感に包まれる。

そんな新発想のオープンカーを“発明した”のは、NDのチーフデザイナーを務めるマツダの中山 雅さん。いまやロードスターの開発主査も兼務する中山さんに“RF”のキーポイントを聞いた。

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 デザイン性を重視して高コストの樹脂をあえて採用

--前回うかがいましたが、RFはなんとか無事にマツダの社内会議を通過しました。その後、デザインの3Dデータから検証モデルを製作され、スタイリングのカッコ良さや開放感の高さも、社内の皆さんから納得いただきました。でもそれと、実際にルーフを収める機構を開発するのとは、全く別の話だと思います。実際にRFを拝見すると、ルーフを収めるための開口部が驚くほど小さいですよね。ここに畳んだルーフを収めるのは、すごく大変そうに思えるのですが…。

中山:当初、開口部はもっと大きかったんです。デザイナーから見たら、もう恐ろしいくらいに大きかった。最終的にRFのパーティングラインは、トランクリッドの延長線上に設けました。その分、開口部が圧倒的に小さい。トランクリッドのラインは、ソフトトップ仕様の位置とほぼ同じなんです。ハードトップ仕様の設定を一切考えず、絞りに絞って内側にギューッと寄せて引いたソフトトップ仕様のライン。

マツダ ロードスター RF

しかし、RFのルーフ開口部のパーティングラインをそこに合わせたい、と提案した当初は、エンジニアに「そんなの無理!」と断固拒否されました(苦笑)。彼らいわく「NCのように開口部のラインをもっと外側に配置し、開口部がガバッと開くようにしないとルーフが収められない」と。

--そういえば、他車でもボディのサイドまで開口部が広がっているモデルがありますね。やはり、RFの形状は、一朝一夕には作れないということですか?

中山:私は、エンジニアの技術力を信じていましたから、カタチにできると確信していました。RFのハードトップを折り畳むメカの構造は、NCのそれと基本的に同じものにしようと考えていたので、デザイナーたちはその時点で、完成形を想像できていました。だから、すぐに3Dデータを作り、それを今度はアニメーション化して、ルーフの動きをエンジニアに見せたんです。アニメとはいえ実際の映像を見てしまうと、カッコいいですからね。チームのモチベーションが上がります。「絶対に完成させるぞ」と。

マツダ ロードスター RF

--そのルーフですが、リアのガラスウインドウが開閉しますよね。ソフトトップでは開かないのに…。

中山:初代のNA型に乗っている自身の経験から、RFのリアウインドウは絶対に開くようにしたい、と考えていました。NAって、ソフトトップに付いている透明な樹脂製ウインドウだけを、ファスナーで開けられるんですよ。すると、風が気持ち良く流れていくし、後方から排気音が聞こえてくる。これだけで明らかに、オープンカーに乗っている! という気分が盛り上がるんです。

マツダ ロードスター RF

--技術的に、ハードルはなかったのでしょうか?

中山:もちろんありましたよ。ホントのことをいうと、リアウインドウは固定式の方が、設計的には随分ラクになるんです。だから「リアウインドウは固定式にしない?」という提言が多くありました。十分カッコいいんだし、あえて開閉式にする必要はないでしょう、と。でも、そこだけは絶対に譲りませんでした。

とはいえ、開閉式にこだわったことで、防水性や耐候性にも配慮しなければならなくなった。例えばNAは、勢いよくホースで幌に水をかけると、車内に水が入ってしまいます。機械式洗車機で洗えばなおさら。でも、現代のNDでそれが起きてしまっては、絶対にいけない。なのでリアウインドウを閉めた時はビチッとシールドできるよう、細部まで配慮しました。でもこれが、実は結構大変だったんです。

--ルーフ部の素材には、アルミやスチールが使われていますが、トンネルバック部分の素材には何を使用されたのですか?

中山:樹脂ですね。というのも、トンネルバックの部分を金属製にすると、あれだけ深いプレス加工ができないんです。やれないことはないけれど、重くなってしまう。でも樹脂であれば、ひとつの部品として成形できますからね。

マツダ ロードスター RF

その樹脂も、一般のプラスチックとは異なり“SMC(シールド・モールド・コンパウンド”という素材を使っています、SMCの方がコストは高くつくのですが、成形してからの縮みが少なく、熱膨張も小さいんです。一般的なプラスチックはローコストですが、熱膨張が大きいため、ほかのボディパーツとのすき間を大きめに確保しておかなければなりません。例えば、ドバイとか気温の高い地域だと、すぐに膨張してしまいますからね。バンパーのように、仮に膨張しても逃げの部分があればいいんですが、RFのハードトップは各部をギリギリまで詰めた設計にしたので、逃げられる部分がないんです。

--フツーの樹脂を使っていたら、不格好、不細工な仕上がりになっていたわけですね。

中山:今のマツダは、そういったデザインやモノづくりに対する社内の理解が、非常に高いんですよ。従来だったら、ひょっとしたら「我慢しよう」とか「お金かかるから」といって、フツーのプラスチックで作っていたかもしれません。

でも今は「デザイン的に、パーツとパーツの間隔が広がるのはマズイ」というと「そりゃそうだ」とエンジニアたちが応えてくれる。むしろ、そうでなければならないという雰囲気が、社内全体にあるんです。

--さて、最後の質問なりますが、RFの車内に電動ハードトップの開閉スイッチがありますよね。上下に動くスイッチですが、どちらに動かすとルーフが開くのでしょうか?

中山:それについては社内でも「開ける時と閉める時、スイッチはどちらに動かしたらいいか?」という議論がありました。ただ個人的には、ルーフを開ける時は、スイッチを上へ動かすのがいい。

マツダ ロードスター RF

その方が「今からバーッと上げるぞ!」と気分も上がるじゃないですか! 逆に、雨が降ってきちゃった時は、うなだれながらスイッチを下へ押すとルーフが閉じる。なんとなくですが、この設定の方が、ユーザーの皆さんの気分にもマッチすると思いますよ。(完)

(文/ブンタ、写真/グラブ、田中一矢)

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