『スーサイド・スクワッド』 (C)2016 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC., AND RATPAC-DUNE

写真拡大

8月に公開されるや世界各地で大ヒットし、全世界での興行収入が約6億7820万ドル(9月5日現在)を記録している『スーサイド・スクワッド』。『バットマン』をはじめとするDCコミックのヴィラン(敵役)たちを主人公に据え、投獄された凶悪犯たちが減刑を条件に危険なミッションに挑むアクション大作だ。

『デッドプール』が興収20億円突破! 大ヒットの裏にあった宣伝戦略とは?

ウィル・スミスが演じるリーダー、フロイドことデッドショットはバットマンの敵で、百発百中の腕前を誇るスナイパー。ほかに『バットマン』でおなじみのジョーカー(ジャレッド・レト)の恋人でもあるハーレイ・クイン(マーゴット・ロビー)、『フラッシュ』のキャプテン・ブーメラン(ジェイ・コートニー)などなど、どれもDCコミックのファンにとっては説明不要のキャラクターたちだが、ファンでなくても、主要人物の個性とダークかつポップな様式で十分に楽しめる。

囚われの身となっていたヴィランたちはそれぞれ特殊能力を持ち、辣腕の政府高官アマンダ・ウォラー(ヴィオラ・デイヴィス)によって集められ、減刑を条件に危険かつ汚い仕事を引き受ける特殊部隊「スーサイド・スクワッド(自殺部隊)」として活動することになる。この世は綺麗事だけでは済まないとばかりに冷酷無比なウォラーが与える非情なミッション、ジョーカーとハーレイ・クインのクレイジーな関係、人気モデルから女優に転身したカーラ・デルヴィーニュ演じる、魔女に取り憑かれた考古学者とジョエル・キナマンが演じる部隊を指揮するフラッグ大佐との悲恋めいたエピソードなど盛りだくさんなのだが、ストーリーよりも、キャラ立ち上等の登場人物たちで見るのが楽しい。

今年ハリウッドでは、オスカー・ノミネーションの白人偏重を指摘する声が高まったが、本作は多様性のお手本のようなキャスティングだ。アフリカ系、ヨーロッパ系、メキシコ系、アメリカ大陸先住民族、そしてフラッグ大佐のボディガードを務めるカタナを演じる福原かれんはロサンゼルス生まれの日系。反目し合いながらも同じミッション達成を目指すというストーリー展開は、アメリカはもとより世界の理想を描くものと取ることもできそうだ。

と言っても彼らは皆、そもそもは悪党。行動は予想外でバチあたり。だからこそ、見ていてスカッとする。製作中にいち早く公開されたジョーカーのビジュアルの異様さから、ジャレッド・レトに注目が集まっていたが、そのレトとコンビを組むハーレイ・クインを演じたマーゴット・ロビーの存在感が強烈だ。『ウルフ・オブ・ウォールストリート』でレオナルド・ディカプリオの妻を演じて大ブレイクした彼女は、モデルばりの容姿を生かしたセクシーなスタイルで今回も大熱演。凶悪にして可愛げもあり、とにかくタフ。正義をふりかざさないのが逆に魅力的だ。

そして、クレジットのトップにいながら、彼女や、炎を操るエル・ディアブロを演じるジェイ・ヘルナンデスなど、他のキャラクターを立たせることを厭わないウィル・スミスの姿勢も、さすがヒットの秘訣を知りぬいた百戦錬磨のハリウッド・スターだと思わされた。(文:冨永由紀/映画ライター)

『スーサイド・スクワッド』は2016年9月10日より公開。

冨永由紀(とみなが・ゆき)
幼少期を東京とパリで過ごし、日本の大学卒業後はパリに留学。毎日映画を見て過ごす。帰国後、映画雑誌編集部を経てフリーに。雑誌「婦人画報」「FLIX」、Web媒体などでレビュー、インタビューを執筆。好きな映画や俳優がしょっちゅう変わる浮気性。