呼吸とは、単に「息を吸う・吐く」ということだけではなく、筋肉や関節、内臓や免疫、循環、体と心のすべてに対する根本的な用途として関わってくるもの。

『なにもしていないのに調子がいい ふだんの「呼吸」を意識して回復力を高める』(森田敦史著、クロスメディア・パブリッシング)の著者は、そう主張します。

13歳でクローン病という腸の難病(特定疾患)を患い、チック症、自損、胃潰瘍・十二指腸潰瘍・腰椎椎間板ヘルニア、両股関節骨折、関節の炎症や変形など、数々の病気を経験してきたという人物。

壮絶というしかありませんが、そんななか、ある呼吸の仕方で苦痛が和らぐことに気づいたのだとか。

そして呼吸を整えて過ごすと、ひどかった症状は1年も経たないうちにほとんどなくなってしまったというのです。

しかもそれ以来、15年以上、症状が出ることはなく、仕事のパフォーマンスも上がったのだというのですから驚きです。

そんな経験があるからこそ、著者は「息を吸って、吐く」ことの意義を強調します。

ただそれだけの呼吸に、体調や体質、仕事のパフォーマンスに関わる多くの情報が隠れていると断言するのです。

そして重要なのが、自分の呼吸の幅をつかむこと。そのために大きな意味を持つという、「5つのステップ」をご紹介しましょう。

■1:自分の呼吸のエリアを知る

やり方は簡単。まず、息をはなから吸えるだけ吸ってみてください。しかも胸式・腹式といった意識はなくし、自然呼吸法で自然に吸うというのです。

そして、「もう吸えない」というところまで吸ったら、今度は口から「スーッ」と、もうこれ以上吐けないというところまで空気を吐く。

この作業でわかるのは、これ以上吸えないという「最大吸気点」と、これ以上吐けないという「最大呼気点」。この呼吸幅が、自分の呼吸のエリアだというわけです。

■2:呼吸による「脹らむ力」と「しぼる力」をつかむ

次にもう一度、同じように息を鼻から吸ってみましょう。吸えば吸うほどに体の内側から外側に張るような力、つまり「脹らむ力」を感じるはず。吸いきったところは、その脹らむ力のピークです。

そして今度は、ゆっくりと口から「スーッ」と吐いていく。すると体が脹らむ力の分だけ、息が自然に出ていくわけです。

少しずつ吐いていくと、脹らむ力が弱くなっていき、やがて自然に息が履けなくなります。そして、一定以上吐いていくと、下腹部がへこみ、体がしぼむような力を感じるといいます。

吐けば吐くほど、しぼむ力は強くなり、吐ききったところがその力のピーク。

感じたのは、呼吸による「脹らむ力」と「しぼむ力」、そしてその強弱。この力をいかに繊細に感じ取れるかが、自分の体を知る上で重要だといいます。

■3:脹らむ力としぼむ力の切り替わり、中心をつかむ

息を最大吸気点まで吸い、吸いきったところからゆっくり吐いていきます。

吐いていくに従い、脹らむ力は弱くなり、どこかの時点で脹らむ力を感じなくなり、自然に息が出て行かなくなり、それ以上吐くとしぼむ力が働きはじめるのだとか。

その切り替わりポイントが「中心」なのだそうです。

■4:呼吸エリアを4分割する

次は呼吸エリアを、1〜4までに4分割するステップ。息を吸いきったところと、息が自然に出ていき、脹らむ力を感じなくなったところの中間が上半分の中心。

感覚としては、胸や肩に張る力を強く感じるところ(エリア1)、脹らむ力は感じるが胸や肩に張る力をそれほど感じないところ(エリア2)の境あたり。

そして、自然に出ていく息がなくなったところから、ほんの少し吐いてみます。すると、しぼむ力が少しだけ働き、肩や胸、背中の力がふっと抜ける感覚が来るそうです。そこがエリア3。

そこからさらに吐いていくと、下腹部がへこむような力が働きはじめ、そこから履けば履くほどに息を吸いたくなる欲求が強くなるといいます。そこがエリア4。

この「下腹部がへこむような、しぼられるような力が働きはじめるところが、呼吸の下半分。すなわちエリア3とエリア4の境だというわけです。

■5:呼吸エリア3の上限と下限をつかむ

ところで私たちはふだん、どの呼吸エリアで吸ったり吐いたりしているのでしょうか?

体調や体質に大きな影響を与えるため、これは極めて重要なポイントだと著者は強調します、

そして答えから先にいうと、人間にとって、もっとも体に負担をかけない呼吸エリアは「エリア3」なのだそうです。

息を吸って、脹らむ力を感じ、そこから自然に吐けている最終地点が上限。これ以上履こうとすると、意図的に履かなければならないところだそうです。別な表現を用いるなら、体が脹らむ力を感じなくなったところ。

そして、吐いていく息でお腹がへこむような、しぼられるような力が生まれる手前が下限。この下限と上限の間の呼吸エリア3が「呼吸のニュートラル」。

これは体に負荷を与えずに、適度な体の緩みが実現できるところ。精神にも落ち着きをもたらす、自然治癒力がもっとも働きやすい呼吸状態の場所だとか。

だからこそ、「日常のなかでこの上限と下限のエリアを起点として呼吸できているか?」ということが重要になってくるのだそうです。

呼吸エリア3を意識することは、日々のコンデイションを整えるために重要。そこで、この5ステップを実践し、感覚をつかんでみてはいかがでしょうか?

(文/作家、書評家・印南敦史)

 

【参考】

※森田敦史(2016)『なにもしていないのに調子がいい ふだんの「呼吸」を意識して回復力を高める』クロスメディア・パブリッシング