注目されているわけじゃないけど、カッコ悪いなりに頑張っている人はジワッと泣ける。『ウルトラマンオーブ』9話「ニセモノのブルース」はそんなお話だった。


惑星侵略連合のメフィラス星人ノストラの次なる作戦は、ウルトラマンオーブと人間の絆を破壊すること。配下のババルウ星人ババリューにウルトラマンオーブに化けて街を破壊するよう命令する。

何の脈絡もなく、街に突然現れるニセウルトラマンオーブ。街の人や子どもたちは大喜びだが、本物のウルトラマンオーブ、クレナイ ガイ(石黒英雄)はポカーンとするしかない。

さぁ、一丁街をぶっこわすか! と張り切った直後、いきなりニセウルトラマンオーブの前に地底怪獣テレスドンが出現! きっと8話で言っていたアンバランス・ゾーンのせいなんだろう。狼狽するニセウルトラマンオーブを容赦なく襲うテレスドン。口から吐いた火を背中で受け止めて、偶然子どもたちを守っちゃった! キレたニセウルトラマンオーブは、チンピラパンチでテレスドンを撃退する。

「オーブってあんな感じだっけ?」と疑問を抱くナオミ(松浦雅)に、「いや、そんなことはないよ!」と即答するガイ。ウルトラマンオーブの姿なのに「二度と来んな、野良怪獣!」と地面を蹴っ飛ばすガラの悪さがおかしい。

変身が解けて、地球人・馬場竜次(中村龍介)の姿に戻るババルウ星人。ババリューだから馬場竜次。見た目は金髪に黒地に金ピカ模様のジャージ姿というまさに田舎のヤンキーそのもの。ウルトラマンオーブの正体を探っていたジェッタ(高橋直人)は、馬場竜次がウルトラマンオーブと確信してすっかり心酔する。

ビートル隊員の渋川(柳沢慎吾)に職質されている馬場を助け、ニセウルトラマンオーブに守られた子どもたちと引き合わせるジェッタ。馬場さんは子どもたちにすっかりヒーロー扱いされて困惑しつつ、「逆上がりができないんですけど、どうすればいいですか?」という子どもからの素朴な質問にも、うろたえながら「あきらめちゃいけない!」とアンサー。

子ども「僕もウルトラマンのようなヒーローになれますか?」
馬場「それはさすがにちょっと……」
ジェッタ「なれますよね!」
馬場「なれ……るよ、夢を持っていれば、君のなりたいものにきっとなれる!」

「ヒーローってさ、そんなにいいものなのか?」と聞く馬場に、ジェッタはヒーローに憧れていた子どもの頃に聞いた父親からの教えを語る。

「地味で目立たないことでも、誰かのために一生懸命頑張るのがヒーローなんだ」

子どもたちが描いたウルトラマンオーブの似顔絵をプレゼントされて、悪の心が揺らぎはじめるババルウ星人。惑星侵略連合の宇宙船の中にまで似顔絵を持ってきて、ナックル星人に見つかりそうになっていたりする。あの凶悪だったババルウ星人が完全に憎めない存在になってしまった!

すっかりヒーローのお兄さんとして、公園で子どもたちと遊びまくる馬場さん。「俺、このままウルトラマンオーブになるって人生もあるんじゃないかな……」と心の中で呟く。ちなみに本物のウルトラマンオーブことガイさんは一部始終を知っていたりする。

正義の心に目覚めたババルウ星人!


しかし、惑星侵略連合が黙っているわけがない。メフィラス星人はニセウルトラマンオーブに変身したババルウ星人に「その子どもたちを踏みつぶせ!」と容赦ない指令を与える。

「できません……そんなことできません。俺は今、ウルトラマンオーブなんです」
「お前はニセモノだ! ババルウ星人だ!」
「たしかに俺は悪の星に生まれた暗黒星人だと思っていました。だけど、こいつら(子どもたち)が教えてくれたんです。運命は変えられる。俺だってヒーローになれるって!」

何このいい話。メフィラス星人はジャグラス ジャグラー(青柳尊哉)にババルウ星人の処刑を命じる。ジャグラスは宇宙凶険怪獣ケルビムを召喚! ニセウルトラマンオーブも駄々っ子パンチで応戦するも、しょせんはニセモノ。『ウルトラマンメビウス』に登場した強力な宇宙怪獣の圧倒的な力の前に屈してしまう。

ついに子どもたちの前で変身が解けてしまうババルウ星人……。「そうだ、俺はウルトラマンじゃねえ。暗黒星人ババルウさ。お前たちを騙していたんだ」。ジェッタと子どもたちに謝りながら、ケルビムの攻撃を受け続けるババルウ星人。すると子どもたちがババルウ星人に声援を始めた! 「がんばれ、ババリューさん!」。何この展開……泣けちゃう。

