関東 日帰り 出会い旅 Vol.009 /商店街の繋がりをめぐる旅(神奈川県横浜市神奈川区白楽)【前編】

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【毎週土曜 6:00 更新】
東京から90分以内の日帰り圏内。その円を広げてみると、そこにはとても豊かな自然や、新鮮な景色が広がっています。身近なようでまだ知らない「関東の田舎」で、地元を愛するみなさんと触れ合いながらの、楽しい週末旅はいかが? 今回は商店街で出会うユニークな人やお店が登場。旅人は編集者/プランニングディレクターの磯木淳寛さん!



渋谷駅から東急東横線の各駅列車に乗ってわずか40分。ほぼ都心といってもいい白楽(はくらく)には、駅前の六角橋商店街をはじめとして、昔ながらの情緒を感じられる商店街がいくつもある。古い商店と仲見世、新しくできたお店や商店街イベントなど、古いものと新しいものが緩やかに繋がっている町である。



1975年生まれ横浜育ち。白楽で2014年12月より古本、さらに服好きが高じてファッション関連書をメインとした古本屋をはじめる。昨年7月に現店舗へ移転。それまでは新刊書店に5年、出版社に10年ほど勤める。「装うこと」「ファッション」「デザイン」「文学」「哲学」を中心に本の持つ多様性による面白さ、魅力を信じ、店頭での販売にこだわって力を注ぐ。

◆『switchboxあけ/たて』は、まちのサロン!

磯木:細川さんこんにちは! 白楽という場所には、はじめて来ました。この六角橋商店街は学生の姿もあるし、人通りもあって賑やかですね。長く続いているような個人店も多そうに見えます。

細川さん:そうですね。ぼくも古本屋を開店した2年前にたまたまこの商店街に来たんですけど、古いお店が残っている雰囲気を一発で気に入ってしまって。学生が多いのは、近所に神奈川大学があるのが理由です。食べ物屋さんも多いですね。

磯木:今日はどんな人にお会いできるんでしょう?

細川さん:白楽の商店街で仲良くさせてもらっている、ちょっと面白い方々です。ではさっそく行きましょうか。

(白楽駅前から歩いて約2分)



通りで試食販売していた団子屋さん。



商店街沿いの、うっかり見落としてしまいそうなくらい小さなドアが『あけ/たて』の入口。



眼前に立ちはだかる急峻な階段!アトラクション的なドキドキ感

細川さん:さあ、着きましたよ。ここの2階が『switchboxあけ/たて』さんです。

磯木:おお…、これは急な階段ですね。角度が70度くらいありそうです。でも2階に上がるまで目の前に何も見えないので逆にワクワクしてきます!





稲見さん:いらっしゃいませ〜。

磯木:こんにちは、よろしくお願いします。わー、外から思ったよりも中は全然広い!細川さんと稲見さんとの出会いは?

細川さん:稲見さんがウチの古本屋ができて間もない頃にお客さんとして来てくれて、そこからです。小さな町ですから、個人店同士はやっぱり繋がっていきますね。

磯木:なるほど。『switchboxあけ/たて』はどんなお店なんですか?

稲見さん:展示やイベントを行うギャラリーと、ものづくり作家さんの作品を中心に、こだわりの文具や雑貨を置くお店です。ここに来ることで気持ちのスイッチが切り替わって楽しくなるようなお店を目指しています。もともとは娘がアイデアを出してお店を作ったんですけど、産休と育休で今では私が二代目として引き継いでます(笑)。

磯木:娘さんの後をお母さんが引き継ぐというのは珍しいですね(笑)。お店には作品がたくさん置いてあるようですが。

稲見さん:はい。手仕事でものづくりしている方の作品を中心に置いているのですが、この辺だけでなく、関西や四国など全国からも持ち込まれていて、今は40組くらいです。“大人の駄菓子屋みたい”なんて言われることもありますね。



レンタルボックスは1カ月あたり1000円〜1500円+売上の10%で借りられ、作品を販売することができる。



来店したお客さんとも和気あいあい。



カウンターの下には、誰でも持ち帰っていい『シェアシード』BOXが置かれていた。在来種の野菜の種がたくさん!

磯木:全国からですか!すごい。スケジュールを見ると、ギャラリースペースでもライブ、落語、展示、ヨガなど、ほぼ毎週なにか行っているんですね。

稲見さん:イベントにたまたま居合わせた人同士が友達になって、次の企画を組んでくれたりもして、徐々に増えてきました。ここはもともと娘が「人が集まれる場所を作りたい」ということで始めた場所なので、私が一人占めしないでいろんな人に使ってもらうのがいいんです。私もとっても楽しいですし。

磯木:へえ〜。“まちのサロン”とも言えそう。稲見さんは白楽が地元なんですか?

