大腸がんの画期的な新薬開発となるか(画像は国立がん研究センタープレスリリースより)

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国立がん研究センターと理化学研究所、カルナバイオサイエンス株式会社の研究グループは、大腸がんの元となる「がん幹細胞」の機能を抑制する新たな化合物を作り出し、大腸がん治療薬として実用化を目指していると発表した。

従来の抗がん剤は、腫瘍を縮小することはできたが、「がん幹細胞」はポンプのようなタンパク質により薬剤を細胞の外に排出し、冬眠したような状態で長期間潜み続けるため、根絶が難しかった。

さらに、がん幹細胞は自己複製能(自分と同じ細胞を作る能力)と高い造腫瘍性(腫瘍を作る能力)を持ち、少数でも残存していると腫瘍を再構築できるため、再発の原因にもなっている。

大腸がんの90%以上の症例で確認できる遺伝子異常が、がん幹細胞を発生させる「Wnt」というたんぱく質を活性化させていることから、世界中の研究機関でWntを標的とした治療薬の開発が進められているが、現在までに医薬品として実用化されたものはない。

研究グループは、Wntそのものではなく、Wntを活性化させている「TNIK」という酵素に注目。膨大な化合物の調査から、TNIKの活性を阻害する化合物「NCB-0846」を発見した。

人の大腸がん細胞を移植したマウスにNCB-0846を経口投与したところ、がんの増殖と、がん幹細胞マーカーの発現が顕著に抑制された。国立がん研究センターは「がん幹細胞の働きを、これほど強く抑える薬剤は今まで発見されていなかった」としている。

NCB-0846は、「がんを根絶やし」にすることが期待できる化合物であり、現在、臨床試験の前段階となる非臨床試験を実施中だという。今回の研究論文は、2016年8月26日、英科学雑誌「Nature」が運営するオープンアクセスの学術誌「Nature Communications」に掲載された。

参考論文
TNIK Inhibition Abrogates Colorectal Cancer Stemness.
DOI: 10.1038/ncomms12586 PMID: 27562646

(Aging Style)