子どもたちの声援を力にかえて、精一杯の反撃を見せるババルウ星人。それをじっと見つめるガイ。ババルウ星人がケルビムの火炎に焼かれるの見て、ついにガイはウルトラマンオーブに変身! ケルビムの攻撃を食い止め、力尽きる寸前のババルウ星人に黙って頷くウルトラマンオーブがカッコいい。さっきまでの駄々っ子ニセウルトラマンオーブと同一人物とは思えない。スーツアクターの演技一つでこんなにも変わるものなんだなぁ。オーブスラッガーランスでケルビムを蹴散らすウルトラマンオーブ。やっぱり本物は強かった。

等身大になり、ボロボロになって去ろうとするババルウ星人に、子どもたちは感謝の言葉を贈る。ババルウ星人は何かに納得する素振りを見せて消えていった。

公園で「馬場先輩、どこへ行っちゃったのかなぁ?」と呟くジェッタ。すると、馬場さんは公園の清掃人になっていた! ガイにだけアイコンタクトを送る馬場。ガイはジェッタに語りかける。

「ヒーローってのは、案外その辺にいるんじゃないのか?」

人の真の価値を決めるのは、本物か偽物かということではなく行動次第。誰だってヒーローになれるし、地道に誰かのために頑張っている人は誰だってヒーローなのだ。逆に言えば、国籍や血統など、その人の属性で何かを決めつけてしまうのは本当に愚かだということでもある。捨てゼリフ一切なしのまさに神回でした。

誰よりもババルウ星人の気持ちがわかる脚本家


ウルトラシリーズ恒例となった偽物が登場するエピソード。『ウルトラマン』でザラブ星人が化けたにせウルトラマンが有名だが、目の形があからさまに違うので一目見ればすぐに偽物だとわかるにせウルトラマンに比べ、ニセウルトラマンオーブは寸分たがわぬ見事な姿だった。

ババルウ星人は『ウルトラマンレオ』に登場した宇宙人で、レオの弟アストラに化けて悪事を働いた。「暗黒宇宙の支配者」という二つ名を持つが、ウルトラマンキングに一蹴されるなど、マグマ星人なんかに比べると小物感、チンピラ感がある。今回のエピソードは、ババルウ星人のイメージを上手く使っていた。

なお、ババルウ星人は『ウルトラマンメビウス』に登場したときも、ハンターナイトツルギ(『メビウス』に登場したウルトラマンの一人)に化けて地球を襲撃し、ウルトラマンと地球人の絆を破壊しようとしていた。やっぱり悪いヤツなのである。

馬場竜次(こう書くと実際にいる馬場竜次さんに申し訳ないのだが、すごくチンピラっぽい名前だと思う)ことババルウ星人ババリューを演じたのは、現在、舞台『インフェルノ』にも出演中の中村龍介。『真田丸』で高畑裕太の代役に抜擢された大山真志もそうだが、2.5次元系の舞台にはまだまだ逸材がたくさんいる。

ちなみにジェッタの父親を演じていたのは『平成ウルトラセブン』でウルトラセブンに変身するカザモリ隊員を演じていた山崎勝之だった。

今回の脚本を担当したのは、シリーズ構成を務めている中野貴雄。90年代から『うらつき童子』や『アクメくん』などのパロディーAVを監督し続けてきた自分をババルウ星人に置き換えて、「ババルウ星人の気持ちは本当によくわかる」と自身のブログに記している。ニセモノ(パロディー)を作り続けていた自分が、ホンモノ(ウルトラシリーズ本編)の脚本家に! すっかり「自分の書いた話で自分が泣く」状態になっていたのだそうだ。

ニセモノがヒーローになりきって奮闘する話は、特撮やアニメだけでなく、実写ドラマでもよく見たパターンだ。過去のさまざまな作品のパターンやエッセンスをギュッと詰め込んで、新しい形で視聴者に伝える手際が『ウルトラマンオーブ』は本当に上手い。それこそ、さまざまなホンモノを研究してニセモノを作っていた人ならではだと思う。『帰ってきたウルトラマン』のパロディーを作っていたら『シン・ゴジラ』の監督になっていた庵野秀明とも近いのかもしれない。

さて、この記事が配信されている頃には放送が終わっている第10話は「ジャグラー死す!」。えっ、ジャグラーさん、いきなり死んじゃうの!? ブラックキングも登場するぞ! 見逃してしまったあなたには、円谷プロダクション公式チャンネル「ウルトラチャンネル」で1話まるごと見逃し配信中です。闇を照らして、悪を討つ!
(大山くまお)