『無理矢理ウエディング』(杉しっぽ/小学館)

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 ここ数年、少女マンガにおける“暴走ぶり”が話題を集めている。一見すると、「なんだそりゃ!?」と言わざるを得ない設定、シチュエーションの作品が登場し、読者の注目を集めているのだ。『無理矢理ウエディング』(杉しっぽ/小学館)に収録されている、『芋けんぴは恋を呼ぶ』は、その暴走ぶりでネットを騒然とさせた作品の代表格だろう。

 タイトルだけではピンとこない人もいるかもしれない。けれど、次のセリフは目にしたことがあるのではないだろうか。

“芋けんぴ 髪に付いてたよ”

 芋けんぴが髪の毛に付いている……? それっていったいどういう状況? そう、本作は、「芋けんぴ」を介して恋に落ちる二人の男女を描いた、トンデモ恋愛マンガなのだ。

 主人公・千崎和歌は、行きつけのコンビニで販売されている芋けんぴを愛し続けて早10年という、生粋の芋けんぴラバー。ところが、このところいつも売り切れていて、どうしても手に入れることができない。芋けんぴ欲は日に日に増し、もはや禁断症状が出るレベル。そんな和歌の前に現れたのが、大沢ゴン太。彼は、芋けんぴ買い占め犯を一緒に探してくれるという。こうして二人は、にっくき犯人を見つけ出すために、真冬の寒空の下で張り込みを開始することに……。

 そんな流れで、和歌がゴン太にときめいてしまう瞬間が、上述の「芋けんぴ 髪に付いてたよ」のシーンである。張り込みの途中、ゴン太がふいに近づき、和歌の髪の毛に手を回す。もしかして、キスされる……!? そう思った矢先、「芋けんぴ 髪に付いてたよ」なのだ。言うなれば、かわいい女子から「も〜、ごはん粒付いてるよ」と取ってもらう時のときめき。そりゃ、和歌が恋に落ちてしまうのも当然だろう。

 最終的に、和歌は犯人を見つけ出すことができるのだが、それは本書を読んでからのお楽しみ。果たして、和歌の芋けんぴライフは取り戻せるのか、そしてゴン太への想いは叶うのか――。

 ちなみに、先日、東急ハンズ渋谷店のTwitter公式アカウントが発表した、芋けんぴ型ヘアピンも話題を集めた。おやつに買った芋けんぴを床にぶちまけてしまったため、それを使い完全再現したそうだが、残念ながら商品化はされていない様子。これさえあれば、イケメンから「芋けんぴ 髪に付いてたよ」と声をかけてもらえるかもしれないのに……と、落胆した女子は多かったことだろう。

 その暴走ぶりで読者を楽しませてくれる、『芋けんぴは恋を呼ぶ』。未読の人は、一度読んでみてほしい。案外、胸キュンするかも!

文=五十嵐 大