稲見さん:はい。ここは私の生まれ育ったところで、昔はなにをするにもこの商店街でした。中学校もこの辺でしたし、はじめてジーンズを買ったのも、あべかわもち餅を食べながら恋バナをしたのもこの商店街(笑)。

実はこの裏にちょっとおもしろい通りもあるので、ぜひそっちも見ていって欲しいです。行ってみます?

磯木:お願いします!



◆「チャリティ野宿」も! 楽しくて、ちょっとアヤシイ仲見世通り

(お店のすぐ裏手へ)
稲見さん:こちらが、仲見世商店街といって、昔ながらの細い通りです。

磯木:こんな裏手なのに、昔ながらの八百屋や魚屋があったり、最近できたようなおしゃれなお店もたくさん!まるで東南アジアに遊びにきたような雑多な雰囲気がありますね。

稲見さん:この通りでは、4月?10月の第3土曜日に「ヤミ市」も行われていて(8月を除く)、フリーマーケットや物売りが出たり、フラメンコとかのダンス、ジャズバンドや舞踏の路上ライブもあちこちであって、すごく賑やかですよ。しかもそれが夜8時から10時までの暗くなってからの時間なんですよね。

磯木:夜っていうのがますますアジアっぽくてますますいいなあ。

稲見さん:しかもそれだけでなく、毎年1回、9月の第3土曜日には「ヤミ市」が終わったあとの夜11時から「チャリティ野宿」が行われています。商店街に500円チャリティーすれば、誰でもこの仲見世商店街の路上で野宿できるというものなんですが、わらわらとダンボールとか荷物を持った人が集まってくるのも面白いですよ。

磯木:「チャリティ野宿」!ますますアヤシイ(笑)

稲見さん:でもちゃんと夜には商店街の人が見回りしていて、朝6時にはこの細い商店街でみんなが1列になってラジオ体操もするんです。ちなみに野宿はその日来れば誰でもできるので、もしよかったら!夜通し、占いとかマッサージとか物売りもしてますけど。

磯木:アヤシイながらも健康的で、でもやっぱりアヤシイ…。それにしても商店街の店主さんたちがとても柔軟なんですね。

稲見さん:そうですね。みなさん、昔ながらの雰囲気をあえて残して、商店街を盛り上げていこうとがんばっている方々です。「ヤミ市」も、もともと香港とか台湾の夜市のようなものをイメージして始まったものですね。最近は、個人商店がうまく繋がって一緒にがんばっていければと、白楽のまちのマップも作っているところです。

細川さん:個人商店はお客さんとの距離が近いので、「近所にいいお店はありませんか」ってよく聞かれるんです。それで「マップがあれば、お客さんにとっても店主にとってもいいんじゃないか」って、稲見さんが率先してやってくれてるんですよね。

磯木:商店街のお店同士のぬくもりを感じられるお話ですね。ぼくも近所にこんな商店街が欲しい!



雑貨屋、カフェ、飲食店など、さまざまなお店が並ぶ仲見世商店街。



街角に貼られていた「チャリティー野宿」のチラシ。



うなぎ屋さんの隣のベンチでひと休み。



●『switchboxあけ/たて』
雑貨屋 兼 貸しスペース。作家の作品などを委託販売し、イベントも随時開催。貸しスペースの利用も受付中。

TEL.045-402-1215
横浜市神奈川区六角橋1-7-23-2F
営業/13:00〜18:00 
月〜水定休

●『Tweed Books』
スタイル・ファッションといった装うことにまつわる本・暮らし・デザイン・美術・音楽に関する本、そして国内外文学などを取り扱う古本屋。ギャラリーやイベントも随時開催。古本の買取も歓迎。

神奈川県横浜市港北区篠原町4-6 サージュ白楽107
営業/11:00〜19:00
月曜定休

●六角橋商店街
昭和の面影を残すレトロな商店街で、生鮮食品から飲食店、雑貨等幅広い業種のお店が並ぶ。



食と地域を耕す編集者/プランニングディレクター
自然と共生する価値観と地域の可能性をテーマに雑誌媒体などに取材・執筆・企画。2013年から現場に身を投じるべく、海と里山のある千葉県いすみ市に在住。地域の営みを観察し未来をつくる書き手を増やすための合宿型ライター・イン・レジデンス「ローカルライト-地域の物語を編む4日間」を主宰し、全国で開催。石巻復興まちづくり情報交流館コンテンツ編集デスク。季刊自然栽培「見えないものを見る」連載中。近刊予定として『「小商い」で自由にくらす〜房総いすみのDIYな働き方』(2016年初秋発刊予定)。